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魔法異端見聞録  作者: トミー
第1章学園篇前半
35/65

第34話

「運命だ!」


「重いです」


「ひどい!」


三人の笑い声が食堂に響く。


「あはは……」


アクアは小さく笑った。


「ファウラ君、相変わらず元気だね」


「元気だけが取り柄だからな!」


「もっと胸張るところありますよ」


「そうか?」


「そうです」


席に着く三人。


「いただきます!」


「いただきます」


「いただきます」


「うまっ!」


「まだ一口ですよ?」


「分かる!」


「何がですか」


「美味いってことが!」


「雑!」


アクアはまた笑った。

どこか。

二人のやり取りを見ていると落ち着く。


「二人って仲良いんだね」


「さっき知り合ったばっかりです」


「親友だ!」


「早すぎます!」


「なんで!?」


「親友ってそんな簡単に決まるものじゃ……」


「じゃあ友達!」


「ランク下げた」


「ひどい!」


ファウラが項垂れる。


「そんなに落ち込まなくても……」


「よし!」


「アギト!」


「はい?」


「これから仲良くなればいい!」


「それはそうですね」


「だろ!」


「だから親友だ!」


「戻った!」


「細かいこと気にすんな!」


「その精神見習いたいです」


「褒めるなよ!」


「褒めてます」


「マジか!」


その様子に、アクアは優しく微笑む。


(なんだろう)


(楽しい)


入学してから。

まだ数週間。

それなのに。

なんだか昔から知っている友達みたいだった。


「そういえば」


アクアが口を開く。


「アギト君って業火属性なんだよね?」


「はい」


「珍しいね」


「よく言われます」


「怖くないの?」


「え?」


予想外の質問。


「自分の力」


「……」


アギトは少し考えた。


「怖いです」


「暴発しますし」


「みんなに迷惑かけるかもしれないし」


「そっか」


アクアは静かに頷く。


「でも」


柔らかな笑顔。


「怖いって思えるなら大丈夫だよ」


「え?」


「本当に怖い人は」


「怖いって思わないから」


「……」


「私のお母さんが言ってたの」


「だから」


「焦らなくていいと思う」


「少しずつで」


「アギト君はアギト君なんだから」


優しい声。

不思議だった。

初めて会ったのに。

胸の中が少し温かくなる。


「ありがとうございます」


「うん!」


「困った時は頼ってね!」


「回復魔法も得意なんだ!」


「おお!」


「怪我しても安心!」


「怪我前提なんですね」


「ファウラ君がいるから」


「なんで!?」


「爆発しそうだし」


「失礼だな!」


「今日の模擬戦で火球何発撃った?」


「覚えてない!」


「ほら」


「うぐっ……」


また笑い声が上がる。

その時。


ガタン。


誰かが立ち上がる音。

少し離れた席。

本を読んでいた少年だった。


「ごちそうさま」


静かな声。


「ん?」


ファウラが振り返る。


「ウェントスじゃん」


「知り合いですか?」


「同じクラス!」


「めっちゃ頭いい奴!」


「そうなんですね」


緑がかった黒髪。

整った顔。

風のように静かな雰囲気。


「……騒がしいな」


小さく呟く。


「おーい!」


ファウラが手を振る。


「ウェントス!」


「一緒に食わね?」


「遠慮する」


即答だった。


「えー!」


「俺は静かな場所で食べたい」


「冷たい!」


「普通だ」


「普通じゃない!」


ウェントスは小さくため息をつく。

そして。

一瞬だけ。

アギトを見る。


「……業火属性」


「?」


「珍しいね」


それだけ言うと。

トレーを持って立ち去っていった。


「なんだあいつ」


「悪い奴じゃないんだけどなぁ」


「友達少ないし」


「余計なお世話だ」


「うわっ!?」


いつの間にか後ろにいた。


「聞こえてる」


「ごめん!」


「別にいい」


ウェントスは再びアギトを見る。


「君」


「はい?」


「面白そうだ」


「……え?」


「いや」


「なんでもない」


そう言い残して。


今度こそ食堂を後にした。


「変な奴ですね」


「変な奴だ!」


「ファウラ君が言う?」


「失礼だな!」


「あはは!」


アクアが笑う。

そして。

誰も気付かなかった。

去っていくウェントスの瞳に。

ほんの少しだけ。

興味の色が宿っていたことに。

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