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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『人生としては面白いです』

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3/6

Review3 評価対象:高瀬悠介

 夢ではなかった。


 朝になってもレビューは消えていなかった。


 高瀬悠介はソファに座ったままスマホを見つめる。


 一睡もできなかった。


 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。


 なのに現実感がなかった。


 レビューは残っている。


 昨日と同じように。


 そこに存在していた。


★★★★★


 人生としては面白いです。


【評価対象】


 高瀬悠介


【現在の評価】


 2.8


【改善点】


 教師を辞めた判断は妥当でした。


【総評】


 藤原美咲への対応については、現在も評価が分かれています。


 そして。


★★★★★


 諦めが悪いところは評価できます。


「……」


 高瀬はスマホを置いた。


 何度見ても意味が分からない。


 だが。


 一つだけ確かなことがある。


 このレビューは自分を知っている。


 それも。


 普通ではあり得ないレベルで。


 高瀬は立ち上がった。


 コーヒーを淹れる。


 教師だった頃からの習慣だった。


 考え事をする時はコーヒー。


 嬉しい時も。


 落ち込んだ時も。


 何かを決める時も。


 いつもそうだった。


 マグカップを持ってソファへ戻る。


 そして。


 ノートを開いた。


 昨夜書いたメモ。


① 誰が送ったのか


② 目的は何か


③ なぜ自分なのか


④ なぜ藤原美咲なのか


 高瀬は③に丸を付けた。


「まずはこれだろ……」


 なぜ自分なのか。


 教師を辞めた人間なんて世の中にいくらでもいる。


 もっと優秀な人間もいる。


 もっと失敗した人間もいる。


 なのに。


 なぜ自分なのか。


 考えれば考えるほど分からなかった。


 その時だった。


 スマホが震える。


 高瀬は反射的に顔をしかめた。


 通知。


【あなたへのレビューが更新されました】


「……」


 慣れない。


 絶対に慣れない。


 高瀬は通知を開いた。


 新しいレビューが追加されている。


★★★★☆


 思考の方向性は適切です。


 数秒。


 理解が追いつかなかった。


「は?」


 声が漏れる。


 思考の方向性。


 それは。


 今考えていたことではないのか。


 高瀬は立ち上がる。


 部屋を見回す。


 誰もいない。


 当たり前だ。


 だが。


 頭の中を覗かれているような感覚が消えない。


 気持ち悪い。


 不快だ。


 だが。


 恐怖とは少し違う。


 高瀬は気付いていた。


 自分は怖がっているのではない。


 腹が立っている。


 勝手に評価されていることに。


 勝手に人生へ点数を付けられていることに。


 腹が立っていた。


「じゃあ教えろよ」


 スマホへ向かって呟く。


「何が目的なんだ」


 沈黙。


 当然だ。


 返事が来るはずがない。


 そう思った。


 その瞬間。


 スマホが震えた。


【あなたへのレビューが更新されました】


 高瀬の喉が鳴る。


 画面を開く。


 新しい項目が追加されていた。


【評価対象】


 高瀬悠介


【選定理由】


 閲覧権限がありません。


 高瀬はしばらく動けなかった。


 意味が分からない。


 だが。


 確実に。


 今の質問に対する返答だった。


 そして初めて理解する。


 このレビューは。


 ただのイタズラではない。


 自分と会話している。

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