4:『外食』
車で走ること10分くらい、いつものファミレス『Liquortion』の駐車場についた。
車を降りてデイブが一言。
「……あれ?そういやマイクどこ行った?」
「今更か?帰ったぞ」
そういえば言ってなかったが、マイクは「ケネスと一緒にルークの見舞いに行く。あいつの好物のフライドチキンでも持ってってやろうと思って」って言って、トレイシーが掃除始める直前くらいに帰った。
「ふーん、そっか」
それで会話は終了し、俺たちはファミレスへと入った。
さて、毎度お馴染み日本式の接客を受け、俺たち4人は席に座る。こちら側に俺とショーン、向かい側にデイブとトレイシーが座った。
「好きなもん頼んでいいぞ」
「えっ、いいの?お金あるの?」
トレイシーは驚いてデイブの方を見る。驚くのはいいとして、二言目は余計だ。
「金くらいあるわ」
デイブがトレイシーに不服そうな眼を向ける。
「ごめんごめん……。でもギャングって儲かるの?」
まぁ、そういう疑問も生まれて当然か。その疑問には俺が答えるとしよう。
「今のところちゃんと儲かってるぜ。まぁ、それに関してドンパチは付き物って感じになってるけど」
「ドンパチ?花火か何か?」
「銃撃戦だよ、銃撃戦」
「えぇ……っ!?じゃあ、ピストルで撃ち合いするの……?」
「ピストルだけで済めば苦労しねぇんだけどな…………」
俺は思ったことを口に出しながら頭の後ろで手を組んで、天井を見上げた。
「……あれ、そういや、俺自己紹介してなかったな」
と、ショーンが思い出したように口に出した。今更かよ。
「俺はショーン。ショーン・リスナーだよ。何ヶ月か前に、グレンたちの仲間になったんだ。自己紹介が遅れてごめん」
「いいわよ謝らなくたって。よろしくね、ショーンさん」
「よろしく」
ショーンたちの自己紹介が終わった所でデイブが口を開いた。
「……んで、メニューは決まったか?」
「あっ、ちょっと待って」
まだメニューを見てなかったトレイシーが大慌てでメニュー表のページをめくっていく。
「じゃあ私はこれでいい」
トレイシーはメニューの中のチーズハンバーグセットを指さした。
「OK。お前らは?」
デイブがこっちを見る。
「俺はオニオンソースリブステーキセットで」
「俺も同じのでいいや」
デイブはそれを聞いてから店員を呼ぶボタンを押した。
「……そういえば、ギャングのグループ名とか決まってるの?」
トレイシーが口の中のハンバーグを飲みこんでから口を開いた。
「あぁ、俺らのグループ名は『スラッガーズ』ってんだ。んで、マイク、ルーク、ケネスの3人のグループは『タッパーズ』だったな」
「え?マイクくんは仲間じゃないの?」
トレイシーはキョトンとした顔で俺を見る。
「あいつら3人で別のグループなんだよ。まぁ、俺らとつるんでるから、仲間も同然なんだけどな。いわゆる『ブラザー』ってとこか?」
「へぇー……って、ルークくんとケネスくんもギャングやってるの!?」
「なんだ、あの二人も知り合いか?」
「マイクくんと一緒にいること多かったからね。『俺のダチ』って言ってたわ」
「ふーん、そっか」
そう言って俺はステーキを一口頬張った。
「そういえば、『ピストルだけで済めば苦労しない』って言ってたけど、どんな感じなの?」
デイブは口の中のカレードリアを飲み込んでトレイシーの方を見た。
「……それ聞いてどうすんだ?」
「いや、気になっただけだけど…………ダメだった?」
「いや、別にいいんだけどさ。まず俺らが使ってるのは、ピストル、ショットガン、マシンガン、サブマシンガン、アサルトライフル、ボルトアクションライフル……ってとこか」
「ま、マシンガン!?そんなものまで使うの!?……あとショットガンとピストル以外は……良くわかんなかったけど」
「まぁ、だろうな……」
デイブは頭の後ろで腕を組んだ。
「ま、そんだけいっぱい銃使ってるってこった」
「そうなんだ…………」
そのあとは他愛も無い話をしながら完食し、会計を済ませて店を後にした。
店を出てから帰りの車の中にて。
「ねぇねぇデイブ」
トレイシーが助手席から運転席のデイブの方を見る。
「ん?なんだ?」
「…………今日隠れ家に泊まっていい?」
「「「…………はぁ!?」」」
3人口を揃えて驚いてしまった。とりあえず気を取り直して俺がトレイシーに言う。
「トレイシー、お前何言ってんの!?ちゃんと帰れよ!」
「だって気づいたら家の門限過ぎちゃってたし、もう『友達の家に泊まってく』ってパパにメールしちゃった」
「えぇ……」
ショーンが困惑したような声を漏らす。
車のカーステレオの時計を見ると、8時27分。トレイシーいわく、門限は8時らしい。
「はぁ……お前なぁ……」
デイブがハンドルを握りながら呆れたため息をついた。
「お願い!この通りだから!」
トレイシーは顔の前で両手を合わせて懇願している。
「…………泊めてやろうよ」
ショーンが俺とデイブに向かって言う。赤信号で車を止め、その数秒後にデイブがため息をついた。
「……しゃーねぇなぁ」
「わーい!やったぁ!ありがとー!!」
トレイシーはよほど嬉しかったのかデイブに抱きついた。
(…………あっ)
今確実にデイブの身体がこわばった。その直後に信号が青になる。
ガクンッ!
「あ」
エンストした。デイブがエンストさせるって相当動揺してるなこりゃ…………。
「大丈夫?」
抱きついたままデイブの顔を覗き込むトレイシー。
「だっ、だだ大丈夫だから早く離れろ!運転できないだろ!」
「あっ、ごめん」
トレイシーはデイブから離れて助手席に座り直した。それを確認すると、デイブは一つ大きなため息のようなものを吐いて、エンジンをかけ直す。
背後から後続車両のクラクションを受けつつ、俺たちの乗るワゴン車はゆっくりと隠れ家に向けて再発進した。




