Review17 誰を信じる
【作者より】
『この人生、採点中』を読んでいただき、本当にありがとうございます。
まさかここまで多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、毎日楽しみながら執筆しています。
この作品は、ただ「人生にレビューが届く」物語ではありません。
一つひとつの出来事や何気ない会話、違和感にも意味を持たせながら、「点と点が繋がる物語」を目指しています。
まだまだ謎ばかりですが、ここから物語はさらに大きく動き始めます。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
感想やブックマーク、評価をいただけると、本当に励みになります。
これからも『この人生、採点中』をよろしくお願いいたします!
午後九時五十二分。
藤原美咲は。
机の前から。
動けずにいた。
『返さないで。』
『あれを返したら、
また最初からになる。』
『001』
紙。
手書き。
Reviewでも。
SYSTEMでもない。
「……」
藤原は。
紙へ触れないまま。
スマートフォンを手に取った。
写真。
すでに撮ってある。
次。
高瀬へ電話。
指が。
一瞬止まる。
「……寝てたら」
でも。
これは。
明日でいい話ではない。
発信。
二回。
三回。
『もしもし』
「高瀬先生」
『何』
「起きてました?」
『起きてた』
「嘘」
『……寝るところだった』
「すみません」
『何かあった?』
藤原は。
紙を見る。
「ありました」
電話の向こう。
声が。
少し変わった。
『何』
「星」
『消えた?』
「違います」
『壊れた?』
「違う」
『じゃあ』
「紙が」
『……紙?』
「入ってました」
数秒。
『どこに』
「私の鞄」
『誰の?』
「分かりません」
『内容』
「……」
『藤原』
「今、写真送ります」
通話を切らないまま。
画像。
送信。
既読。
沈黙。
「見ました?」
『……見た』
「どう思います?」
『ちょっと待って』
「はい」
『……これ』
高瀬の声が。
少し低い。
『001って書いてある』
「はい」
『本人?』
「分かりません」
『でも』
「高瀬先生」
『何』
「決めつけない」
『……』
「今それ大事です」
『分かってる』
「本当に?」
『……半分』
「正直」
『成長した』
「自分で言う?」
『最近みんな言うから』
藤原は。
思わず少し笑った。
「真壁先生にも」
『連絡する?』
「した方がいいと思います」
『じゃあ三人で』
「はい」
『ビデオ通話』
「今?」
『今』
「高瀬先生」
『何』
「寝てくださいって」
『こういうの来て寝られる?』
「……」
『藤原は寝られる?』
「無理です」
『ほら』
「それはそうですけど」
『真壁起きてるかな』
「たぶん」
『何で』
「仕事してそう」
『偏見』
「高瀬先生も思ってるでしょ」
『思ってる』
二人。
少し笑った。
でも。
紙は。
机の上に。
静かに。
残っていた。
◇
「……で」
数分後。
画面の中。
真壁。
明らかに。
不機嫌そうな顔。
「何時だと思ってるんですか」
「九時五十八分」
高瀬。
「時間聞いてない」
「起きてた?」
「仕事してました」
「ほら」
藤原。
「何がほらなんですか」
「予想通り」
「人を何だと思ってるんですか」
「真壁」
「もういいです」
真壁が。
ため息。
「で?」
「これ」
藤原が。
カメラを紙へ向ける。
真壁の表情が。
変わった。
「……」
「見えます?」
「はい」
数秒。
黙る。
「001」
小さく。
「はい」
「いつ出た?」
「さっき」
「星の袋」
「その下」
「藤原先生が入れた?」
「入れてません」
「誰か家に来た?」
「来てません」
「鍵」
「閉めてます」
「家族」
「いません」
「……」
真壁が。
少し考える。
「写真」
「撮りました」
「紙を触る前?」
「はい」
「時間分かる?」
「写真に残ってます」
「よし」
「何がよし?」
高瀬。
「最低限、藤原先生の記憶だけではない」
「……」
「画像データとして」
「一回は」
「存在した」
高瀬は。
少し笑う。
「真壁らしいな」
「何が」
「怖がる前に確認」
「怖いですよ」
「……」
真壁は。
紙を見る。
「でも」
「怖いからこそ」
「順番」
「……」
藤原が。
ゆっくり頷く。
「確かに」
真壁。
「次」
「筆跡」
「誰と比較する?」
高瀬。
「それ」
真壁が。
少しだけ眉を寄せる。
「No.001の字」
「知らないでしょ」
「……そうだった」
「じゃあ」
藤原。
「桐谷先生?」
「何で」
高瀬。
「001と桐谷が関係あるかも」
「……」
三人。
少し黙る。
真壁が。
先に口を開く。
「でも」
「今」
「桐谷=001」
「は飛躍」
「分かってる」
高瀬。
「じゃあ」
「何なら比較できる?」
「過去のもの」
藤原。
「星のキーホルダー」
「筆跡ない」
「そうですね」
「……」
三人。
また黙る。
高瀬が。
顔をしかめる。
「これ」
「本人証明できなくない?」
「今は」
真壁。
「できない」
「……」
「なら」
「一旦」
「001本人からのメッセージとは」
「扱わない」
高瀬が。
少し不満そうな顔をする。
「何」
真壁。
「いや」
「絶対何かある顔」
「俺」
一度。
言葉を止める。
「本物な気がする」
「理由は」
「……勘」
「却下」
「早い!」
「高瀬先生」
真壁が。
真っ直ぐ画面を見る。
「勘で」
「星返す?」
「それは」
「返さないでしょ」
「……」
「なら」
「本物かどうかも」
「まだ決めない」
「……」
高瀬は。
少しだけ。
口を尖らせた。
「正論」
「嫌そうに言うな」
「正論苦手になってきた」
「俺も」
真壁。
「お前が言う?」
藤原が。
少し笑う。
◇
「でも」
藤原が。
紙をもう一度見る。
「私」
「一個だけ」
「気になってます」
「何?」
高瀬。
「文章」
「どこ」
「ここ」
藤原が。
指を近付ける。
『あれを返したら、
また最初からになる。』
「また」
「うん」
「これ」
藤原が続ける。
「初めて起きることなら」
「普通」
「『最初からになる』」
「じゃないですか」
真壁が。
目を細める。
「『また』」
高瀬。
「前にも返した?」
「可能性」
真壁。
「LOOP 1」
三人。
同時に。
黙る。
「……」
高瀬が。
ゆっくり椅子へ寄りかかる。
「もし」
「うん」
「一回目」
「星を返した」
「……」
「それで」
「最初から」
「……」
「俺が」
一度。
息を止める。
「死んだ?」
「高瀬先生」
藤原が。
少し強く言う。
「まだ」
「分かってる」
「……」
「でも」
高瀬の声が。
少し小さくなる。
「考えちゃうだろ」
藤原も。
何も言えなくなる。
「俺」
高瀬。
「LOOP 1で」
「死んでるって出た」
「その前」
「星返した?」
「覚えてない」
「桐谷」
「覚えてない」
「知らない生徒」
「覚えてない」
「……」
「全部」
高瀬が。
自分の頭へ手を置く。
「抜けてる」
「……」
真壁が。
静かに言う。
「だから」
「記録する」
「うん」
「今」
「考えた仮説も」
「全部」
藤原。
ノート。
「書きます」
「何て?」
「仮説」
ペン。
『LOOP 1において星を返却した可能性』
高瀬が。
すぐ言う。
「可能性」
「はい」
「確定にしない」
「はい」
真壁が。
少しだけ高瀬を見る。
「成長」
「お前まで!」
「いいことです」
「褒めてる?」
「半分」
「出た」
藤原が。
小さく笑う。
◇
「次」
真壁。
「紙そのもの」
「調べる?」
藤原。
「はい」
「インク」
「紙質」
「指紋」
高瀬。
「指紋まで?」
「触った?」
「まだ」
「なら」
「明日」
「学校で」
「簡単に確認できる範囲から」
「警察ごっこ?」
「嫌ならやめます?」
「やる」
「即答」
「面白そう」
「高瀬先生」
「何」
「遊びじゃない」
「分かってる」
「顔がちょっと楽しそう」
「……」
「図星」
「いや」
「こういう謎」
「教師向いてない?」
「関係ないです」
「はい」
真壁が。
ほんの少し笑う。
「でも」
「何」
「高瀬先生」
「はい」
「謎があると」
「ちょっと元気になりますね」
「……」
「昨日まで」
「死ぬとか言ってたのに」
「言い方」
「今」
「少し楽しそう」
高瀬は。
数秒。
答えなかった。
「……不謹慎?」
「違う」
真壁。
「人間っぽい」
「お前」
「何」
「最近それ言われるの嫌じゃなくなった?」
「……」
「真壁?」
「気のせい」
「顔」
「見ないで」
「分かりやすいぞ」
「切りますよ」
「ごめんごめん」
藤原が。
笑う。
三人の空気。
ほんの少し。
軽くなる。
◇
「じゃあ」
藤原。
「今日は」
「星返さない」
「賛成」
真壁。
「俺も」
高瀬。
「紙は」
「私が保管」
「ただし」
真壁。
「写真を」
「三人に送る」
「今送ります」
「ノートにも」
「書く」
「明日」
「現物を確認」
「はい」
高瀬。
「完璧」
真壁。
「こういうのだけ」
「何」
「話まとまるの早いですね」
「普段何だと思ってんだ」
「脱線」
「否定できない」
三人。
笑う。
「じゃあ」
藤原が。
通話を終えようとする。
「待って」
高瀬。
「何ですか」
「一個だけ」
「はい」
「紙」
「うん」
「もう一回見せて」
藤原が。
カメラを向ける。
「何」
「いや」
高瀬は。
画面越しに。
文字を見る。
『返さないで。』
『あれを返したら、
また最初からになる。』
『001』
「……」
「高瀬先生?」
「何か」
「見つけた?」
「分からん」
「何」
「この字」
「うん」
「見たことある気がする」
真壁。
すぐ聞く。
「どこで」
「……」
「高瀬先生」
「待って」
頭。
記憶。
浮かびそうで。
出ない。
「……黒板?」
「黒板?」
藤原。
「違う」
「プリント?」
「分からん」
「ノート?」
「……」
高瀬が。
目を閉じる。
字。
『返さないで』
少し右上がり。
『001』
最後の一。
「……」
一瞬。
光景。
教室。
去年?
放課後。
一枚の紙。
机。
『先生へ』
「……っ」
「高瀬先生?」
藤原。
「今」
「何」
「思い出した?」
「少し」
「何を」
「手紙」
「誰から」
「……生徒」
「どの生徒」
「分からない」
「内容」
「……」
高瀬の呼吸が。
少し浅くなる。
「『先生へ』」
「うん」
「その下」
「……」
「何か」
「助けてって」
「……」
三人。
動かなくなる。
「高瀬先生」
真壁。
「無理に思い出さない」
「分かってる」
「復元」
「また負荷かかる」
「うん」
藤原。
「今日は終わり」
「でも」
「終わり」
「……はい」
高瀬は。
大人しく頷いた。
「珍しい」
真壁。
「病院で学習した」
「続けばいいですね」
「嫌味?」
「半分」
「もう半分何」
「祈り」
「お前そんなこと言うんだ」
「切ります」
「待って!」
藤原が。
笑った。
「本当に」
「今日は終わりです」
「はい」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「高瀬先生」
「何」
「ちゃんと寝る」
「はい」
「真壁先生も」
「俺も?」
「仕事やめる」
「あと三十分」
「今」
「……」
「真壁先生」
「分かりました」
「よし」
「藤原強」
「高瀬先生」
「何」
「あなたもです」
「はい!」
三人。
通話を切った。
◇
午後十時二十八分。
藤原は。
写真を送信した。
高瀬。
真壁。
自分。
クラウド。
念のため。
複数箇所。
「……これで」
消されても。
どこかには。
残る。
そう思った。
紙を。
透明なクリアファイルへ入れる。
星形キーホルダーとは。
別々。
机の引き出し。
閉める。
鍵。
「……」
少し。
安心した。
スマートフォンを見る。
三人のグループチャット。
高瀬。
『寝ます』
真壁。
『絶対嘘』
高瀬。
『ほんと』
藤原。
『5分後確認します』
高瀬。
『怖』
真壁。
『監視対象』
藤原は。
思わず笑った。
「……何してるんだろ」
でも。
悪くない。
一人じゃない。
そう思える。
スマートフォンを置く。
電気を消そうとした。
その時。
メッセージ。
知らない番号。
「……?」
SMS。
開く。
本文。
一行だけ。
『信じないで。』
「……」
藤原の笑顔が。
消えた。
続けて。
もう一通。
『001は嘘をついている。』
「……誰?」
送信者。
番号のみ。
返信。
『誰ですか?』
送信。
すぐ。
既読にはならない。
数秒。
新しいメッセージ。
『星を返してください。』
「……」
SYSTEMと。
同じ。
要求。
藤原は。
すぐに。
高瀬たちへ連絡しようとした。
でも。
その前。
最後の一通。
『私は、
桐谷です。』
藤原の指が。
完全に。
止まった。
「……桐谷先生?」
消えたはずの人物。
高瀬が忘れた人物。
No.001と。
繋がっているかもしれない人物。
その名前が。
今。
藤原のスマートフォンへ。
自分から。
連絡してきた。




