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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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33/118

Review33 帰る

 旧視聴覚室。


 扉の前。


 三人。


 誰も動かなかった。



━━━━━━━━━━━━


接続対象


高瀬


帰還記録


あり


━━━━━━━━━━━━


同伴者


桐谷


帰還記録


なし


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬は。


 スマートフォンの画面から。


 ゆっくり。


 扉へ視線を移した。


 一年前。


 自分は。


 ここへ入った。


 桐谷と。


 そして。


 戻ったのは。


 自分だけ。


「……」


 手。


 気付けば。


 ドアノブへ。


 伸びていた。


「高瀬先生」


 真壁。


 低い声。


「うん」


 高瀬の手は。


 止まる。


「触る?」


「……」


「今」


「何も分からない」


「……」


「中に」


「桐谷先生がいるかも」


 高瀬。


 扉を見る。


「うん」


「ナオも」


 藤原。


「いるかもしれない」


「うん」


「でも」


 一度。


 言葉を止める。


「いないかもしれない」


「……」


「入ったら」


「戻れないかもしれない」


「……」


 高瀬は。


 何も言わなかった。


 右手。


 まだ。


 ドアノブの。


 少し手前。


「高瀬先生」


 藤原。


「行きたい?」


「……」


 高瀬。


 小さく笑う。


「聞く?」


「聞きます」


「めちゃくちゃ」


 一度。


 息を吐く。


「行きたい」


「……」


「今すぐ」


「この扉」


「開けたい」


「……」


「桐谷が」


「いるなら」


「会いたい」


「……」


「ナオが」


「いるなら」


「連れて帰りたい」


「……」


 声。


 少し。


 強くなる。


「俺が」


「一年前」


「何したか」


「見たい」


「知りたい」


「全部」


「……」


 真壁。


「なら」


「開けます?」


 高瀬。


 真壁を見る。


「お前」


「今」


「試してる?」


「少し」


「腹立つ」


「すみません」


「でも」


 真壁。


 目を逸らさない。


「高瀬先生が」


「自分で」


「決めた方がいい」


「……」


「俺が止めるから」


「開けない」


「だと」


「また」


「一年前と」


「同じかもしれない」


「……」


 高瀬の表情が。


 少し。


 変わった。


「制止者」


「……」


「俺が」


 真壁。


「止めるんじゃなくて」


「高瀬先生が」


「決めてください」


「……」


 藤原も。


 何も言わない。


 二人。


 待つ。


 高瀬が。


 決めるのを。


「……」


 扉。


 中。


 桐谷。


 ナオ。


 いるかもしれない。


 その言葉だけで。


 胸が。


 前へ。


 引っ張られる。


 でも。


 横。


 藤原。


 真壁。


 二人。


 一年前には。


 今と同じ形では。


 いなかった。


 紙。



『三人とも戻れる保証がない。』



「……」


 高瀬の。


 右手。


 ゆっくり。


 下がる。


「帰ろう」


「……」


 藤原の目が。


 少しだけ。


 大きくなる。


 真壁も。


 一瞬。


 何も言わなかった。


「高瀬先生」


「何」


「本当に?」


 高瀬。


 扉を見る。


「本当」


「……」


「今日は」


「開けない」


「……」


「開けたいけど」


「開けない」


「……」


「俺だけなら」


 一度。


 言葉が。


 止まる。


「多分」


「開けてた」


「……」


「でも」


 藤原。


 真壁。


 二人を見る。


「二人いるから」


「……」


「二人まで」


「俺の好奇心で」


「危ないとこ」


「連れてけない」


「……」


 真壁が。


 ほんの少し。


 笑った。


「好奇心なんですね」


「そこ拾う?」


「大事」


「桐谷も心配」


「ナオも心配」


「あと」


「好奇心」


「結構ある」


「知ってます」


 藤原も。


 少しだけ。


 笑った。


「高瀬先生」


「何」


「今」


「本当に」


「帰る?」


「帰る」


「五分後」


「開けたいって」


「言わない?」


「……」


「高瀬先生」


「言わない!」


「今の間」


 真壁。


「不安」


「うるさい!」


 三人。


 少しだけ。


 笑った。


 それでも。


 誰も。


 扉を。


 開けなかった。


◇


 廊下。


 三人。


 旧視聴覚室から。


 離れていく。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 高瀬。


 何度も。


 振り返りそうになる。


 でも。


 振り返らない。


「高瀬先生」


 藤原。


「何」


「今」


「我慢してる?」


「めっちゃ」


「顔」


「見るな」


「分かりやすい」


「最近そればっか!」


 真壁。


 少しだけ。


 口元を緩める。


「でも」


「何」


「今日のは」


 一度。


 間。


「すごいと思います」


 高瀬。


 足。


 止まりそうになる。


「真壁」


「何」


「今」


「褒めた?」


「言わなきゃよかった」


「待って!」


 藤原。


 笑う。


「真壁先生」


「はい」


「もう一回」


「嫌です」


「俺が聞きたい!」


「一回で十分」


「ケチ!」


 三人。


 階段。


 下りる。


 その時。


 高瀬のスマートフォン。


 震えた。


「……」


 全員。


 止まる。


 高瀬。


 画面。


━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


未登録領域


接続未実行。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 次。



━━━━━━━━━━━━


LOOP 1との差分を確認。


━━━━━━━━━━━━



 高瀬。


 藤原。


 真壁。


 三人。


 同時に。


 少し。


 表情を変える。



━━━━━━━━━━━━


前回


接続実行


━━━━━━━━━━━━


今回


接続拒否


━━━━━━━━━━━━



「拒否」


 高瀬。


「自分で」


 藤原。


「選んだ」


 真壁。


 次。



━━━━━━━━━━━━


LOOP 1再現率


31%


 ↓


24%


━━━━━━━━━━━━



「下がった」


 藤原。


 高瀬。


 少しだけ。


 笑う。


「七%」


「数字」


 真壁。


「気にしすぎない」


「分かってる」


「今の顔」


「ちょっと嬉しそう」


「そりゃ」


 高瀬。


 少しだけ。


 胸を張る。


「一年前と」


「違うこと」


「できたから」


「……」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「それなら」


「いいです」


◇


 職員室。


 午後六時十二分。


 三人。


 ノート。


『旧視聴覚室』


『未登録領域』


『一年前 高瀬・桐谷が接続』


『高瀬のみ帰還』


『現在 接続拒否』


『LOOP 1再現率 24%』


「あと」


 藤原。


「紙」


「うん」


 高瀬。


『ここには来るな。』


『三人で来たなら、なおさら。』


『次は、三人とも戻れる保証がない。』


「誰が」


 真壁。


「出した」


「分からん」


「中に」


「誰か」


「いる?」


「分からん」


「ナオ」


「桐谷」


「第三者」


「SYSTEM」


「候補」


「多いな」


「だから」


 真壁。


「今は」


「開けなくて正解」


「正解って」


 高瀬。


 少しだけ。


 眉を上げる。


「SYSTEMみたいに言うなよ」


「……」


 真壁。


 少し。


 止まる。


「確かに」


「でしょ」


「じゃあ」


「今の選択」


「俺は」


 一度。


 言い直す。


「好きです」


「……」


 高瀬。


 真壁を見る。


「何ですか」


「いや」


「今の」


「結構」


「恥ずかしい?」


「帰ります」


「待て!」


 藤原が。


 笑いをこらえる。


「真壁先生」


「何ですか」


「最近」


「言い直せるようになりましたね」


「やめて」


「成長」


「それ禁止」


「俺の専売特許みたいになってない?」


 三人。


 笑う。


 ただ。


 ノートの中。


『桐谷 帰還記録なし』


 そこだけ。


 高瀬は。


 何度見ても。


 笑えなかった。


◇


 翌日。


 午前九時十九分。


 高瀬。


 授業。


「先生」


「何」


「この問題」


「うん」


「AでもBでも」


「点入ります?」


「理由が合ってれば」


「じゃあ」


「どっちでも正解?」


「場合による」


「ずる」


「国語だから」


「先生」


「何」


「正解一個じゃないの?」


「……」


 高瀬。


 少しだけ。


 止まる。


 昨日。


 扉。


 開ける。


 開けない。


 どっちが。


 正解だった?


「先生?」


「いや」


 高瀬。


 黒板へ。


 チョーク。


「正解」


 一度。


 書く。


 その横。


「選択」


 書く。


「これ」


「違うんだよな」


「何が」


 一人の生徒。


「正解は」


「あとから」


「分かることもある」


「でも」


「選択は」


「その時」


「自分でしないといけない」


「……」


 教室。


 少しだけ。


 静か。


「先生」


 後ろ。


 いつもの女子生徒。


「最近」


「人生語りすぎ」


「俺も今思った!」


 笑い。


 高瀬。


 頭を掻く。


「はい」


「授業戻る!」


「逃げた」


「戻るだけ!」


「真壁先生みたい」


「何で知ってんの!?」


 教室。


 笑い。


「でも」


 女子生徒。


「先生」


「何」


「昨日」


「何か」


「選んだ?」


 高瀬。


 一瞬。


 止まる。


「……選んだ」


「正解だった?」


「分からん」


「じゃあ」


 女子生徒。


 少しだけ。


 笑う。


「今」


「後悔してます?」


「……」


 高瀬。


 考える。


 扉。


 桐谷。


 ナオ。


 開けなかった。


「してない」


「じゃあ」


「今はそれでよくないですか」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「たまに」


「すげえこと言うな」


「たまに余計」


「真壁みたい!」


「誰なんですか真壁先生」


「同僚!」


「また男」


「そこ気にするな!」


 教室。


 笑い。


 高瀬も。


 笑った。


◇


 昼休み。


「一個」


 真壁。


「気になる」


「何」


 高瀬。


「旧視聴覚室」


「鍵」


「……」


「昨日」


「掛かってた」


「はい」


 藤原。


「でも」


「紙」


「中から」


「出てきた」


「うん」


「じゃあ」


 真壁。


「本当に」


「中に誰かいるなら」


「閉じ込められてる?」


「……」


 高瀬。


 少し。


 表情が変わる。


「それ」


「昨日言えよ」


「言ったら」


「絶対開けたでしょ」


「……」


「図星」


 藤原。


「真壁先生」


「それ」


「一人で抱えた?」


「……」


 真壁。


 止まる。


「いや」


「今」


「共有した」


「一日遅い」


「……」


 高瀬。


 真壁を見る。


「何で」


「……」


「俺が」


「行くと思ったから」


「……」


「止めたかった?」


「はい」


「……」


 高瀬。


 少しだけ。


 息を吐く。


「そっか」


「怒らない?」


「少し怒ってる」


「……」


「でも」


「昨日の俺なら」


「聞いた瞬間」


「開けてたかもしれん」


「……」


「だから」


「今」


「ちゃんと話してくれたなら」


「次から」


「早く言え」


「……」


「はい」


 藤原。


 少しだけ。


 笑う。


「真壁先生」


「何」


「また」


「一人で判断しましたね」


「……」


「すみません」


「でも」


「言えた」


「はい」


「じゃあ」


 一度。


 笑う。


「次」


「気を付ける」


「……」


 真壁。


 少しだけ。


 頷く。


「はい」


◇


「で」


 高瀬。


「鍵」


「確認する?」


「する」


 真壁。


「開けない」


「分かってる」


「本当に?」


「信用!」


「半分」


「お前ら最近それ便利に使いすぎ!」


 三人。


 旧視聴覚室。


 鍵。


 職員室。


 管理記録。


「昨日」


 藤原。


「鍵」


「誰も」


「借りてない」


「一週間」


「貸出なし」


「……」


 高瀬。


「じゃあ」


「ずっと」


「閉まってる?」


「はい」


「紙」


「出てきた」


「はい」


「中から音」


「した」


「はい」


「……」


「物理」


 高瀬。


「無視しすぎ」


「今更」


 真壁。


「それ言います?」


「ごもっとも」


◇


「鍵」


 高瀬。


「形」


「何が」


 藤原。


「普通?」


「普通の」


「学校の鍵」


「合鍵」


「ある?」


「事務室」


「……」


 真壁。


 少しだけ。


 考える。


「一年前」


「貸出記録」


「残ってる?」


「……」


 藤原。


「調べる」


 三人。


 過去。


 十月十三日。


 旧視聴覚室。


 鍵。


 貸出。


「……」


 藤原の指。


 止まる。


「ある」


「誰」


 高瀬。


「17時39分」


「……」


「借用者」


 三人。


 見る。


『高瀬』


「……俺」


「返却」


 真壁。


「……」


『記録なし』


「……」


 高瀬。


 小さく。


「鍵」


「持ってった?」


「はい」


 藤原。


「でも」


「今」


「鍵」


「職員室にある」


「……」


「いつ」


「戻った」


「記録なし」


「……」


「じゃあ」


 高瀬。


「十六日」


「俺が」


「戻ってきた時?」


「可能性」


 真壁。


「高い」


◇


「鍵」


 高瀬。


「見せて」


「開けないんですよね」


 藤原。


「見るだけ!」


「……」


「信用ない!」


 事務室。


 鍵。


 古い。


 金属。


 札。


『旧視聴覚室』


「……」


 高瀬。


 手。


 伸ばす。


「待って」


 真壁。


「何」


「写真」


「先」


「はい」


 三人。


 撮る。


 高瀬。


 鍵。


 触る。


「……」


 冷たい。


「何も」


「ない?」


 藤原。


「……」


 高瀬。


 少し。


 眉を寄せる。


「いや」


「何」


「これ」


 鍵。


 持ち手。


 裏。


 小さい。


 傷。


「文字?」


「……」


 藤原。


 目を細める。


「数字」


 真壁。


「何」


 高瀬。


 三人。


 近付く。


 刻まれている。



『109』



「……」


 高瀬。


 止まる。


「109?」


 藤原。


「何の番号」


 真壁。


 小さく。


 眉を寄せる。


「鍵番号?」


「でも」


 藤原。


「札には」


「視聴覚室」


「……」


 高瀬。


 その数字を。


 指で。


 なぞらない。


 ただ。


 見る。


「109」


 なぜか。


 胸。


 少しだけ。


 ざわつく。


 理由。


 分からない。


「高瀬先生」


「何」


「顔」


「また?」


「何か」


「感じた?」


「……」


 高瀬。


 少し考える。


「分からん」


「でも」


「嫌じゃない」


「……」


 真壁。


「珍しい」


「怖い数字じゃない?」


「うん」


「何か」


 一度。


 言葉を止める。


「知ってる感じ」


「……」


「記憶?」


「そこまでは」


「……」


「今日は」


 藤原。


「ここまで」


「はい」


 高瀬。


 素直に。


 鍵を。


 戻す。


「……」


 真壁。


 高瀬を見る。


「何」


「いや」


「返した」


「返すわ!」


「前なら」


「ポケット入れてたかも」


「窃盗!」


 藤原。


 笑う。


「さすがに」


「それはないでしょ」


「……」


 二人。


 高瀬を見る。


「何その間!」


◇


 放課後。


 高瀬。


 一人。


 教室。


「109」


 ノート。


 数字。


 書く。


『旧視聴覚室の鍵』


『刻印 109』


「……」


 何だ。


 109。


 Review69。


 自己選択率69%。


 そして。


 109。


「……数字増えた」


 少しだけ。


 嫌になる。


「でも」


 数字のために。


 追わない。


 そう。


 決めた。


 ノート。


 閉じる。


「先生」


「うわっ!」


 いつもの女子生徒。


「今日三回目くらい?」


「もう数えてない!」


「何書いてたんですか」


「秘密」


「怪しい」


「教師にも秘密くらいある」


「恋愛?」


「違う!」


「じゃあ借金?」


「もっと嫌!」


 女子生徒。


 笑う。


「先生」


「何」


「今日」


「何点?」


「……」


 高瀬。


 少し考える。


「七十一」


「お」


「高い」


「うん」


「何で」


「昨日」


「やりたいこと」


「やらなかった」


「……?」


「でも」


「それが」


「今は」


「良かったと思ってる」


「……」


 女子生徒。


 少し。


 考える。


「我慢?」


「違う」


「じゃあ」


「選んだ」


「……」


「やらないことを?」


「うん」


「それ」


「選択なんですか」


「……」


 高瀬。


 少しだけ。


 笑う。


「多分」


「やらないって」


「結構」


「ちゃんとした選択なんだな」


「……」


 女子生徒。


 小さく。


 笑う。


「先生」


「何」


「ちょっと大人になりました?」


「俺三十六!」


「遅!」


「うるさい!」


 教室。


 笑い。


◇


 その夜。


 真壁。


 自宅。


 今日の記録。


 旧視聴覚室。


 鍵。


 109。


「……」


 写真。


 拡大。


 数字。


 見る。


 その時。


 スマートフォン。


 Review。


「……」


 開く。


━━━━━━━━━━━━


【Review】


★★★★★


━━━━━━━━━━━━



「いつも通り」


 閉じようとする。


 次。



━━━━━━━━━━━━


対象


真壁透


━━━━━━━━━━━━


役割


制止者


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 少しだけ。


 顔をしかめる。


「違う」


 小さく。


 言う。


「俺」


「真壁だから」


 画面。


 一瞬。


 揺れる。


 そして。


━━━━━━━━━━━━


役割


制止者


 ↓


未確定


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁の。


 目が。


 少し。


 大きくなる。


 次。



━━━━━━━━━━━━


自主選択を確認。


既定役割との


乖離を検出。


━━━━━━━━━━━━



「……俺」


 昨日。


 高瀬を止めた。


 SYSTEMに言われたからじゃない。


 役割だからじゃない。


 自分が。


 危ないと思ったから。


 そして。


 今日は。


 高瀬に。


 選ばせた。


「……」


 真壁。


 少しだけ。


 笑う。


「やっと」


 その瞬間。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


警告。


分類安定度


低下。


━━━━━━━━━━━━



 笑顔。


 消える。



━━━━━━━━━━━━


No.004


識別率


82%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 さらに。



━━━━━━━━━━━━


識別率低下が


50%を下回った場合


再分類処理を実行します。


━━━━━━━━━━━━



「再分類……」


 真壁。


 画面。


 見つめる。


 次。



━━━━━━━━━━━━


候補分類


UNKNOWN


━━━━━━━━━━━━



「……UNKNOWN」


 真壁の。


 胸。


 少しだけ。


 冷たくなる。


 30話。


 知らない番号。



『分類できない対象は、


削除されます。』



「……」


 真壁。


 スマートフォン。


 握る。


 そして。


 三人のグループチャット。


 開く。


 一瞬。


 止まる。


 でも。


 今度は。


 迷わない。



『二人とも。


ちょっと見てほしいものがあります。』



 送信。



 数秒。



 高瀬。



『今いける』



 藤原。



『大丈夫です』



「……」


 真壁。


 少しだけ。


 息を吐く。


 一人で。


 抱えない。


 その選択自体が。


 さらに。


 自分を。


 No.004ではない何かへ。


 変えていくかもしれない。


 怖い。


 でも。


 真壁は。


 写真を。


 二人へ送った。



◇



 同じ頃。



 学校。



 誰もいない。



 三階。



 旧視聴覚室。



 鍵の掛かった。



 扉の向こう。



 暗闇。



 机も。



 椅子も。



 何もない。



 その中で。



 小さな。



 光。



 一つ。



 スマートフォンの。



 画面。



━━━━━━━━━━━━


【接続待機】


━━━━━━━━━━━━



 その前。



 誰かが。



 座っていた。



 顔は。



 見えない。



 手だけ。



 画面へ。



 触れる。



━━━━━━━━━━━━


接続予定者


高瀬


━━━━━━━━━━━━



 次。



━━━━━━━━━━━━


同行可能数


2


━━━━━━━━━━━━



 その人物は。



 長い間。



 画面を。



 見つめた。



 そして。



 小さく。



 呟いた。



「……三人で来るなって」



 声。



 男。



「言っただろ」



 一度。



 息。



「高瀬」



 暗闇。



 その声だけが。



 静かに。



 残った。

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