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SLUGGERS!!  作者: ヒラコー
第5章
23/25

3:『レッツ家事仕事』

「これはお料理の前にお掃除ね……」

 トレイシーは腰に手を当て、自分以外誰も居ないキッチンを見回した。キッチンにはカップ麺のゴミやビールの缶やビンなどが放置されている。しかしトレイシーは、キッチンだけでなくリビングも掃除する気だった。リビングは一見片付いているが、部屋の角などにホコリが目立ったからだ。

「……よしっ」

 トレイシーは腰にエプロンを巻いて、気合を入れるために太ももを軽くパンと叩く。

「お掃除開始っ!」

 トレイシーの一人の戦いが、今幕を開けた。


「ふんふふんふふーん♪」

「……ついに始まったか……」

 楽しそうにキッチンの掃除をするトレイシーを壁の陰からひょこっと顔を出して観察しながら、小声で話をする俺、デイブ、ショーンの3人。

「始まったって、何?そんなにヤバいの?」

 ショーンは何も知らないため、不思議そうな顔で俺とデイブを見る。

「いや、まぁ……見方によっちゃヤバいか」

「覚悟しとけ。こりゃあ少なくともキッチンとリビングはピッカピカになるぞ」

 自分から進んで掃除当番とか買って出た挙句、先生の机の上まで整理整頓しておくくらいだからな。

「へぇー……」

 そんなにかぁ、とショーンは小さく言いながらまじまじとトレイシーを見た。

「……さ、俺らは自分の部屋に戻るか」

「なんで?」

 ショーンはデイブの言葉に疑問符を浮かべる。その疑問に俺が答えた。

「自室に鍵かけとかねぇと、トレイシーにキレイさっぱり掃除されちまうかもしれねぇぞ」

 まぁ、さすがに冗談だけどな。

「ひぇぇ……」

 それを真に受けたのか、いち早くそそくさとショーンは自分の部屋へと戻って行った。

「……俺らも戻るか」

「そうだな」

 俺らも壁の陰に顔を引っ込めて、静かに自室へと戻った。


 トレイシーがキッチンの掃除を始めて、40分が経とうとしていた。

「……よーし、キッチンのお掃除は終わったわね!」

 さて、次はリビングの掃除だと思うも束の間、テーブルの上に放置されていた物に、トレイシーは興味を惹かれていた。

「……わぁ、これ拳銃ってやつよね!」

 外観はプラスチックなのにそれなりにずっしりくる重さのそれを、トレイシーはなんとなく手に持って構える。

「こんな感じで撃つのかしら……きゃあっ!?」


 隠れ家2階、デイブと俺の部屋。

「……ん?グレン、お前拳銃は?」

「ん?……あっ、下に置き忘れたかも。取り行ってくるわ」

 俺が立ち上がるとほぼ同時に1階から響く轟音。

「……!?!?」

「んなっ……!?」

 慌てて俺とデイブは階段を駆け下りる。ショーンも少し遅れてついてきた。

「おいっ!」

 テーブルの置いてある方を見ると、拳銃のグリップをがっしりと握り、床に尻餅をついて震えているトレイシーの姿があった。


「……バカ!何やってんだ!」

「ご……ごめんなさい……」

 テーブルの上には拳銃と、弾が着弾したのだろう12ミリくらいの風穴が空いたフライパンが置かれていた。その向こうでは反省しているのか、少し青ざめた顔で俯いたトレイシーが見える。

「……はぁ……とにかく、もしかしたら怪我……いや、怪我どころじゃ済まなかったかもしれないんだからな。気を付けろよな」

 デイブが諭すように柔らかく言う。……まぁ、俺が弾入れてたり、安全装置外してたのが悪いんだしな。

「……にしてもコレ……」

 デイブが穴の空いたフライパンを手に取る。

「…………使い物にならねぇな」

「そうだな……」

 トレイシーがまた申し訳なさそうに「ごめんなさい」と呟いた。

「どうする?フライパン他にあったっけ?」

 俺の質問に、ショーンが顎に手を当てて少し考えてから答える。

「んー、多分もう一個あったとは思うけど……。でも今日はもう外食でいいんじゃない?」

「トレイシー、それでいいか?」

「う、うん……」

 トレイシーも料理する気は失せてしまっているようだ。というか、これはリビング掃除もできそうにないな。

「んじゃ、ちょいと早いけど、行くか」

「おう」

 俺たちは数分ほどトレイシーが落ち着くのを待ってから、全員で外食しに隠れ家を出た。


 一方その頃、ゴミ捨て場の陰から家を出るデイブたちを観察する3人組が居た。

「……ヤツらの仲間に女がいるなんて聞いてないネ」

「俺らが帰ってる間に増えたんじゃないカ?」

「にしてもいい女じゃないカ?俺好みヨ」

「同感ネ。よし、さっさと帰って若頭に報告ネ」

 そんな話をして3人組はその場を立ち去った。


「……ん?」

「どうしたグレン?」

 俺がゴミ捨て場の方を見ていると、デイブがそれを不思議そうに聞いてきた。

「いや……今、なんか見られてた気がして」

「気のせいだろ。ほら、車に乗れ」

「はいはい」

 まぁ、俺は特に気にすることなく車に乗りこんだ。

「出すぞー」

 デイブは全員乗り込んだのをルームミラーで確認してから、エンジンを始動させてクラッチを踏み、ギアを入れる。そしてゆっくりと走り出した。

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