第33話
「またやろうぜ!」
「次は負けません」
「おう!」
模擬戦を終えたアギトとファウラ。
周囲の生徒たちも少しずつ引き上げ始める。
「お前、結構やるな!」
「ファウラ君の方こそ」
「ははっ!」
「楽しかった!」
汗だくなのに、ファウラは満面の笑みだった。
「腹減った!」
「そればっかりですね」
「運動した後は飯!」
「人生の基本!」
「そんな基本初めて聞きました」
「教えてやる!」
肩を組んでくる。
「ちょっ」
「飯だ!」
「近いです!」
「細かいこと気にすんな!」
⸻
昼休み。
学園食堂。
「でっか……」
アギトは思わず呟いた。
広い。
人も多い。
そして何より。
「うまそう……」
「だろ!」
ファウラは得意げだ。
「俺のお勧めは肉!」
「野菜も食べてください」
「肉!」
「聞いてください!」
そんなやり取りをしていると。
「うわっ」
ドン。
誰かとぶつかってしまった。
「あっ」
小さな声。
水色の長い髪。
優しそうな瞳。
少し小柄な少女だった。
「あ、ごめんなさい!」
アギトは慌てて頭を下げる。
「いえ!」
「こちらこそ!」
少女も慌てて頭を下げる。
「怪我してませんか?」
「大丈夫です」
「良かった……」
ほっとしたように胸を撫で下ろす少女。
その時。
「うおっ!」
ファウラが驚いた。
「アクアじゃん!」
「ファウラ君?」
少女が目を丸くする。
「久しぶり!」
「昨日も会ったよ?」
「そうだった!」
「覚えて!」
アクアはくすっと笑った。
「相変わらずだね」
「褒めるな褒めるな!」
「褒めてないよ?」
「え?」
「え?」
アギトは少し笑ってしまう。
「初めまして」
「アクアです」
「一年A組」
「水属性を使います」
「アギトです」
「一年B組です」
「よろしくお願いします」
「うん!」
アクアは柔らかく微笑んだ。
「よろしくね」
どこか。
安心する笑顔だった。
「お!」
ファウラが閃く。
「一緒に飯食おうぜ!」
「え?」
「迷惑じゃないかな……」
「ならない!」
「決定!」
「強引ですね」
「細かいこと気にすんな!」
「その台詞好きですね」
「よく言われる!」
「褒めてません」
「え?」
まただ。
アクアは思わず笑った。
「ふふっ」
「仲良しなんだね」
「さっき知り合ったばっかりです」
「運命だ!」
「重いです」
「ひどい!」
三人の笑い声が食堂に響く。
⸻
少し離れた席。
「へぇ」
一人の少年が本を閉じる。
緑がかった黒髪。
整った顔
静かな瞳。
「騒がしいな」
呟いて、再び本を開く。
その視線は。
一瞬だけ。
アギトに向いていた。
「……業火属性」
「珍しい」
そして。
何事もなかったかのように。
ページをめくった。
⸻
一方。
魔王城の屋上。
「二人目か」
グリフォンは風に吹かれながら笑う。
「友達ってのはいいもんだ」
「なぁ」
「お前もそう思うだろ?」
誰もいない空へ。
五百年前の親友へ。
優しく問いかける。
しかし。
返事はない。
「……そうだよな」
「返事できるわけねぇか」
赤い瞳に。
ほんの少しだけ。
寂しさが宿った。




