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SLUGGERS!!  作者: ヒラコー
第5章
25/25

5:『激怒』

「ほら、着いたぞ」

 デイブは自分の家の横に車を停めてサイドブレーキを引きながらそう言った。俺はドアを開け、降りてから一度伸びをする。

「……早くどいてくれよ」

「あぁ、わりぃわりぃ」

 背後からショーンに不満を言われたのですぐにどいた。

 トレイシーとデイブも車を降り、デイブが車に鍵をかけたのを確認してみんなで家に入った。


「……コイツを泊めてやるのはいいが、コイツの寝る場所はどうするんだ?」

 デイブが自分の斜め後ろにいるトレイシーを親指で指し示しながら言った。

「あー……どうする?」

 俺がショーンにも話を振ると、ショーンは顎に手を当てて唸り始めた。

「私はソファとかで構わないけど……」

 ほそぼそと提案するトレイシーにデイブが待ったをかける。

「女を床やソファで寝させるやつがあるか。悪いけど、俺の部屋のベッドで勘弁してくれるか?」

「私はいいけど……デイブくんは?」

「俺は1階のソファで寝る」

「別に一緒に寝るとかでもいいけど……」

「アホかお前……色々と問題がありすぎるだろ……。とにかく寝る準備とかは自分でやれ。ほら行った行った」

 デイブは2階を指さして「行け」と催促する。

「……うん。ありがとね」

 トレイシーは2階のデイブの部屋へと上がって行った。


深夜1時頃。

「…………はぁぁぁぁ……」

 デイブはソファに深く座り込むと、大きなため息をついた。俺はその横に座る。

「トレイシーと一緒に寝れば良かったのに」

「ばっ……!?バカ野郎!ンなことできるわけねぇだろうが!」

 デイブは俺の軽いからかいに対して顔を赤くして慌てる。ホントこういうとこウブというかなんと言うか…………。普段こういうことないから、とりあえずイジると面白い。……と言っても俺もそんな経験ないから、俺がそういう立場でも似たような反応するんだろうけど。

「にしても、そこまで慌ててるとトレイシーさんにも惚れてることバレてんじゃない?」

 と、向かいのソファに座るショーンが言った。

「いや、それは無いな」

「え、なんで?」

「アイツすっげぇ鈍いもん」

「えぇ……」

 そう、トレイシーはメチャクチャそういうことに関しては鈍い。全力アピールされても気づかないことがあるくらいだ。それで玉砕した奴を見たことがあるけど、あれはちょっと可哀想だなとか思ったっけ…………。

「まぁいいや。……さて、お前ら」

「どうしたんだデイブ……?急に改まって」

「……久々に飲まないか?」

 デイブはソファの横に置いてあるビニール袋から、酒の瓶を取り出した。瓶には赤いラベルに漢字(だと思われる文字)で名前が書いてある。

「おっ、日本酒じゃん!!」

 ショーンがなんか嬉しそうに言う。

「ショーン、日本酒好きだよな」

「うん。風味が好きなんだよな。ウィスキーとは全然違うしね。あとは度数が低めだから飲みやすいし」

 たしかに日本の酒は風味もまろやかで度数も比較的低めだからとても飲みやすい。

「ただしショーンお前はコップ2杯までな」

「えぇ!?なんで!?」

 ショーンは凄くショックそうな顔をデイブに向けた。

「お前酒癖悪いから、あんまり酔わせると素っ裸になってたりするだろうが」

「…………はい」

 前例もあるせいで言い返せず、まぁ飲ませてもらえるだけマシだと思ったのだろう、すんなりと返事をした。

「コップ取ってくる」

 そう言って俺はキッチンへと向かった。


「……かーーっ、うめぇ!」

 俺は日本酒の入ったグラスをテキーラのショットと言わんばかりにあおる。

「おいおい、高ぇんだから味わって飲めよ」

 酒が入って少しだけ顔の赤くなったデイブが少し苛立ったような顔で言う。ショーンは2杯しか飲めないからと本当にちびちびと飲んでいた。

「わーったよ、悪い悪い。……そういや今日飯食い行く前にさ、『誰かに見られてる気がする』って言ったの覚えてるか?」

「ん?あぁ、なんか言ってたな。それがどうかした?」

 ショーンが酒を飲む手を止めて俺の方を見る。

「アレやっぱり気のせいじゃなかった気がするんだよなぁ」

「え?じゃあ誰が……」

「それが分かんねぇんだよなぁ……」

 俺は顎に手を当てながら、天井を見上げた。

「誰が見てたのか分かんなきゃ、どうせ考えたって無駄だろ。ほっときゃいいさ」

 デイブがそう言って酒をグラスに追加しようとして、「あ、なくなった」と呟いた。

「えぇー……。やっぱり3人で1本だとなんか少ねぇなぁ……」

 俺はとりあえず晩飯前の件は放っておくことにした。

「よし、酒もなくなったし寝るぞ。ほら寝た寝た」

「うぃーっす」

 デイブに促され、俺とショーンはそれぞれ自分の部屋へと戻った。俺はベッドに飛び込み、酒も入っていたのですぐにまどろみの中へ落ちていった。


 窓から差し込む朝日(?)で目が覚めた。時計を見ると8時。うん、朝だな。酒飲んでこの時間なら早起きな方だ。

 部屋を出ると、1階からなにやらいい匂いが漂ってくる。階段を降りてキッチンへ行ってみると、トレイシーが弾丸の餌食にならなかった方のフライパンで目玉焼きとベーコンを焼いていた。

「あ、グレンくんおはよ」

 トレイシーはこちらに気づくと、料理をしながら笑顔で挨拶をした。

「おはよ……」

 俺は挨拶を返したあと大きな欠伸をした。そして椅子に座り、テーブルに頬杖をついて料理するトレイシーの背中を眺める。

「なんだったら、デイブくんとショーンくん起こしてきてくれる?」

「ん、あぁ、了解」

 俺はトレイシーに言われたとおり、2人を起こしに椅子から立ち上がった。

 まずはリビングへと行ってソファで寝るデイブを起こす。

「起きろー」

「……んー、なんだ、もう朝か……?」

 欠伸混じりにそんなことを言いながら、デイブは身体を起こした。そして目の前の小さなテーブルの上に置いた眼鏡をかける。

「トレイシーが朝飯作ってんぞ。さっさとテーブルに行け。俺はショーンを起こしてくる」

「あいよー」

 デイブがキッチンのテーブルの方へ歩いて行く足音を背後に聞きながら、俺は2階のショーンの部屋へと向かった。

 ショーンの部屋に入ると、ベッドから上半身を投げ出して床に顔をつけてる状態でショーンが寝ていた。

(一体どんな寝方したらこうなるんだ?)

 などと考えながら、俺はショーンを揺すって起こそうとする。しかしショーンは起きなかった。何回か大きく揺さぶってみても起きない。

「…………」

 ゴツン。

「いってぇ!!」


「いただきます」

 全員起きて朝食を摂る。ショーンは後頭部をさすりながら口を開いた。

「いってて……ゲンコツはナシでしょ……」

「お前が起きないからだろーが」

「そりゃまぁそうなんだけどさ……いてて……」

 そう言いながらショーンはベーコンエッグトーストを頬張る。

「トレイシーやっぱり料理上手いよな」

 デイブが口の中のものを飲み込んでから言う。

「普段から料理してるだけだよ」

「それでも上手いと思うよ」

 そんな他愛ない会話をしながら全員朝食を完食した。皿洗いなんかは俺らが引き受けることにした。

「それじゃあ、私帰るね」

 トレイシーはそう言いながらカバンに自分の持ち物を詰める。

「お、そうか。んじゃ、またな」

「うん。バイバイ」

 皿洗い中のデイブとトレイシーはそのように言葉を交わして、トレイシーは隠れ家を出た。

「見送りだぁ」

 俺はショーンと一緒にトレイシーが車に乗るのを見送った。

 少ししてからトレイシーの車はエンジンを始動させ、走り去っていった。

「…………さーて、トレイシーも帰ったし、また静かになるぞ」

「そうだね」

 俺とショーンは隠れ家の中に戻った。


 トレイシーは自宅の近くの駐車場に到着し、車を止めて降りてから伸びをした。

「んー……、楽しかったぁ。また遊びに行っちゃおうかしら」

 そんなことを呟きながら助手席の荷物を取ったところで、トレイシーは背後から声をかけられる。

「おい」

「え?」

 振り返ると、東洋人のような顔の男が3人、トレイシーを睨みつけていた。

「アンタがスラッガーズの新入りだな?」

「え?なんのこと?」

 トレイシーからしたら本当に「なんのこと?」である。しかし、そんなことを3人組が知るはずも無い。

「とぼけるなヨ!さぁ、俺たちと来てもらうヨ!」

 そう言って男3人はトレイシーに掴みかかる。

「ちょっ!?放してよ!!私が何かした!?」

「いいから来るネ!」

 そうしてトレイシーは男たちに黒いバンへと押し込まれた。

「イイヨ!車を出すネ!!」

 そうしてトレイシーを乗せたバンは走り出した。


「今日何する?」

 俺はソファにぐでっともたれかかりながらそう言った。

「お前バイトは?」

「この前ビルの着工が終わったばっかでさ、次の仕事までは休みだってよ」

「ふーん……そうか。あ、そうだ。暇だしルークの見舞いにでも行くか」

 デイブの提案にショーンが賛同する。

「お、いいね。そうしようか」

「よし、んじゃさっさと準備だ」

「あいよ」

 俺たちはそれぞれ出かける準備に取り掛かった。

 準備を済ませてから皆でワゴンに乗り込み、ルークの入院する病院へと向かった。

 病院ではルークとポーカーをしたり、最近あったことを話したり、とにかく色々やった。看護婦さんに「うるさい」と怒られてからはちょっと静かにした。いやだって怖いのなんの。あの目つきでギャングとかそっち系の人じゃないってのが不思議なくらいだった。


 俺たちはルークのお見舞いに行って帰ってきた。俺が玄関のポストを開けてみると、一つの封筒が出てきた。

「ん?」

 その場で開けて読んでみる。


 スラッガーズに通告

 お前らの新しい仲間の女は俺たちが預かってる。返して欲しいなら倉庫街B-20に来い。


「はぁ……!?」

 新しい仲間の女って……嫌な予感がする。もしかして……。

「どうした?」

「デイブ、これを見ろ」

「ん?なんだよ?」

 手紙を受け取って目を通すと、デイブは血相を変えた。そしてデイブはすぐにワゴンへと駆け出す。

「おい!?」

「お前ら急げ!トレイシーを助けに行くぞ!!誰だトレイシーを誘拐した野郎!!ぜってぇ許さん!!」

 デイブはトレイシー誘拐に激怒している。

「早くしろ!」

「お、おう!!」

 俺も急いでワゴンに乗り込んだ。

「俺はバイクで行く!」

 ショーンはそう言ってライフルやバイクのキーを取りに隠れ家の中に入っていった。

「俺たちは先に行くぞ」

「おう」

「飛ばすぞ。掴まってろ」

 デイブはエンジンをかけると、ギアを1速に叩き込んでアクセル全開で急発進した。

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