4:ショーン&マイク編『ダチであり弟子』
ルークたちを救出してから2週間が経った。ラゴスのヤツらの動きは特に無いらしい。新聞にはでっかく一面で『製材所で大虐殺!?ギャング集団「ラゴス」の死体の山』と書かれたけど、俺達のことは一切出てこなかった。
ルークたちは俺たちの隠れ家(俺の家)で怪我の治療をして、だいたい治ったので1週間程ここを拠点に思い思いの事をすることになった。
俺は朝早くから愛用のKar98kボルトアクションライフルを整備して組み立て、ライフル用のバッグに入れ、それを肩にかける。
マイクも朝早くに起きて、出かける支度をする。
「マイク、準備できたか?」
「うん。OKだよ」
「じゃあ、行こうか」
俺とマイクは隠れ家を出た。
最近、俺の家の貯金をちょっとだけ崩してバイクを買った。日本製の『Xj400』とかいうバイクの液冷エンジンモデルだ。普通アメリカでは『Xj500』っていう500ccのバイクが出回っているらしいけど、俺の体躯的に一回り小さいXj400(400cc)を選んだ。しかしさすが日本製。少しばかり古いモデルだとかお店で言われてたのに不具合もなく元気に走るし、なにしろ小回りも利いて速い。
俺はバイクに跨ってキーを挿し、ハンドルのボタンを押す。エンジンが始動し、軽くアクセルを吹かすと軽快なエンジン音を鳴り響かせる。
「よし、乗れ」
マイクに後ろに乗るように指示する。マイクは恐る恐る俺の後ろに乗り、俺に掴まる。
「それじゃあ、出すよ。道案内はよろしく」
「もちろん」
俺はギアを入れて発進した。
「次の交差点右」
マイクの指示に従いながらバイクを走らせること15分、マイクの家にたどり着いた。初めて見るが、そこそこ立派な造りの家だ。
「ちょっと待っててくれ」
マイクはバイクを降りて、家の中へと入って行った。
数分後、マイクは俺のライフル用バッグの色違いのような見た目のバッグを背負い家から出てきた。
「準備はいいか?」
「モチのロンだぜ」
「よし乗れ。近くの屋外射撃場に行くぞ」
マイクはまた俺の後ろに乗り、しっかりと掴まった。
たしか、ここから10キロくらいの所に屋外射撃場があったはずだ。
俺は1度バイクのエンジンをふかしてから再発進した。
走ること10分。俺たち屋外射撃場の外に到着した。
「よし、ここだ」
トリック・ヤード屋外射撃場。10万平方メートルの敷地があり、的の前の遮蔽物や、狙撃用の仮設高台など、トリッキーな造りの屋外射撃場で、スナイパーライフルの射撃練習をするには丁度いい。
俺は駐輪場にバイクを停め、マイクと一緒に受付へと向かった。
「ハイハイ2人ね。持ち込みなら1時間16ドル。弾をここで買うなら弾代は別料金ね」
受付は暇そうにタバコをふかしなから事故責任同意書類などを乱雑に置く。
「どーも」
俺とマイクは書類にサインして射撃場へと入った。
「……へぇー……結構広いなぁ……」
マイクは射撃場に入るや否や、キョロキョロと周囲を見回している。
「なんだ?初めてか?」
「あ、あぁ……今まで屋外射撃場には来たこと無くて……」
「ふーん……ま、とにかく練習するぞ」
「お、おう」
俺たちは仮設高台に登ってライフルを取り出した。
「おー、なかなかいいライフルじゃんか。てか、軍用のやつだろ?それ」
マイクがバッグから取り出したのは、緑色のポリマーストック、箱型マガジン式のボルトアクションライフル。しかもストックの前側には2脚が着いている。
「たしかL96A1……だったかな?ショーンは結構レトロな感じの使ってるなぁ」
「Kar98kって言う第二次大戦の銃だよ。普通にちゃんと真っ直ぐ飛ぶし、性能的には劣ってないぞ」
「へぇー……それじゃあ早速、使い方教えてくれ」
そう言ってマイクはL96を俺に差し出してきた。
「はいはい。まず、ゼロイン作業が済んでるかどうか確認させてくれ」
俺はL96を受け取り、銃を構えてみる。
「ゼロイン?」
まあ当然のごとくマイクが首をかしげて聞き返してくる。
「照準の真ん中にちゃんと弾が飛んでいくように照準器を調整することだよ」
「へぇー……スコープ覗いて撃てば当たるって訳じゃないんだな……」
「当たり前だろ?……どれどれ……」
俺はL96に弾を込めてスコープを覗き込む。
「おっ、結構いいスコープ付いてるじゃん」
L96に取り付けられていたスコープは、距離測定用の目盛りや横風用の目盛りなどがしっかりと振られたクロスヘアタイプの照準線で、しかも倍率の変更や照準線の点灯もできるみたいだ。
「よーし……じゃあまず100メートルで着弾点を見てみようか」
仮設高台から100メートル程の所にある金属板に照準線を合わせる。構える腕を安定させて引き金を引き絞ると、轟音とともに弾丸が放たれた。
弾丸は一直線に飛び、金属板にめり込んだ。
「……お?」
「……?どうした?」
もしやと思い、ボルトを引いて次の弾を装填すると、今度は300メートル離れた場所の的に狙いを定めて引き金を引く。また轟音とともに弾丸が放たれ、その弾丸は的のド真ん中を射抜いた。
「……やっぱりな」
「何が?」
マイクが首をかしげてこっちを見る。
「このライフル、ゼロイン作業がバッチリ終わってる」
「え?」
「当てたい所にしっかり飛んでいくぞ」
「マジか……」
マイクは何かに感心したように言う。
「これ、誰が使ってたんだ?ゼロインが済んでるってことは、お前の家の誰かの持ち物なんだろ?」
当然誰が使ってたのか聞きたくはなるだろう。
「……死んだ親父」
「……そうか……」
「うちの親父、こういう射撃とかそういうのが好きだったんだけどさ、去年交通事故で逝っちまって……」
マイクは誤魔化すような笑みを浮かべて頭を掻く。
「じゃあこれ、おまえのおやじさんの形見になるんだな」
「まぁ……そうなのかな」
なんだか俺と重なる部分を感じた。俺はL96をマイクに返す。
「……大事な親父さんの形見なんだ。大切にしてやれよ」
「……おう!」
マイクはライフルを握り締めてにっと笑った。
その後、俺たちはこれでもかと言うくらい射撃の練習をして、屋外射撃場を後にした。




