第六章 ──光を束ねる者
砦の地下にある古い倉庫。
湿った石壁と、かすかな油の匂い。
そこに、アークは一人で座り込んでいた。
机の上には、壊れた魔法鳥の核が散乱している。
魔力妨害結界に触れた瞬間、すべての魔法鳥が沈黙した。
「今のやり方だと、空を奪われたら終わりだ」
アークは拳を握りしめた。
魔法鳥は空を飛ぶ。
空気中の魔力を使う。
だからこそ、帝国の妨害結界に弱い。
だが──
「魔力を空に流さなければいい」
アークの脳裏に、ひとつの線が浮かんだ。
光。
魔力。
そして──束ねるという概念。
「魔力を、糸にする」
その瞬間、アークの中で何かが繋がった。
◆
地下室の扉が開き、リュミエラが入ってきた。
彼女の顔には疲労と焦りが滲んでいる。
「アーク。兵士たちが不安がっているわ。魔法鳥が飛ばせないなら、どう戦えばいいのかって」
「……分かってる」
アークは机の上の魔力核を指差した。
「魔力を空に流すから妨害される。なら、空を使わなければいい」
「空を……使わない?」
「魔力を線にして、地中に通す。空気じゃなく、土と石を媒介にする」
リュミエラは息を呑んだ。
「そんなこと、できるの?」
「できる。ただし、時間がない」
アークは立ち上がり、魔力核を手に取った。
「光魔力線。魔力を細い光の糸に束ね、地中に通す。これなら妨害結界の影響を受けない」
リュミエラの瞳に、希望の光が宿った。
「アーク……あなたって、本当に……」
「天才だろ?」
アークは冗談めかして言ったが、
その目は真剣だった。
◆
その頃、魔法鳥部隊の若者たちは砦の中庭で集まっていた。
「俺たち、何もできないのかよ」
カイが拳を握りしめる。
「でも……アークさんなら、きっと何とかしてくれるよ」
ミナが言う。
カイは歯を食いしばった。
「アークさんに頼ってばかりじゃダメなんだ。俺たちも、強くならなきゃ!」
その言葉に、ミナは静かに頷いた。
「……うん。アークさんが突破口を見つけてくれたら、私たちも全力で戦う」
若者たちの瞳に、再び火が灯った。
◆
地下室。
アークは魔力核を砕き、粉末状にした魔力鉱石を細い溝に流し込んでいた。
「魔力を……束ねて……」
指先から流れる魔力が、粉末を光らせる。
光は細い糸となり、一本の線を形作る。
「できた」
アークは息を吐いた。
光魔力線は、まるで生きているかのように脈動している。
そこへ、リュミエラが再び駆け込んできた。
「アーク! 帝国軍が、砦の目前まで迫ってる!」
アークは光魔力線を掴み、立ち上がった。
「間に合った。これを魔法鳥に繋けば……戦える」
リュミエラが微笑む。
「アーク。あなたはこの国の希望だわ」
アークは首を振った。
「違う。光を束ねるのは俺でも、光を放つのはあいつらだ」
アークの視線の先には、出番を待つ魔法鳥部隊の若者たちの姿があった。




