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魔法異端見聞録  作者: トミー
第1章学園篇前半
36/65

第35話

「面白そうだ」


そう言い残して去っていったウェントス。


「変な奴ですね」


「変な奴だ!」


「ファウラ君が言う?」


「失礼だな!」


アクアがくすくす笑う。


「でも」


「悪い人じゃないよ」


「そうなんですか?」


「うん」


「一人でいることが多いけど」


「困ってる人を見かけると放っておけないし」


「この前も迷子の子を助けてたよ」


「へぇ」


「ただ」


「素直じゃないんだよなぁ」


ファウラが苦笑する。


「頭いいし」


「強いし」


「顔もいいのに」


「もったいねぇ」


「なんでですか」


「友達少ない!」


「余計なお世話です」


「うおっ!?」


いつの間にか後ろに立っていた。


「ウェントス!」


「食堂で騒ぐな」


「すまん!」


「謝るの早っ」


アクアが笑う。


「こんにちは、ウェントス君」


「ああ」


「こんにちは、アクア」


「お前も大変だな」


「慣れてるから」


「おい!」


ファウラがショックを受ける。


「俺は面倒な奴か!?」


「違うの?」


「……違わない!」


「認めるんですね」


アギトは思わず吹き出した。


「ふっ」


「?」


今。


ほんの少し。


ウェントスが笑ったような気がした。


「……何?」


「いえ」


「笑うんですね」


「失礼な」


「笑うことくらいある」


「年一回くらい?」


「ファウラ」


「ごめん」


即謝罪。


「早い!」


「学習した!」


「偉い」


「褒めるな!」


「どっちですか」


また笑い声が上がる。

その空気に。

ウェントスは少しだけ目を細めた。


(……悪くない)


騒がしい。

うるさい。

非効率。

でも。

どこか懐かしい。

そんな感覚だった。

そして、その日の放課後。


「忘れ物した……」


教室へ戻るアギト。

誰もいないはずの教室。

しかし。

窓際の席。

そこには一人。

ウェントスが本を読んでいた。


「まだいたんですか?」


「……君か」


静かな夕日が差し込む。


「本、好きなんですね」


「嫌いじゃない」


「何読んでるんですか?」


「魔法理論」


「勉強熱心ですね」


「好きだから」


短い返事。

沈黙。

だが、不思議と気まずくはない。


「君」


ウェントスが本を閉じた。


「今日の実技」


「はい?」


「魔力の流し方」


「無茶苦茶だった」


「ぐはっ」


「だが」


「悪くない」


「?」


「才能はある」


「ただ」


「雑」


「ファウラみたいですね」


「彼ほどではない」


珍しく。

ウェントスが少し笑った。


「もし」


「本気で強くなりたいなら」


「?」


「放課後」


「付き合ってあげてもいい」


夕日に照らされる静かな秀才。


「え?」


「嫌なら別にいい」


「いえ!」


「お願いします!」


「そう」


ウェントスは再び本を開く。


「では明日から」


「厳しくする」


「お手柔らかに……」


「無理」


「即答!?」


教室に。

二人の笑い声が小さく響いた。

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