第61話
賑やかな大通りを進み。
馬車は王城とは別方向へ向かっていた。
「城じゃないのか?」
ウェントスが尋ねる。
「ええ」
リーベラは頷く。
「皆さんの滞在先は、王国魔法省の施設になります」
「王城じゃないんだ」
「残念」
ファウラが肩を落とす。
「王様見たかったのに」
「会えるかもしれませんよ?」
「ほんと!?」
「だから落ち着け」
「うるさい!」
「やるか!」
「望むところだ!」
「また始まりました……」
アクアが苦笑する。
やがて。
馬車は巨大な白い建物の前で止まった。
「着きました」
「ここが王国魔法省です」
「でっか……」
アギト達は思わず見上げる。
何階建てなのかも分からない。
白い石造り。
青い屋根。
そして。
中央には王国の紋章。
「すご……」
テラも目を輝かせる。
「学院より大きいですね」
「当然です」
リーベラは少し誇らしげに微笑んだ。
「ここはマグナ王国の魔法研究の中心ですから」
その時。
「お帰りなさいませ」
一人の女性が出迎えた。
銀色の髪。
眼鏡。
落ち着いた雰囲気。
「秘書官、サテラ・ルードスです」
「国王陛下に代わり、歓迎いたします」
優雅に一礼する。
「おぉー!」
「秘書っぽい!」
「どんな感想だよ……」
ウェントスが呆れる。
「こちらの方々が?」
「はい」
サテラは五人を見渡した。
「紅月の夜事件の英雄」
「アギト様達ですね」
「英雄!?」
ファウラが飛び跳ねる。
「聞いたか!?」
「聞こえてる!」
「英雄だって!」
「だから落ち着け!」
「無理!」
アクアとテラは笑いを堪えていた。
しかし。
「……」
サテラの視線は。
ほんの一瞬。
アギトの左胸を見ていた。
そして。
誰にも分からないほど小さく。
目を細めた。
⸻
【???視点】
「到着したか」
暗い部屋。
男は書類を机に置く。
「アギト」
「ファウラ」
「アクア」
「ウェントス」
「テラ」
「そして……」
「魔性紋保持者」
彼の前には。
ドミナートル・テネブラーラムの紋章。
「上からの依頼だ」
「失敗は許されない」
「王都にいる間に」
「処理する」
冷たい声。
そして。
男は立ち上がった。
「動け」
「紅月の英雄を狩る」
闇の中で。
複数の影が笑った。
⸻
その頃。
窓辺に立つクルデーリスは。
王都の空を見上げていた。
「……嫌な予感しかしないな」
すると。
「珍しく弱気だな」
「!」
振り向く。
そこにいたのは。
白髪の男。
年老いているはずなのに。
その瞳には力が宿っていた。
「久しぶりだな」
「クルデーリス」
銀髪の教師の目が見開かれる。
「……アルバート」
「アルバート・クラヴィス」
「生きていたのか」
「勝手に殺すな」
老人は苦笑した。
「お前も相変わらずだな」
五百年の時を越えた再会。
それは。
新たな嵐の始まりでもあった。




