Review3 評価対象:高瀬悠介
夢ではなかった。
朝になってもレビューは消えていなかった。
高瀬悠介はソファに座ったままスマホを見つめる。
一睡もできなかった。
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
なのに現実感がなかった。
レビューは残っている。
昨日と同じように。
そこに存在していた。
★★★★★
人生としては面白いです。
【評価対象】
高瀬悠介
【現在の評価】
2.8
【改善点】
教師を辞めた判断は妥当でした。
【総評】
藤原美咲への対応については、現在も評価が分かれています。
そして。
★★★★★
諦めが悪いところは評価できます。
「……」
高瀬はスマホを置いた。
何度見ても意味が分からない。
だが。
一つだけ確かなことがある。
このレビューは自分を知っている。
それも。
普通ではあり得ないレベルで。
高瀬は立ち上がった。
コーヒーを淹れる。
教師だった頃からの習慣だった。
考え事をする時はコーヒー。
嬉しい時も。
落ち込んだ時も。
何かを決める時も。
いつもそうだった。
マグカップを持ってソファへ戻る。
そして。
ノートを開いた。
昨夜書いたメモ。
① 誰が送ったのか
② 目的は何か
③ なぜ自分なのか
④ なぜ藤原美咲なのか
高瀬は③に丸を付けた。
「まずはこれだろ……」
なぜ自分なのか。
教師を辞めた人間なんて世の中にいくらでもいる。
もっと優秀な人間もいる。
もっと失敗した人間もいる。
なのに。
なぜ自分なのか。
考えれば考えるほど分からなかった。
その時だった。
スマホが震える。
高瀬は反射的に顔をしかめた。
通知。
【あなたへのレビューが更新されました】
「……」
慣れない。
絶対に慣れない。
高瀬は通知を開いた。
新しいレビューが追加されている。
★★★★☆
思考の方向性は適切です。
数秒。
理解が追いつかなかった。
「は?」
声が漏れる。
思考の方向性。
それは。
今考えていたことではないのか。
高瀬は立ち上がる。
部屋を見回す。
誰もいない。
当たり前だ。
だが。
頭の中を覗かれているような感覚が消えない。
気持ち悪い。
不快だ。
だが。
恐怖とは少し違う。
高瀬は気付いていた。
自分は怖がっているのではない。
腹が立っている。
勝手に評価されていることに。
勝手に人生へ点数を付けられていることに。
腹が立っていた。
「じゃあ教えろよ」
スマホへ向かって呟く。
「何が目的なんだ」
沈黙。
当然だ。
返事が来るはずがない。
そう思った。
その瞬間。
スマホが震えた。
【あなたへのレビューが更新されました】
高瀬の喉が鳴る。
画面を開く。
新しい項目が追加されていた。
【評価対象】
高瀬悠介
【選定理由】
閲覧権限がありません。
高瀬はしばらく動けなかった。
意味が分からない。
だが。
確実に。
今の質問に対する返答だった。
そして初めて理解する。
このレビューは。
ただのイタズラではない。
自分と会話している。




