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魔法異端見聞録  作者: 叢雲 朔
第2章王都篇

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第72話

「君たちは、自分たちの力をどう思っている?」


ラクニマの問いに、誰もすぐには答えなかった。

ファウラが持っていた菓子を皿へ戻す。

ウェントスも口を閉ざした。

アギトは国王の顔を見る。


「……強い力だと思っています」


「それだけかい?」


「いえ」


アギトは少し考えた。


「怖い力でもあると思います」


ラクニマの眉が僅かに動いた。


「怖い?」


「使い方を間違えれば、人を傷つけることができるから」


アギトは自分の手を見る。

この手から放たれる業火。

何度も自分たちを助けてくれた。

同時に、扱いを誤れば誰かを傷つける。


「だから、ちゃんと使えるようになりたいです」


「なるほど」


ラクニマは静かに頷いた。


「他の皆は?」


「私は……」


アクアが少し迷ってから口を開く。


「誰かを守るために使いたいです」


「私も」


テラが続けた。


「困っている人がいたら、助けられるようになりたい」


「俺は……」


ウェントスは腕を組む。


「必要なら使う。それだけだ」


「素っ気ないなぁ」


ファウラが笑う。


「じゃあファウラは?」


「え?」


突然振られて、ファウラが固まる。


「私は……」


少しだけ考える。


「みんなと一緒にいたいから」


「それ、力の話か?」


「いいの!」


ファウラは頬を膨らませる。


「私は私の力で、みんなと一緒にいられればそれでいいの!」


アギトは思わず笑った。


「ファウラらしいな」


「でしょ?」


ラクニマも笑っていた。


「……そうか」


その表情には、先ほどまでの王としての顔がなかった。

ただ、目の前にいる少年少女を眺める一人の人間の顔だった。


「君たちを王都へ呼んだ理由が、少し分かった気がする」


「理由?」


アギトが聞き返す。


「ああ」


ラクニマは紅茶を一口飲む。


「君たちのことを、知りたかった」


それだけだった。

アギトは少しだけ拍子抜けした。


「それだけですか?」


「それだけだ」


ラクニマは笑った。


「国王だからといって、何もかも知っているわけではないからね」


穏やかな時間だった。

少なくとも、この瞬間までは。


「……ただ」


ラクニマがカップを置く。


「君たちの力を恐れる者がいることも、覚えておいてほしい」


空気が変わった。

誰も口を開かない。


「それは……俺たちが痣持ちだからですか?」


アギトが尋ねた。

ラクニマは否定しなかった。


「そうだ」


短い返事。


「マグナ王国は、君たちを敵として扱うつもりはない」


「ですが」


ラクニマの視線が、一人ずつへ向けられる。


「すべての人間が、私と同じ考えだとは思わない方がいい」


その言葉だけは、王としてではなく、一人の人間としての忠告に聞こえた。

アギトは黙って頷いた。


「……分かりました」


ラクニマも頷く。


「それでいい」


再び紅茶の香りが漂う。

ファウラがそっと菓子へ手を伸ばした。


「……食べていい?」


「今その空気で聞くのかよ」


ウェントスが呆れる。

ラクニマは吹き出した。


「もちろんだ」


「やった!」


張り詰めていた空気が、少しだけ緩んだ。

アギトも笑った。

けれど。

国王の言葉だけは、頭の片隅に残っていた。


――すべての人間が、私と同じ考えだとは思わない方がいい。


王都に来てから、まだ数日。

アギトはまだ知らない。

その言葉が、自分たちに向けられた忠告だったのか。

それとも――。

別の何かを意味していたのか。

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