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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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35/118

Review35 戻さない

 午前七時五十一分。


「真壁」


「嫌です」


「まだ何も言ってない!」


 職員室。


 高瀬は、自分の机へ鞄を置く前に拒絶された。


 真壁透はパソコンの画面を見たまま、こちらを向こうともしない。


「何で嫌なの」


「昨日の続きでしょ」


「そうだけど」


「識別率」


「……」


「ほら」


 高瀬は口を閉じた。


 少し離れた席で、藤原が吹き出す。


「高瀬先生、分かりやすすぎます」


「だって気になるだろ」


「私も気になりますけど」


「じゃあ藤原から聞いて」


「真壁先生」


「嫌です」


「私も!?」


 真壁がようやく顔を上げた。


「朝から二人に数値確認されるの嫌なんです」


「……」


「俺、健康診断じゃないので」


「確かに」


 高瀬は、自分で言いながら少し恥ずかしくなった。


 昨日。


 61%。


 49%を下回れば、未登録領域への接続条件を満たす。


 あと十二。


 気にならないはずがない。


 でも。


 その数字を毎朝確認して。


 上がった。


 下がった。


 危ない。


 安全。


 そんな話ばかりするようになったら。


「……SYSTEMと同じだな」


 高瀬が呟く。


 真壁の指が、キーボードの上で止まった。


「何が」


「お前を見る前に」


 一度、息を吐く。


「数字見てる」


「……」


「ごめん」


「また」


「いや、これは謝る」


 真壁は少し黙った。


「……分かればいいです」


「優しい」


「調子乗らないで」


「はい」


 藤原が笑う。


「じゃあ改めて」


「うん」


「おはようございます」


「おはようございます」


 真壁。


「おはよう」


 高瀬。


 三人。


 一瞬だけ。


 普通の朝になった。


◇


「でも」


 高瀬が椅子へ座る。


「話はしたい」


「識別率の?」


「違う」


「何ですか」


「お前」


「うん」


「今日、どうしたい?」


 真壁の表情が止まった。


「……何ですかそれ」


「いや」


「昨日」


 高瀬は少し言葉を探した。


「数字戻すために昔のお前みたいに振る舞わせるのは、違うと思った」


「……」


「でも」


「このまま何も考えずに」


「はい、好きに生きろ」


「って言って」


「49切って」


「お前が消えたら」


「……」


「俺、多分」


 一度、目を逸らす。


「めちゃくちゃ後悔する」


 藤原も、何も挟まなかった。


「だから」


「俺が決めるんじゃなくて」


「お前が」


「どうしたいか」


「先に聞きたい」


「……」


 真壁は。


 しばらく答えなかった。


「分かりません」


「そっか」


「……終わり?」


「うん」


「もっと聞かない?」


「今、分からないって言ったから」


「……」


 真壁が高瀬を見る。


「本当に」


「何」


「変わりましたね」


「最近みんな言う」


「今のは褒めてます」


「お」


「調子乗らないで」


「早い!」


 藤原が小さく笑った。


 真壁も、ほんの少しだけ笑った。


◇


 一時間目。


 真壁は教卓の前に立っていた。


「じゃあ昨日の続き」


「先生」


「何」


「今日雑談しないんですか」


「……何で」


「昨日ちょっと面白かったから」


「普段つまらない?」


「そういう意味じゃない!」


 教室に笑いが起きる。


「じゃあ」


 別の生徒。


「今日もなんか喋って」


「授業します」


「それじゃない」


「学校なので」


「先生真面目」


「知ってる」


 そこで。


 真壁は少しだけ止まった。


 雑談。


 昨日。


 それだけで識別率が下がった。


 なら。


 喋らない方がいい?


 SYSTEM上は。


 その方が安全かもしれない。


「……」


「先生?」


 前列の女子生徒が首を傾げる。


「何」


「今」


「絶対なんか考えた」


「……」


「言わない」


「えー」


「授業」


「逃げた」


「戻るだけ」


 笑い。


 真壁は黒板へ向いた。


 チョークを持つ。


 そこで。


「……でも」


 止まる。


 振り返る。


「昨日」


「はい」


「何が面白かった?」


 教室が少し静かになる。


「え?」


 さっきの生徒。


「先生が」


「うん」


「普通に喋ってた」


「……」


「それだけ?」


「うん」


「……」


「先生?」


 真壁は。


 少しだけ笑った。


「褒められてる気がしない」


「褒めてます!」


「半分?」


「誰の真似!?」


 教室。


 笑い声。


 真壁も笑った。


 その瞬間。


 ポケットのスマートフォンが震えた。


「……」


 分かる。


 多分。


 識別率。


 でも。


 今は見ない。


「先生」


「何」


「スマホ」


「授業中」


「先生のなのに」


「だから見ない」


「偉」


「教師なので」


「珍し」


「お前ら俺を何だと思ってる」


 また笑い。


 真壁は。


 今度は止まらず。


 授業を続けた。


◇


 昼休み。


「見た?」


 高瀬。


「何を」


「……」


「高瀬先生」


「はい」


「朝」


「数字見ないって」


「そうだった」


「三時間しか持ってない」


「ごめん!」


 藤原が呆れた顔をする。


「高瀬先生の方がSYSTEMに依存してません?」


「最近それ思う」


「自覚あるんだ」


 真壁は弁当の蓋を開けた。


「俺はまだ見てません」


「怖くない?」


「怖いですよ」


「じゃあ何で」


「今」


 一度。


 箸を止める。


「昼飯食べてるので」


「……」


「数字より」


「こっちが先」


 高瀬は。


 少しだけ真壁を見る。


「何」


「いや」


「今の」


「いいなって」


「やめて」


「褒めてもダメ?」


「食べづらい」


「じゃあ黙る」


「それはそれで気持ち悪い」


「どうしろと!?」


 藤原が笑う。


「高瀬先生」


「何」


「普通に食べてください」


「はい」


 三人。


 昼食。


 数分。


 本当に。


 何も話さなかった。


 でも。


 変な沈黙ではなかった。


 真壁が味噌汁を飲む。


 藤原が卵焼きを食べる。


 高瀬が茶色い弁当を食べる。


「……」


 藤原。


 高瀬の弁当を見る。


「何」


「野菜」


「今日はブロッコリーある」


「一個」


「あるだけいいだろ!」


 真壁。


「それ飾りでは」


「食べるわ!」


 高瀬はブロッコリーを口へ放り込んだ。


「ほら!」


「子どもみたい」


「食ったのに怒られるの!?」


 三人。


 笑う。


 真壁は。


 その笑いの途中。


 少しだけ思った。


 これで。


 識別率が下がるかもしれない。


 でも。


 だから何だ。


 今。


 笑いたかった。


 それだけだった。


◇


「真壁先生」


 昼休みの終わり。


 藤原が言った。


「はい」


「一個」


「昨日から考えてたんですけど」


「何ですか」


「識別率」


 真壁の表情が少し変わる。


「……はい」


「戻す方法じゃなくて」


「下がっても」


「こっちにいられる方法」


「探した方がよくないですか」


「……」


 高瀬が箸を置く。


「それ」


「俺も思った」


「いつ」


「今」


「藤原の案やん」


「乗っかった」


「堂々と言うな」


 真壁が少し笑う。


「でも」


「それ」


「できる?」


「分からない」


 藤原。


「でも」


「ナオ」


「一回」


「回収処理失敗した」


「うん」


 高瀬。


「真壁」


「高瀬を自分で止めた」


「うん」


「高瀬先生」


「ナオを001と呼ぶのを拒否した」


「うん」


「その二つで」


「回収失敗」


「……」


 真壁の目が少し細くなる。


「つまり」


「SYSTEMの分類が崩れたら」


「必ず向こうへ行く」


「じゃなく」


「こちら側に」


「繋ぎ止める方法がある?」


「可能性」


 藤原。


「はい」


 高瀬。


「名前」


「……」


 二人が高瀬を見る。


「31話」


「……」


「何ですか31話って」


「いや何でもない!」


 高瀬、自分で一瞬固まる。


「疲れてます?」


 藤原。


「忘れて!」


「怖」


「話戻す!」


 高瀬は咳払いした。


「ナオ」


「番号じゃなく」


「名前で呼んだ」


「うん」


「真壁も」


「No.004じゃなく」


「真壁」


「……」


「名前が」


「アンカーになる?」


 藤原がノートへ書く。


『仮説』


『名前=識別番号とは異なる固定点?』


「固定点」


 真壁。


「でも」


「俺の名前」


「SYSTEMも知ってる」


「対象 真壁透」


「って出る」


「……確かに」


 高瀬。


「じゃあ」


「名前だけじゃない」


「誰が」


「その名前を呼ぶか?」


 藤原。


 三人。


 少し黙る。


「ナオ」


 高瀬。


「SYSTEMに」


「名前つけられたんじゃない」


「俺らが」


「ナオって呼んだ」


「……」


「真壁も」


 藤原。


「SYSTEMは」


「真壁透という文字を」


「知ってる」


「でも」


「私たちが」


「真壁先生って呼ぶ意味までは」


「持ってない?」


「……」


 真壁。


 少しだけ。


 嫌そうな顔。


「何」


 高瀬。


「いや」


「今から」


「名前いっぱい呼ばれそう」


「真壁」


「やめて」


「真壁先生」


「藤原先生まで!」


「真壁」


「高瀬先生が一番腹立つ」


「何で!」


 三人。


 笑う。


 でも。


 仮説としては。


 悪くなかった。


◇


 放課後。


 三人は。


 旧視聴覚室へは行かなかった。


 昨日。


 桐谷から。


『次は三人で来い』


 と言われた。


 でも。


 毎日行く必要はない。


「高瀬先生」


 真壁。


「何」


「今日」


「行きたくない?」


「……」


「めちゃくちゃ行きたい」


「ですよね」


「でも」


 高瀬。


 資料を閉じる。


「今日は行かない」


「何で」


「毎日行ったら」


「桐谷も迷惑だろ」


「そこ?」


「あと」


「ナオ寝てるって言ってたし」


「……」


「待つ」


 藤原が少し笑う。


「最近」


「待つの上手くなりましたね」


「だろ?」


「褒めたらすぐ調子乗る」


「ひどい!」


◇


 午後四時四十八分。


 高瀬は。


 教室。


 一人の女子生徒と話していた。


 いつもの子。


「先生」


「何」


「最近」


「うん」


「真壁先生って人」


「めっちゃ出てきますね」


「お前の会話にな」


「どんな人なんですか」


「真壁?」


「うん」


 高瀬は。


 少し考えた。


「真面目」


「へえ」


「冷静」


「へえ」


「正論多い」


「嫌い?」


「何で!」


「嫌そうに言った」


「違う」


「あと」


「最近」


 一度。


 笑う。


「ちょっと面白い」


「仲良いんじゃん」


「……」


「何その間」


「仲良い」


「認めた」


「最近な」


「藤原先生は?」


「何で知ってる」


「前言ってた」


「ああ」


「藤原は」


 少し考える。


「強い」


「怖い?」


「違う」


「じゃあ」


「ちゃんと」


 一度。


 言葉を選ぶ。


「人を見る」


「……」


「俺が」


「大丈夫じゃない時」


「大丈夫って言っても」


「ほぼバレる」


「私も分かります」


「お前もか!」


 女子生徒が笑う。


「先生」


「何」


「じゃあ」


「その二人」


「大事?」


 高瀬。


 少しだけ。


 止まる。


「……大事」


「即答」


「うん」


「珍しい」


「最近」


 一度。


 窓の外を見る。


「言える時に」


「言っといた方がいいかなって」


 女子生徒。


 少しだけ。


 真面目な顔。


「いいですね」


「何が」


「先生」


「ちょっとだけ」


「素直」


「ちょっと?」


「全部褒めると調子乗るから」


「藤原と同じこと言うな!」


 笑い。


 普通の。


 放課後。


◇


 その頃。


 真壁。


 二年四組。


「先生」


「何」


「進路」


「うん」


「ちょっと相談いいですか」


「いいよ」


 一人の男子生徒。


 机。


 真壁は前の椅子を引いた。


「どうした」


「俺」


「うん」


「親に」


「こっち行けって」


「言われてるんですけど」


「うん」


「自分」


「違うとこ」


「行きたくて」


「うん」


「どっちが」


「正解ですか」


「……」


 真壁の口から。


 答えが。


 出かける。


 現実的に。


 成績。


 将来性。


 通学。


 家庭。


 選択肢。


 情報なら。


 いくらでも整理できる。


「先生?」


「……」


「正解」


「はい」


「俺が決める?」


「いや」


「でも」


「先生なら」


「正しい方」


「教えてくれそう」


「……」


 真壁の胸。


 少し。


 痛んだ。


 正しい。


 ずっと。


 それを求められてきた。


 自分も。


 そうしてきた。


「じゃあ」


「うん」


「逆に聞く」


「はい」


「親とか」


「成績とか」


「先生とか」


「全部」


「一回」


「横に置いたら」


「……」


「どっち行きたい」


 男子生徒。


 少し驚いた顔。


「それ」


「先生が聞くんですか」


「何で」


「真壁先生」


「こういうの」


「現実見ろって言いそう」


「……」


 真壁。


 少し笑う。


「俺も」


「前なら」


「言ったかも」


「前?」


「昨日くらい」


「最近すぎ!」


 二人。


 少し笑う。


「で」


「どっち」


「……」


 男子生徒は。


 ゆっくり。


 自分の希望を。


 話し始めた。


 真壁は。


 答えを出さず。


 最後まで。


 聞いた。


◇


 相談終了。


 生徒。


 教室を出る。


「ありがとうございました」


「うん」


「先生」


「何」


「なんか」


「今日」


「真壁先生じゃないみたい」


「……」


 真壁の。


 胸。


 一瞬。


 止まる。


「悪い意味?」


「違います」


「じゃあ」


 男子生徒。


 少し考える。


「前より」


「話しやすい」


「……」


「じゃあまた」


「うん」


 生徒。


 出ていく。


 真壁。


 一人。


「真壁先生じゃないみたい」


 言葉。


 刺さる。


 違う。


 褒められた。


 分かっている。


 でも。


 SYSTEM。


 識別率。


 頭をよぎる。


「……」


 スマートフォン。


 見る。


 通知。


 一件。


 開く。


━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


対象


真壁透


━━━━━━━━━━━━


識別率


61%


 ↓


54%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 あと。


 五。


 50を。


 下回るまで。


「……」


 手。


 少し。


 冷たくなる。


 次。



━━━━━━━━━━━━


既定人格との差分


増大。


━━━━━━━━━━━━



「人格?」


 真壁の。


 眉。


 寄る。



━━━━━━━━━━━━


修正を推奨します。


━━━━━━━━━━━━



「……修正」


 次。



━━━━━━━━━━━━


推奨行動


対人接触の減少


感情表現の抑制


役割行動への復帰


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 しばらく。


 画面を見る。


 対人接触。


 減らせ。


 感情。


 抑えろ。


 高瀬を。


 止めろ。


 昔の。


 自分へ。


 戻れ。


「……嫌だ」


 声。


 小さい。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


拒否した場合


削除判定へ移行する


可能性があります。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 怖い。


 本当に。


 怖い。


 でも。


 さっき。


 生徒が。


 初めて。


 自分の希望を。


 口にした。


 もし。


 昔の自分なら。


 現実。


 正しさ。


 合理性。


 そこを先に。


 出していたかもしれない。


「……」


 真壁。


 画面へ。


 小さく。



「戻らない」



 言った。



 SYSTEM。



 数秒。



 無反応。



 真壁は。



 スマートフォンを。



 閉じた。



 そして。



 三人のグループへ。



『識別率54%になりました』



 送信。



 一秒。



 高瀬。



『今どこ』



 藤原。



『一人?』



 真壁。



 少しだけ。



 笑った。



『二年四組』



 高瀬。



『行く』



「……」



 真壁。



 すぐ。



『来なくていい』



 打つ。



 でも。



 送信前。



 止まる。



 一人で。



 抱えない。



 なら。



『待ってます』



 送った。



 数分後。



「真壁!」



 廊下。



 高瀬。



 声。



「声でかい」



 藤原。



「走らない!」



「早歩き!」



「それ禁止!」



 二人の。



 声。



 近付いてくる。



 真壁は。



 思わず。



 笑った。



 スマートフォン。



 震える。



「……」



 嫌な予感。



 画面。



━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


対象


真壁透


━━━━━━━━━━━━


識別率


54%


 ↓


52%


━━━━━━━━━━━━



「……また」



 笑ったから?



 人を。



 待ったから?



 分からない。



 高瀬。



 教室。



 入ってくる。



「大丈夫?」



「その質問」



「何」



「最近」



 真壁。



 少しだけ。



 笑う。



「好きになってきました」



「……」



 高瀬。



 一瞬。



 黙る。



「藤原」



「はい」



「真壁がデレた」



「高瀬先生」



「何」



「黙って」



「はい!」



 真壁。



 笑う。



 藤原も。



 笑う。



 三人。



 教室。



 夕方。



 ただ。



 笑った。



 その時。



 真壁の。



 スマートフォン。



 さらに。



 震える。



「……」



 画面。



━━━━━━━━━━━━


識別率


52%


 ↓


50%


━━━━━━━━━━━━



 三人の。



 笑顔が。



 止まった。



「……50」



 藤原。



 高瀬。



 真壁。



 誰も。



 動かない。



 あと。



 一。



 下がれば。



 接続条件。



 成立。



「真壁」



「はい」



「どうする」



 高瀬は。



 止めろとは。



 言わなかった。



 笑うなとも。



 喋るなとも。



 昔に戻れとも。



 言わなかった。



 真壁が。



 決めるのを。



 待った。



「……」



 真壁。



 自分の。



 手を見る。



 怖い。



 あと一。



 でも。



「普通に」



 一度。



 息を吸う。



「帰りたいです」



「……」



「三人で」



 高瀬。



 少しだけ。



 笑う。



「帰ろう」



 藤原。



「はい」



 三人。



 教室を。



 出る。



 その瞬間。



 真壁の。



 スマートフォン。



 震えた。



「……」



 三人。



 止まる。



 画面。



━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


識別率


50%


━━━━━━━━━━━━



 変化。



 なし。



「……下がってない」



 藤原。



「何で」



 高瀬。



 次。



━━━━━━━━━━━━


外部固定点を検出。


━━━━━━━━━━━━



「……固定点?」



 真壁。



 さらに。



━━━━━━━━━━━━


対象


真壁透


━━━━━━━━━━━━


外部識別数


2


━━━━━━━━━━━━



 三人。



 息を止める。



「二」



 高瀬。



 藤原。



 二人。



 次。



━━━━━━━━━━━━


再分類処理


一時停止。


━━━━━━━━━━━━



「……」



 真壁の。



 目が。



 少し。



 大きくなる。



「俺ら?」



 高瀬。



「外部固定点」



 藤原。



「二人が」



「真壁先生を」



「真壁先生として」



「認識してるから?」



「……」



 真壁。



 画面。



 見つめる。



 次。



━━━━━━━━━━━━


警告。


外部固定は


恒久的ではありません。


━━━━━━━━━━━━



 それでも。



 止まった。



 49へ。



 落ちなかった。



「……」



 高瀬。



 少しずつ。



 笑う。



「真壁」



「何」



「お前」



 一度。



 藤原を見る。



「一人じゃ」



「なかったな」



「……」



 真壁。



 何も。



 言わない。



 でも。



 目が。



 少しだけ。



 赤くなった。



「高瀬先生」



「何」



「今」



「うん」



「そういうの」



 一度。



 息を吐く。



「反則」



「……ごめん」



「また」



 藤原。



 少し笑う。



 三人。



 階段を。



 下りる。



 識別率。



 50%。



 削除判定まで。



 あと一。



 なのに。



 今。



 初めて。



 数字は。



 真壁一人の行動ではなく。



 誰かとの。



 繋がりによって。



 止まった。



◇



 その夜。



 旧視聴覚室。



 ナオ。



 目を開ける。



「……桐谷先生」



「起きたか」



「真壁先生」



「ああ」



「落ちてこない」



「……」



 ナオ。



 少し。



 驚く。



「何で」



 桐谷。



 暗闇。



 スマートフォン。



 見る。



━━━━━━━━━━━━


対象


真壁透


接続保留


━━━━━━━━━━━━


理由


外部固定


━━━━━━━━━━━━



「……」



 桐谷。



 小さく。



 笑う。



「やっぱり」



「何」



「一人だと」



 一度。



 画面を閉じる。



「人は」



「簡単に」



「番号になる」



 ナオ。



 桐谷を見る。



「でも?」



 桐谷。



 少しだけ。



 笑った。



「誰かが」



「名前を呼び続けると」



「SYSTEMも」



「すぐには」



「消せないらしい」



「……」



 ナオ。



 少し。



 目を伏せる。



「じゃあ」



「僕も?」



 桐谷。



 すぐには。



 答えなかった。



「高瀬たちが」



「覚えてる」



「……」



「なら」



 一度。



 ナオを見る。



「まだ」



「終わってない」



 暗闇。



 ナオは。



 小さく。



 自分の名前を。



 口にした。



「……ナオ」



 番号ではない。



 誰かに。



 呼んでもらった。



 自分の名前。



 その瞬間。



 暗闇の。



 どこかで。



 小さく。



 何かが。



 割れる音がした。

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