Review28 最初の質問
朝。
校門前。
高瀬は。
目の前の男子生徒を。
じっと見ていた。
━━━━━━━━━━━━
【SYSTEM】
再接触を確認。
対象
No.001
接触回数
2
質問権限
解放。
━━━━━━━━━━━━
「……」
聞ける。
今。
ようやく。
聞ける。
頭の中に。
質問が。
一気に溢れた。
お前は誰だ。
No.001って何だ。
Reviewは何なんだ。
SYSTEMは。
桐谷は。
一年前。
俺は。
死んだのか。
「……先生?」
男子生徒が。
少しだけ。
首を傾げる。
「何ですか」
「……」
高瀬は。
スマートフォンを見る。
質問権限。
解放。
それだけ。
何問まで?
制限は?
分からない。
なら。
最初の一問。
失敗したくない。
「……」
高瀬は。
男子生徒を見る。
目。
声。
制服。
名札。
「……名札」
高瀬の目が。
止まる。
付いていない。
「お前」
「はい」
「名前」
一瞬。
聞きそうになる。
でも。
止めた。
「……」
男子生徒。
「何ですか」
高瀬は。
ゆっくり。
息を吐いた。
「お前」
一度。
言葉を選ぶ。
「怖い?」
男子生徒の。
表情が。
止まった。
「……」
「何が」
「今」
「……」
「俺に」
「見つかったこと」
男子生徒は。
すぐには答えなかった。
「先生」
「うん」
「それ」
「最初に聞くんですか」
「……」
「もっと」
少しだけ。
笑う。
「聞きたいこと」
「あるでしょ」
「ある」
「じゃあ」
「でも」
高瀬が。
少しだけ。
目を細める。
「今」
「お前が」
「目の前にいるから」
「……」
「先に」
「そっち」
男子生徒。
何も。
言わない。
高瀬。
もう一度。
「怖い?」
数秒。
「……怖いですよ」
声。
小さかった。
今までより。
ずっと。
普通の。
少年の声。
「何が」
「先生が」
「うん」
「思い出し始めてること」
「……」
「それと」
「何」
「先生が」
一度。
視線を落とす。
「前と」
「違うこと」
高瀬の胸。
少し。
強く鳴る。
「前?」
「一回目」
「……」
「知ってるのか」
男子生徒。
高瀬を見る。
「はい」
「全部?」
「いいえ」
「じゃあ」
高瀬。
質問を。
重ねようとする。
その瞬間。
スマートフォン。
震える。
━━━━━━━━━━━━
【SYSTEM】
質問1
使用済み。
━━━━━━━━━━━━
「……一問?」
高瀬の表情が。
変わる。
次。
━━━━━━━━━━━━
残質問数
2
━━━━━━━━━━━━
「あと二つ」
男子生徒。
少しだけ。
笑う。
「大事に使ってください」
「……」
「お前」
「はい」
「それも知ってた?」
「はい」
「最初から?」
「はい」
「……」
高瀬が。
少しだけ。
苛立つ。
「言えよ」
「言えません」
「何で」
「ルールです」
「誰の」
「……」
男子生徒が。
口を閉じる。
「SYSTEM?」
「……」
「Review?」
「……」
「お前自身?」
返事。
なし。
高瀬。
止まる。
聞けば。
一問減る。
「……くそ」
「先生」
「何」
「前も」
「そうでした」
「何が」
「質問」
「……」
「全部」
「一気に」
「聞こうとして」
「……」
「自分で」
「潰してました」
高瀬。
目を細める。
「俺」
「前も」
「お前に会ってる?」
「……」
男子生徒。
少しだけ。
苦しそうな顔。
「それ」
「二問目にします?」
「……」
高瀬。
黙る。
「しない」
「そうですか」
「まだ」
「うん」
「聞かない」
男子生徒。
ほんの少し。
驚いた。
「先生」
「何」
「変わりましたね」
「最近」
「よく言われる」
「……」
男子生徒。
小さく笑う。
◇
校舎。
近く。
生徒。
増えてくる。
「場所」
高瀬。
「変える?」
「はい」
「どこ」
「誰もいないところ」
「怪しいな」
「先生が言う?」
「俺教師」
「だからです」
「……」
少し。
笑う。
その会話。
あまりにも。
普通。
高瀬は。
一瞬。
混乱する。
本当に。
この子が。
No.001?
二人。
校舎裏。
倉庫横。
「ここなら」
「うん」
「先生」
「何」
「藤原先生と」
「真壁先生」
「……」
「呼ばないんですか」
高瀬。
表情が。
変わる。
「お前」
「二人知ってる?」
「はい」
「どこまで」
「それ」
男子生徒。
少し笑う。
「質問にします?」
「……」
「ずるいなお前」
「前からです」
「前から?」
「……」
「今の」
「失言?」
「……」
男子生徒。
少しだけ。
視線を逸らす。
「先生」
「うん」
「呼んでください」
「二人を?」
「はい」
「何で」
「今回」
一度。
間。
「先生」
「一人じゃないから」
「……」
高瀬の。
目が。
少しだけ。
揺れる。
「お前」
「それ」
「知ってるんだな」
「はい」
「前」
「俺一人だった?」
また。
問い。
でも。
高瀬。
今度も。
止める。
「……」
男子生徒。
少しだけ。
笑った。
「よく止まりましたね」
「うるさい」
「前なら」
「もう二問目」
「使ってました」
「……」
「お前」
「俺のこと」
「結構知ってるな」
「……」
「それ」
「質問じゃないですよね」
「確認」
「なら」
一度。
言葉を止める。
「はい」
◇
高瀬。
グループチャット。
『学校来れる?』
藤原。
『もういます』
真壁。
『職員室です』
高瀬。
『校舎裏』
藤原。
『何で』
高瀬。
『No.001いる』
既読。
数秒。
藤原。
『動かないで』
真壁。
『一人で喋りすぎない』
「……」
高瀬。
少し笑う。
「何」
男子生徒。
「いや」
「怒られた」
「でしょうね」
「お前まで」
◇
数分後。
「高瀬先生!」
藤原。
少し息を切らして。
来る。
後ろ。
真壁。
「走った?」
高瀬。
「早歩きです」
「それもう全員使うな」
真壁。
男子生徒を見る。
「……」
止まる。
藤原も。
男子生徒を見る。
「この子?」
高瀬。
「多分」
男子生徒。
「多分なんですね」
「SYSTEM上」
「No.001」
「でも」
「お前本人か」
「まだ」
「確定してない」
「……」
真壁。
少しだけ。
高瀬を見る。
「ちゃんと保留してる」
「褒めるな」
「成長」
「それ禁止!」
藤原。
少しだけ。
笑う。
男子生徒。
三人を見る。
「……」
その表情。
少しだけ。
寂しそう。
「何」
高瀬。
「いや」
「三人」
「……」
「前と」
「全然違うなって」
三人。
一斉に。
表情が変わる。
「前」
真壁。
「何」
「知ってる?」
男子生徒。
真壁を見る。
「……」
「俺」
真壁。
「一年前」
「あなたに」
「会ってる?」
男子生徒。
何も言わない。
高瀬。
「待て」
「何」
「質問」
「俺しか」
「使えない」
「……」
「真壁の質問」
「多分」
「答えない」
男子生徒。
小さく頷く。
「はい」
「やっぱり」
◇
「残り二問」
藤原。
「はい」
高瀬。
「何を聞くか」
「三人で決める」
「……」
男子生徒。
少しだけ。
目を伏せる。
「何」
高瀬。
「いや」
「前」
「それ」
「できなかったから」
「……」
「前の俺」
「一人で使った?」
問い。
また。
口から出かける。
「……」
高瀬。
自分で。
止まる。
「……危な」
「高瀬先生」
真壁。
「本当に」
「少し成長した」
「少し余計!」
藤原。
「じゃあ」
「まず」
「候補」
ノート。
開く。
『No.001は誰か』
『Reviewとは何か』
『SYSTEMとは何か』
『LOOP 1で高瀬に何が起きたか』
『桐谷の場所』
『星の返却場所』
『一年前の藤原の二回目の嘘』
『真壁No.004の意味』
「多い」
高瀬。
「二問じゃ足りない」
真壁。
「だから」
「優先順位」
藤原。
「最重要」
「何だと思う?」
三人。
黙る。
高瀬。
男子生徒を見る。
目が。
合う。
「……」
高瀬。
少しだけ。
違和感。
「お前」
「何ですか」
「さっき」
「怖いって」
「言ったな」
「はい」
「俺が」
「前と違うから」
「はい」
「何で」
「違ったら」
「怖い?」
藤原。
「高瀬先生」
真壁。
「それ」
「二問目になります」
「……」
高瀬。
止まる。
「危な」
男子生徒。
「でも」
「それ」
少しだけ。
表情を変える。
「いい質問です」
「……」
高瀬。
少し考える。
そして。
「二問目」
「使う」
藤原。
「本当に?」
「うん」
真壁。
「理由」
「こいつ」
「俺が違うことを」
「怖がってる」
「……」
「なら」
「今回」
「何か変えたら」
「こいつに」
「何が起きるかもしれない」
「……」
「そこ」
「知らないまま」
「進みたくない」
藤原。
少しだけ。
高瀬を見る。
「自分のこと」
「聞かないんですね」
「……」
「後で」
高瀬。
少し笑う。
「まだ」
「一問ある」
「……」
真壁。
小さく。
口元を緩める。
「じゃあ」
「聞きましょう」
◇
高瀬。
男子生徒を見る。
「二問目」
「はい」
「俺が」
「一回目と違うと」
「何で」
「お前は怖い?」
スマートフォン。
震える。
━━━━━━━━━━━━
【SYSTEM】
質問2
受理。
━━━━━━━━━━━━
男子生徒。
目を閉じる。
少し。
長い。
「……先生」
「うん」
「一回目」
「僕は」
「先生が」
「同じように動くと」
「思ってました」
「……」
「同じように」
「桐谷先生を」
「助けて」
「……」
「同じように」
「真壁先生に」
「止められて」
「……」
「同じように」
「藤原先生の嘘を」
「信じて」
「……」
藤原。
指が。
少し震える。
「それで」
高瀬。
「僕は」
「……」
男子生徒。
少しだけ。
息を吸う。
「元に」
「戻れると」
「思ってました」
「……元に?」
高瀬。
真壁。
「何が」
男子生徒。
すぐには。
答えない。
「質問」
「ここまでです」
「……」
スマートフォン。
━━━━━━━━━━━━
回答完了。
残質問数
1
━━━━━━━━━━━━
「くそ」
高瀬。
「一番大事なとこ」
「切った」
男子生徒。
「僕が切ったんじゃない」
「ルール?」
「はい」
「……」
藤原。
「でも」
「一個」
「分かった」
「何」
高瀬。
「No.001」
「一回目と」
「同じ流れを」
「望んでいた」
「……」
真壁。
「元に戻るため」
「はい」
「つまり」
真壁。
男子生徒を見る。
「今回」
「高瀬先生が」
「変わると」
「あなたが」
「戻れない?」
男子生徒。
表情。
変わる。
でも。
答えない。
「……」
高瀬。
胸。
少し。
苦しくなる。
「お前」
「自分のために」
「一回目」
「再現しようとしてた?」
「……」
「質問に」
「します?」
男子生徒。
少しだけ。
苦しそう。
「……しない」
「そうですか」
「でも」
高瀬。
目を逸らさない。
「もし」
「お前が」
「元に戻るために」
「俺が」
「また壊れないと」
「いけないなら」
「……」
「それ」
「今度は」
「ちゃんと」
「相談しろ」
男子生徒の。
表情が。
止まる。
「……相談?」
「うん」
「先生」
「何」
「僕」
一度。
声が。
少し。
震える。
「先生を」
「一回」
「壊したかもしれないんですよ」
「……」
「それでも」
「相談しろって?」
「それとこれ」
「別」
「……」
「俺」
「お前のこと」
「まだ」
「何も知らない」
「……」
「だから」
「勝手に」
「悪いやつにも」
「可哀想なやつにも」
「しない」
「……」
「話せるなら」
「話せ」
「そこから」
「決める」
男子生徒。
何も。
言わない。
藤原。
真壁。
二人も。
静か。
その時。
男子生徒。
小さく。
笑った。
「……先生」
「何」
「そういうとこ」
「変わってない」
「どこ」
「人を」
「放っておけない」
「……」
「でも」
「前より」
「ちょっと」
一度。
言葉を選ぶ。
「迷惑です」
「何で!」
高瀬。
思わず。
声が出る。
男子生徒。
初めて。
ちゃんと。
笑った。
「聞くから」
「……」
「前は」
「勝手に助けただけだった」
「……」
「今回は」
「僕に」
「どうしたいって」
「聞くから」
「……」
「それ」
「困ります」
高瀬。
少しだけ。
笑う。
「なら」
「困れ」
「先生」
「俺も」
「ずっと」
「困ってる」
藤原が。
吹き出す。
真壁も。
少し。
笑った。
男子生徒。
三人を見る。
そして。
本当に。
少しだけ。
安心したような。
顔をした。
◇
「最後の一問」
藤原。
「どうします?」
「今日は」
高瀬。
「使わない」
真壁。
「賛成」
藤原。
「私も」
男子生徒。
「……」
「何」
高瀬。
「いや」
「前」
「全部」
「その日に」
「使いました」
「……」
「やっぱり」
高瀬。
「何を聞いた?」
「それ」
男子生徒。
少しだけ。
笑う。
「最後の一問で」
「聞きます?」
「うわ」
「腹立つなお前」
「先生ほどじゃない」
「何で俺」
◇
「で」
高瀬。
「お前」
「授業」
「……」
男子生徒。
「何ですか」
「学校来てるなら」
「授業あるだろ」
「……」
「何組」
男子生徒。
一瞬。
止まる。
「先生」
「何」
「それ」
「質問?」
「普通の質問!」
「でも」
「答えたら」
「……」
「どうなる」
「分かりません」
「……」
高瀬。
目を細める。
「お前」
「やっぱり」
「学校の生徒じゃない?」
「……」
真壁。
「高瀬先生」
「止める?」
「はい」
「残り一問」
「分かってる」
藤原。
「今日は」
「ここまで」
「……」
高瀬。
少し不満。
「高瀬先生」
二人同時。
「はい」
男子生徒。
少しだけ。
笑う。
「仲良いですね」
「最近」
高瀬。
「そうらしい」
「俺は認めてない」
真壁。
「私も」
藤原。
「お前ら!」
男子生徒。
また。
少しだけ。
笑った。
◇
別れる前。
「先生」
男子生徒。
「何」
「次」
「会える保証」
「ありません」
「……」
「何で」
「僕にも」
「分からない」
「……」
「だから」
一度。
言葉を止める。
「最後の一問」
「大事にしてください」
「分かった」
「……」
「あと」
「何」
「星」
「……」
三人。
表情が変わる。
「返さないで」
高瀬。
「やっぱり」
「001の紙」
「お前?」
男子生徒。
少しだけ。
目を伏せる。
「……」
「質問にします?」
「しない」
「……」
「でも」
高瀬。
「分かった」
「返さない」
「……」
「信じる?」
「半分」
「……」
「残り半分」
「疑う」
男子生徒。
少しだけ。
笑った。
「それで」
「いいです」
そして。
校舎の方へ。
歩き出す。
「待て」
高瀬。
男子生徒。
振り返る。
「何ですか」
「名前」
「……」
「今は」
「聞かない」
「……」
「でも」
高瀬。
少しだけ。
笑う。
「次」
「会ったら」
「教えろ」
男子生徒。
しばらく。
高瀬を見る。
「……はい」
小さく。
答えた。
そして。
今度こそ。
歩いていった。
◇
「追わないんですね」
藤原。
「……」
高瀬。
少し。
足。
動きそうになる。
止める。
「追わない」
真壁。
「成長」
「それ禁止!」
三人。
少し笑う。
でも。
高瀬。
男子生徒が。
消えた角。
まだ。
見ている。
「……No.001」
藤原。
「かなり」
「人間っぽかった」
「うん」
高瀬。
「怖がってた」
「うん」
「笑った」
「うん」
「困るって」
「言った」
「……」
「ただの」
高瀬。
少しだけ。
目を細める。
「番号じゃない」
真壁。
高瀬を見る。
「それ」
「俺にも」
「前言った」
「……」
「お前は真壁」
「うん」
「こいつも」
「No.001じゃなく」
一度。
言葉を止める。
「名前」
「あるんだろうな」
「多分」
藤原。
「次」
「聞けるといいですね」
「うん」
高瀬。
小さく。
頷いた。
◇
その夜。
高瀬。
自宅。
ノート。
『質問残数 1』
『No.001は一回目と同じ展開を望んでいた』
『理由:元に戻るため?』
『高瀬が変わったことでNo.001は恐怖』
『星は返すな』
「……」
一番下。
高瀬。
少し考えて。
書く。
『No.001』
一度。
止まる。
そして。
線。
横。
『名前未確認』
「……」
番号だけでは。
書きたくなかった。
その時。
スマートフォン。
震える。
Review。
「……」
高瀬。
少し迷う。
開かない。
「今日は」
「いい」
伏せる。
すると。
別の。
通知。
SMS。
「……?」
知らない番号。
開く。
一行。
『最初の質問を変えたんですね。』
「……」
高瀬の。
表情が。
変わる。
返信。
『誰だ』
既読。
返信。
『一回目、
あなたが最初に聞いたのは
「俺はどうすれば助かる?」でした。』
「……」
高瀬の。
指が。
止まる。
一回目。
最初の質問。
自分。
自分が。
助かる方法。
でも。
今回は。
『お前、怖い?』
目の前の相手を。
聞いた。
次。
『だから今回は、
ここから先が
記録にありません。』
「……」
高瀬。
息を止める。
『記録にない?』
返信。
『はい。』
そして。
最後。
『ここから先は、
本当に初めてです。』
高瀬は。
しばらく。
画面を。
見つめた。
一年前と。
同じ地点。
同じ人物。
同じ質問権限。
でも。
最初の一問だけ。
変えた。
それだけで。
未来から。
前例が。
消えた。
高瀬は。
少しだけ。
怖くなった。
そして。
それ以上に。
少しだけ。
笑った。
「……やっと」
小さく。
「俺の人生かよ」
今度の先には。
答えが。
用意されていない。
だからこそ。
初めて。
自分で。
選べる。




