第40話
夕陽が差し込む図書館。
赤く染まった床に、五つの影が伸びていた。
窓の外では、部活動を終えた生徒たちの声が遠くに聞こえる。
そんな穏やかな空気の中。
「よし!」
「みんな友達!」
テラが元気よく宣言した。
「早くないですか?」
アギトが苦笑する。
「そう?」
「普通!」
「普通じゃないです」
「だよな!」
ファウラが大きく頷く。
「友達になるには!」
「一緒に飯食って!」
「笑って!」
「遊んで!」
「喧嘩して!」
「仲直りして!」
「……あれ?」
「もう友達じゃね?」
「確かに」
アクアがくすりと笑う。
「そうかも」
「おお!」
「アクアも認めた!」
「えへへ」
テラは嬉しそうに胸を張る。
「じゃあ決定!」
「今日から五人組!」
「名前付ける?」
「要りません」
「即答!」
「却下」
ウェントスも迷わず答える。
「二人とも冷たい!」
「普通です」
「普通」
「お前ら仲良いな!」
「違う」
「違います」
声が揃った。
「「……」」
「「あ」」
「ははは!」
「息ぴったり!」
ファウラが爆笑する。
アクアも肩を震わせながら笑っていた。
その笑顔につられるように。
アギトの頬も緩む。
少し前まで。
友達なんて必要ないと思っていた。
どうせ失う。
どうせ離れる。
そう思っていた。
けれど。
「……」
目の前では。
ファウラが大声で笑い。
アクアが優しく微笑み。
テラがはしゃぎ。
ウェントスが呆れながらも、その場から離れようとはしない。
温かい。
賑やかで。
少しうるさくて。
でも。
嫌じゃない。
むしろ。
失いたくないと思えるくらいには。
大切なものになり始めていた。
「アギト?」
「どうかした?」
アクアの声に、アギトは我に返る。
「いえ」
「なんでもないです」
「変なの!」
ファウラが笑う。
「まぁいい!」
「せっかく五人揃ったんだ!」
「なんかしようぜ!」
「なんかって?」
「なんか!」
「雑ですね」
「よし!」
テラがぴょんと立ち上がる。
「なら鍛冶場行こう!」
「鍛冶場?」
「うん!」
「私、武器作るの好き!」
「見て見て!」
テラは肩に掛けていたハンマーを誇らしげに掲げた。
「これ!」
「自分で作った!」
「え!?」
アギトが目を丸くする。
「凄いですね!」
「だろ!」
「すごーい!」
「おぉ!」
「……」
ウェントスも珍しく興味を示していた。
「いい出来」
「ほんと!?」
「うん」
「重心も悪くない」
「分かるの!?」
「少し」
「天才だ!」
「違う」
「照れてる?」
「違う」
「顔赤い!」
「夕日」
「図書館の中ですよ?」
「……」
「また無言になった!」
笑い声が響く。
その時だった。
コンコン。
図書館の窓を。
何かが叩いた。
「?」
全員が振り向く。
そこには。
一羽の黒い鳥。
その足には。
小さな筒が括り付けられていた。
「伝書鳥?」
ウェントスの表情が変わる。
「軍用だ」
「え?」
「なんでそんなものが……」
鳥は窓枠に降り立つ。
そして。
真っ直ぐ。
アギトの方を見た。
「僕?」
小さな筒の封を解く。
中に入っていた紙には。
たった一行。
『クルデーリス様より。
明日、放課後。
一人で来い。』
「……?」
アギトは首を傾げた。
しかし。
紙を覗き込んだウェントスの目が。
僅かに細められる。
「軍用の伝書鳥」
「しかも幹部直通」
「……珍しい」
夕陽は。
いつの間にか沈み始めていた。
そして。
誰も知らない。
この呼び出しが。
アギトの運命を少しだけ動かし始めることを。




