第63話
「陛下がお呼びです」
サテラの一言に。
「王様!?」
「本当に会えるの!?」
ファウラの目が輝く。
「落ち着け」
「無理!」
「王様だよ!?」
「お前、目がキラキラしてるぞ」
「当たり前!」
「子供か」
「なんだと!」
「やるか!」
「やめろ」
クルデーリスが呆れたようにため息をつく。
「王の前で暴れるなよ」
「流石にしません!」
「多分!」
「不安になることを言うな」
アルバートが苦笑した。
「まあ良い」
「陛下も堅苦しい方ではない」
「そうなんですか?」
アクアが尋ねる。
「善人だよ」
「少々心配性だがな」
「?」
クルデーリスが目を細める。
「……」
アルバートは何も言わなかった。
⸻
王城。
コムニース城。
巨大な扉。
豪華な赤い絨毯。
左右に並ぶ兵士。
そして。
玉座。
そこに座っていたのは。
金髪の男。
年齢は五十代ほど。
威厳ある姿。
しかし。
その瞳には優しさもあった。
「よく来てくれた」
「紅月の夜事件の英雄達よ」
ラクニマ・コムニース。
マグナ王国国王。
「頭を上げてくれ」
「そんなに畏まらなくて良い」
「は、はい!」
ファウラが慌てて顔を上げる。
「元気な子だな」
「えへへ」
「褒められた!」
「褒めてねぇよ」
ウェントスが呆れる。
すると。
「失礼」
国王の左右に控えていた二人が前へ出た。
青い髪の女性。
「レガリア・サフィラスです」
「陛下の護衛を務めています」
落ち着いた声。
そして。
緑髪の青年。
「ウェヌス・ウェリアタース」
「同じく護衛だ」
こちらは軽い口調だった。
「よろしく」
「よ、よろしく!」
アギト達も挨拶を返す。
「ふむ」
ラクニマは微笑む。
「若いな」
「まるで昔の私を見ているようだ」
その時。
彼の視線が。
一瞬だけ。
アギトの胸元に向いた。
「……」
ほんの一瞬。
本当に一瞬だけ。
誰にも気付かれないほど短く。
その表情が曇る。
だが。
「今日は歓迎の席だ」
「好きに王都を見て回るといい」
「ありがとうございます!」
ファウラが笑顔になる。
「やったー!」
「お前、食い物しか考えてないだろ」
「失礼な!」
「半分くらいしか考えてない!」
「考えてるじゃねぇか!」
玉座の間に笑いが広がる。
しかし。
そんな中。
クルデーリスだけが。
国王の一瞬の変化を見逃さなかった。
(……そういうことか)
銀髪の教師は静かに目を閉じる。
そして。
誰も知らない。
この王城のどこかで。
ある男達が。
既に動き始めていたことを。
「確認した」
「間違いない」
「五人全員」
「……いや」
「七人か」
黒衣の男は不気味に笑う。
「仕事を始めるぞ」
ドミナートル・テネブラーラム。
王国の闇が。
静かに牙を研いでいた。




