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SLUGGERS!!  作者: ヒラコー
第5章
22/25

2:『相変わらずなお節介』

「着いた」

 隠れ家もといデイブの家の前へと到着した。庭にワゴン車を止めて俺とマイクは車を降りる。トレイシーも道路脇に車を止めて降りた。

「ここが隠れ家!?」

 トレイシーはなんでこんなにテンションが高いのだろう?

「あの、なんでそんなに楽しそうなんですか先輩?」

 マイクも気になってたらしく、マイクの方がトレイシーに質問を投げかけてくれた。

「えーだってワクワクしない?ギャングの隠れ家だよ?」

「そ、そうですか……」

「隠れ家っつっても、デイブの家だけどな」

 俺はボソリとそう言ってドアノブを捻った。


「ただいまー」

 俺が奥に向かってそう言うと、「おかえりー」という2つの声とユーロビートのようなスピード感のある音楽だけが返ってきた。いや、小さく車の走行音も聞こえるか?

 俺は「ゲームでもしてんだろうな」と思いながらリビングへと歩いて行く。案の定デイブはリビングのテレビでレースゲームをしていた。

「……しゃー、俺の勝ちぃー」

「……勝てねぇ……ずっとアクセル全開にしてるのに追いつけねぇ……」

 どうやらショーンが相手させられているようだが、数百メートルレベルでぶっちぎられているらしく、ほぼ意気消沈している。

「デイブー、手加減してやれよー」

「はっはっは、ショーンはまだまだだなぁ!!」

 デイブはどこの大富豪だと言わんばかりの笑い声を響かせた。

「バイクレースゲームならショーンに負けるけどな」

 マイクが後ろでボソッと呟くと、ピタリと笑い声が止まる。

「ええい!もう1戦だ!」

 ショーンが気を取り直してコントローラを握り直し、そしてまた対戦が始まった。

「……あのさ」

 本題に入れてないので、俺はデイブに後ろから声をかける。

「んー?……よっ」

 デイブはコントローラを握って、俺たちの方を見ずに返す。

「トレイシー連れて来たんだけど」

「……ふーん……はぁ!?!?」

 デイブはこちらを一度チラッと見たあと二度見する。

「やっほー♪」

 トレイシーはニコニコ笑顔でデイブに挨拶をした。

「なんでコイツがいるんだよ!?」

「いやー、その……」

「グレン君についてきたの」

 それを聞いてデイブは呆れたような顔でこっちを見る。

「グレン、お前なぁ……」

「……わり」

 俺は、やっぱ連れて来ない方が良かったかな、と思いながら頭を掻いた。

「やったー!勝ったー!」

 ショーンが話してる間にゴールしていた。

「あーっ!!今のはノーカンだろ!?」

 デイブがショーンの方を見て不服そうに言う。

「……はぁ……まぁ、いいよ」

 デイブは大きなため息を吐いてトレイシーの方を見る。

「まぁ……来ちまったもんはしょうがない。コーヒーくらい出すぜ。ソファでゆっくりしててくれ」

(……あれ?)

 俺はデイブの顔を見ていてふと気になったことがある。デイブ……なんか顔赤くねぇか?もしかして……いや、まさかな。

「うん!お言葉に甘えて」

 トレイシーの笑顔に若干不自然な態度で返事してからデイブはキッチンへと向かう。

 …………これ、もしかしてあるんじゃね?

 真相は本人に聞くのが一番だと思ったので、こっそりデイブの後ろをついていく。そしてキッチンで作業を始めたデイブに話しかけた。

「……なぁ、デイブ」

「うわっ、な、なんだよ!?ビックリするだろうが」

 俺は早速本題に移る。

「お前さー」

「ん?」

「……トレイシーのこと、惚れてんのか?」

「ばっ!?おまっ、何言って……!?」

 あっ、ビンゴですねコレは。

「お、おおおお前なぁ…な、ななんなわけないだろ…!」

 デイブは顔を赤くして否定しようとしているが、むしろその動作が真実を認めている気がする。

「どうかしたのー?」

 トレイシーがひょこっとキッチンに顔を覗かせた。

「なっ、なんでもねぇよ!」

「ふーん、変なのー」

 そう言ってトレイシーはまた顔を引っ込めた。

「……ふぅ……」

 デイブは安心したように息を吐く。

「……んで、実際のとこどうなんだよ?」

「……あぁ、惚れてるよ。悪いか?」

「いや、別にー?んじゃ、俺もリビングに戻ってるぜ」

 そう言って俺はリビングへと足を向ける。背後で舌打ちが聞こえたが、何も聞かなかったことにしてリビングへと向かった。


「おら、コーヒー淹れたぞ」

 そう言ってデイブがリビングにコーヒーの入ったポットとマグカップを人数分持って来た。そそくさとマグカップにコーヒーを注ぎ、全員に配る。

「砂糖とミルクは?」

 デイブは客であるトレイシーにはそうやって声をかける。俺含む他の奴には、いつも通りの砂糖とミルクが同時に渡されてるからだ。

「ううん、要らない。ありがと」

「お、おう」

 デイブはトレイシーの笑顔に一瞬たじろぐが、すぐに気を取り直してソファに座った。

 ズズ……とコーヒーをすする音以外何も聞こえない数秒の沈黙の後、トレイシーが口を開いた。

「ねぇねぇ、普段ちゃんとご飯とか食べてる?」

「唐突にどうしたんだよ?」

「だってギャングってあれでしょ?抗争とかそういうので忙しいんでしょ?ちゃんとご飯とか食べてるのかな、って」

 お前は実家の母親か、と思ったが、さすがに口には出さなかった。出したらデイブに殺されそうだし。

 などと考えていると、デイブが口を開いた。

「別にしょっちゅうドンパチやってるわけでもねぇし、ちゃんと飯くらい食ってら」

「じゃあ昨日の晩は何食べたの?」

「…………インスタントヌードル」

「ほらやっぱりちゃんとしたもの食べてないじゃない……」

 まぁ、たしかにショーンは料理ができるが、みんなめんどくさい時はカップ麺とか食ってるのも事実だ。

「よーし、じゃあ今日の晩御飯は私が作るわね!」

 デイブがブッと口の中のコーヒーをマグカップの中に吹き戻した。

「…………は?」

 ごめんなさいトレイシーさん、今なんと?

「んな事しなくていい」

 デイブは落ち着きを取り戻してから言う。

「そんな遠慮しなくてもいいわよ!」

 トレイシーはやる気満々だ。これは言っても聞かないだろうなぁ……。

「はぁ……相変わらずのお節介は1年と少し経っても変わらず、かぁ……」

 デイブは頭を押さえて呟いた。

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