第37話
「条件反射!?」
夕暮れの訓練場。
ファウラの声が響く。
「なんでそんなすぐ謝るんだよ!」
「学習した」
「偉い!」
「褒めてない」
「どっちだよ!」
また笑い声。
「休憩終わり」
ウェントスが立ち上がる。
「アギト」
「はい」
「再開」
「はい!」
「じゃあ俺も!」
「駄目」
「なんで!?」
「邪魔」
「ひどっ!」
アクアが苦笑する。
「ファウラ君、座ってて?」
「うぅ……」
「クッキー食べる?」
「食べる!」
「単純ですね」
「よく言われる!」
「褒めてません」
「最近その流れ多くないか?」
「気のせいです」
⸻
「魔力を流して」
「炎を維持」
「はい」
ポッ。
小さな火。
「もっと細く」
「うぐぐ……」
「もっと」
「鬼ですか」
「まだ」
「うぅ……」
汗が流れる。
しかし。
昨日より安定している。
「……そう」
ウェントスが小さく頷いた。
「上達してる」
「本当ですか?」
「本当」
「やった!」
「喜ぶのは早い」
「鬼ですね」
「よく言われる」
「褒めてません」
「知ってる」
「知ってるんだ!?」
後ろでファウラが吹き出す。
「ははは!」
「お前!」
「結構ノリいいじゃん!」
「普通」
「普通じゃねぇ!」
⸻
その時。
「おーい!」
遠くから男子生徒が駆け寄ってきた。
「ファウラ!」
「大変だ!」
「ん?」
「A組とC組が揉めてる!」
「また?」
「また」
ウェントスが呆れたように呟く。
「何があったんですか?」
アクアが尋ねる。
「模擬戦で負けた負けてないで揉めてる」
「子供か!」
「子供だ!」
ファウラが立ち上がる。
「止めてくる!」
「え?」
「おーい!」
走り出す。
「待ってください!」
アギトも追いかける。
「君も?」
ウェントスが首を傾げる。
「なんとなく!」
「そう」
「なら僕も行く」
「え?」
「面倒事は嫌い」
「でも」
「怪我人はもっと嫌い」
アクアも微笑む。
「私も行く!」
⸻
訓練場の隅。
「だから俺の勝ちだ!」
「いや俺だ!」
「やんのか!」
「上等だ!」
一触即発。
「おーい!」
ファウラが飛び込む。
「喧嘩すんな!」
「ファウラ?」
「関係ねぇだろ!」
「ある!」
「友達になる予定の奴が怪我したら嫌だからな!」
「……は?」
全員がぽかんとする。
「友達?」
「そう!」
「だから喧嘩禁止!」
「理由雑だな!」
「雑で悪いか!」
「ははっ!」
誰かが笑う。
つられて。
「なんだよそれ」
「馬鹿らし」
空気が緩む。
「……まったく」
ウェントスがため息をつく。
「君は」
「馬鹿だね」
「褒めるなよ!」
「褒めてない」
「え?」
「え?」
アギトとアクアが同時に笑った。
その様子を。
少し離れた校舎の窓から。
クルデーリスが見ていた。
「……騒がしい」
しかし。
その表情は僅かに柔らかい。
「悪くない」
そして。
さらに遠く。
木の上。
「ははっ」
グリフォンが笑う。
「熱血馬鹿か」
「嫌いじゃねぇ」
風が吹く。
「なぁ」
「見てるか」
「アイツ」
「ちゃんと友達できてるぞ」
赤い瞳が夕陽を映す。
「……羨ましいくらいにな」




