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魔法異端見聞録  作者: 叢雲 朔
第2章王都篇

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第71話

一時間後。

アギトたちは魔法省の正門に集まっていた。

そこには一台の馬車が停まっている。


「これで行くんですか?」


アギトが尋ねる。


「はい。王城までは少し距離がありますから」


リーベラが答えた。


「王城って、歩いて行けない距離じゃないよね?」


ファウラが馬車を見ながら首を傾げる。


「歩いて行くつもりだったのか?」


「だって昨日も結構歩いたし」


「今日は国王陛下に会うんだぞ」


「あ」


ファウラが固まる。


「……服、大丈夫?」


「今気づいたのかよ」


「いや、だっていつもの服だし」


「俺もだ」


ウェントスが自分の服を見る。


「別に問題ないでしょう」


アクアが二人を見て笑う。


「陛下もそこまで気にされないと思いますよ」


「そうそう」


テラも頷く。

結局、誰も着替えることはなかった。

馬車に乗り込む。

アギトたちが乗り終わると、最後にリーベラが乗り込んだ。

扉が閉まる。

馬の蹄が石畳を叩き始めた。

ガタン、と車体が揺れる。


「……王城か」


窓から外を見る。

魔法省を離れ、通りを進む。

昨日歩いた道も、馬車の中から見ると少し違って見えた。

朝の市場には人が集まり始めている。

店を開ける者。

荷物を運ぶ者。

学校へ向かう子ども。

王都の一日が始まっていた。


「やっぱり人が多いな」


「王都ですからね」


リーベラが答える。


「マグナ王国中から人が集まります。商人も、冒険者も、魔法使いも」


「そんなに?」


「ええ」


窓の外へ視線を戻す。

大通りを抜けると、次第に建物が少なくなっていく

代わりに、白い壁が見え始めた。


「……あれ?」


ファウラが窓に顔を近づける。


「近づいてきた!」


「王城だな」


ウェントスが呟く。

巨大な門。

その奥に見える城。

高く伸びた塔の先には、マグナ王国の旗が風に揺れている。

馬車が門の前で止まった。

門番が確認を終えると、ゆっくりと門が開く。

車輪が再び動き出す。


「うわ……」


ファウラの声が小さくなった。

さっきまで騒いでいたのが嘘みたいだった。

王城の敷地内は静かだった。

広い庭園。

整えられた花壇。

中央には大きな噴水。

建物の壁には細かな装飾が施されている。


「綺麗……」


 テラが呟いた。


「でしょう?」


リーベラが少し嬉しそうに言った。


「ここは一般公開されていない場所なので、王都に住んでいる人でも見る機会はほとんどありません」


「じゃあ、結構貴重な経験?」


「そうですね」


「よし」


ファウラが小さく拳を握る。


「来てよかった」


「まだ何もしてないぞ」


「景色見た」


「それだけかよ」


馬車が止まる。

扉が開いた。


「到着しました」


リーベラに続いて、アギトたちも馬車を降りる。

目の前には大きな扉。

その両脇には騎士が立っている。

扉が開いた。


「お待ちしておりました」


一人の侍従が頭を下げる。


「こちらへ」


長い廊下を進む。

足音がやけに響く。

ファウラもさすがに静かになっていた。

やがて、廊下の先に一つの扉が見えた。


「こちらが、お茶会の会場です」


侍従が扉の前で止まる。

扉が開く。


「ようこそ」


奥から声がした。

長いテーブル。

その向こうに、一人の男が座っている。

ラクニマ・コムニース。

マグナ王国国王。

アギトたちは一斉に姿勢を正した。


「そんなに固くならなくていい」


ラクニマは苦笑した。


「今日は堅苦しい話をするつもりはないんだ」


「……はい」


アギトたちは席につく。

テーブルの上には紅茶と、いくつもの菓子が並べられていた。

ファウラの目が輝く。

ラクニマはそれを見逃さなかった。


「好きなものから食べるといい」


「ありがとうございます!」


「おい」


ウェントスが小声で止める。


「いいじゃん」


ラクニマが笑った。


「こういう場で遠慮される方が、私は寂しいからね」


ファウラが菓子を一つ取る。


「いただきます!」


「どうぞ」


一口食べる。


「……おいしい」


「それは良かった」


その様子を見て、ラクニマは目を細めた。

しばらくは他愛のない話が続いた。

王都には慣れたか。

魔法省はどうだったか。

食事は口に合ったか。

アギトたちも少しずつ緊張が解けていった。

だが。

ラクニマが紅茶に口をつけた後、ふとアギトを見る。


「君たちの旅についても聞かせてもらいたい」


「俺たちの?」


「そうだ」


穏やかな声だった。

けれど。

アギトはほんの少しだけ姿勢を正した。


「……どこから話せば?」


「そうだな」


ラクニマは少し考える。


「君たちは、自分たちの力をどう思っている?」


その問いだけが、妙に残った。

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