第36話
「では明日から」
「厳しくする」
「お手柔らかに……」
「無理」
「即答!?」
教室に。
二人の笑い声が小さく響いた。
⸻
翌日。
放課後。
訓練場。
「遅い」
「すみません!」
既にウェントスは来ていた。
魔法書を片手に。
「三分」
「え?」
「遅刻」
「三分ですよ!?」
「三分だ」
「すみません……」
「別に怒ってない」
「ならその圧はなんなんですか」
「生まれつき」
「便利ですね」
「そうでもない」
ウェントスは本を閉じた。
「始めよう」
「はい!」
「まず」
「火球を作って」
「またですか?」
「基本」
「大事」
「分かりました」
アギトは魔力を流す。
ポッ。
小さな炎。
「維持して」
「はい」
「もっと小さく」
「え?」
「もっと」
「小さく」
「うぐぐ……」
炎が豆粒ほどになる。
「そう」
「次」
「もっと小さく」
「鬼ですか」
「まだ」
「えぇ……」
すると。
「おーい!」
元気な声。
「アギトー!」
「ウェントスー!」
「ファウラ君」
「ファウラ」
「邪魔」
「ひどっ!?」
赤毛の少年が走ってくる。
「特訓してんのか!」
「うん!」
「俺も混ぜろ!」
「嫌」
「即答!?」
「騒がしい」
「いいじゃん!」
「よくない」
「ケチ!」
「帰れ」
「ひどい!」
二人のやり取りにアギトが苦笑する。
すると。
「……ふふっ」
「?」
小さな笑い声。
「アクアさん?」
「ご、ごめん」
「なんか」
「いつもこんな感じだなって」
いつの間にかアクアも来ていた。
「アクア!」
「差し入れ持ってきたよ」
「おお!」
「クッキー!」
「やった!」
ファウラが歓声を上げる。
「待て」
ウェントスが止める。
「特訓中」
「えー」
「休憩は必要だよ?」
アクアが微笑む。
「……」
「……」
ウェントスは少し考え。
「五分」
「やった!」
「ウェントス優しい!」
「違う」
「効率」
「またまた」
「違う」
「照れてる!」
「違う」
「お?」
「顔赤いぞ?」
「夕日」
「まだ明るいですよ?」
「……」
「無言になった!」
ファウラが爆笑する。
「ははは!」
「お前!」
「意外と面白いな!」
「……帰る?」
「すみません!」
「謝るの早い!」
アクアも笑う。
アギトも笑う。
そして。
ウェントスも。
「……ふっ」
本当に少しだけ。
笑った。
「!」
「笑った!」
「ウェントスが笑った!」
「珍しい!」
「年一回?」
「ファウラ」
「ごめん」
「条件反射!?」
また笑い声。
四人の笑い声は。
夕暮れの訓練場に響いていた。
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少し離れた木の上。
「四人か」
グリフォンが風に吹かれながら笑う。
「青春してるじゃねぇか」
赤い瞳が細まる。
「いいな」
「羨ましいぜ」
そして。
五百年前の親友の姿を思い出す。
「……お前も」
「こんな顔してたな」
その声は。
どこか寂しかった。




