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魔法異端見聞録  作者: 叢雲 朔
第1章学園篇後半
56/67

第55話

「――っ!」


アギトは思わず足を止めた。


空。


巨大な門。

その向こう。

闇の中。

無数の赤い瞳。

まるでこちらを観察するかのように。


いや。


品定めするかのように。

静かに。

ただ静かに。

見下ろしていた。


「なんだよ……」


ファウラの声が震える。


「数が……」


ウェントスの顔色が青ざめる。


「あり得ない」


「なんなんだよ、あれ」


その数。


数十。


いや。


数百。


正確な数など分からない。

分かるのは。

一つだけ。


「やばい」


アクアが呟いた。


「本当に」


「やばい」


それは。


本能。


理屈ではない。

生物としての本能が。

あれは見てはいけないものだと。

そう叫んでいた。


【グリフォン視点】


「……はっ」


獣人の男は。

乾いた笑みを浮かべた。


「冗談きついぜ」


赤い瞳。

門。

そして。

その奥。


「下級悪魔」


「中級悪魔」


「上級悪魔までいやがる」


「おまけに……」


その顔から笑みが消える。


「四天魔の眷属か」


「笑えねぇ」


額を汗が流れる。

五百年前。

幾度となく戦場を駆けた。

死線も潜った。

だが。


「デーモンキング」


「最初から本気かよ」


珍しく。

その声には焦りが混じっていた。


「アギト!」


クルデーリスの声が響く。


「止まるな!」


「!」


「今やるべきことを見失うな!」


「……!」


アギトは目を見開いた。


そうだ。


門も。


悪魔も。


恐ろしい。


だが。


今。


目の前で苦しんでいる命がある。


「はい!」


再び駆け出す。


「グルァアアア!」


巨大狼が咆哮を上げる。

苦しみに耐えきれず。

暴走する。


「ファウラ!」


「任せろ!」


炎が走る。


「ウェントス!」


「言われなくても!」


風が狼の動きを逸らす。


「テラ!」


「はい!」


大地の壁。


「アクア!」


「援護する!」


水流が傷を抑える。

そして。


「アギト!」


「今!」


「うおおおおお!」


拳を握る。

魔性紋が輝く。

赤い炎。

いや。

違う。

その炎の中に。

微かに。

紫色の光が混じっていた。


「!」


クルデーリスが目を見開く。


「まさか……」


五百年前。

一人しかいなかった。

その色。


「何故だ」


「何故君が……」


アギトの拳が。

狼の額の結晶へ届く。


そして。


その瞬間。

門の奥。

赤黒い瞳の主が。

初めて。

大きく目を見開いた。


『紫炎……?』


『馬鹿な』


『あの男の力は』


『既に――』


驚愕。

困惑。

そして。

歓喜。


『ククク……』


『そうか』


『そういうことか』


『面白い』


『実に面白い』


空間が震える。


「!」


クルデーリスの表情が変わる。


「全員伏せろ!!」


門の奥から。

一本の槍が。

音を置き去りにして。

放たれた。

その標的は。

アギトだった。

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