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魔法異端見聞録  作者: トミー
第1章学園篇前半
33/65

第32話

「アギト!」


「勝負だ!」


「なんでそんなに元気なんですか!?」


「楽しいから!」


「理由が子供なんですよ!」


「褒め言葉だ!」


「褒めてません!」


周囲から笑い声が起こる。


「良い機会だ」


クルデーリスが腕を組む。


「互いに加減を学べる」


「許可する」


「よっしゃ!」


ファウラが拳を握った。


「燃えてきた!」


「もう燃えてるじゃないですか」


「上手いこと言うな!」


「言ってません!」


メディクスも苦笑する。


「怪我だけはしないようにね」


「大丈夫です!」


「多分!」


「多分!?」



訓練場中央。


「ルールは簡単!」


ファウラが木剣を肩に担ぐ。


「降参したら終わり!」


「危なくなったら先生たちが止める!」


「それでいいですか?」


「いいぞ」


クルデーリスが頷く。


「では始め」


「うおおおお!」


開始と同時に、ファウラが突っ込んできた。


「速っ!」


ガキン!


木剣と炎を纏った腕がぶつかる。


「やるじゃん!」


「そっちこそ!」


熱い。

速い。

そして何より。


「楽しい!」


ファウラが笑う。


「は?」


「戦うの好きなんだよ!」


「変わってますね!」


「よく言われる!」


再び剣が振るわれる。

アギトは後ろへ飛んだ。


「『フレイムショット』!」


三つの火球。


「うわっ!」


ドン!


ドン!


ドン!


土煙が舞う。


「避けるなよ!」


「当たったら熱いじゃないですか!」


「そりゃ火だし!」


「当たり前ですよ!」


周囲から笑い声。


「ファウラ君、楽しそうだね」


メディクスが微笑む。


「ええ」


グレイも頷く。


「友達ができたみたいです」


「……そうだな」


クルデーリスの目が僅かに細まる。


「まだまだ!」


ファウラの足元から火花が散る。


「『フレイムステップ』!」


一気に距離を詰める。


「!」


速い。

さっきより。


「はぁ!」


剣が迫る。


(間に合わない!)


反射的に。

魔力が溢れた。

紫色。


「っ!」


ボォッ!!


「!?」


ファウラが咄嗟に飛び退く。

アギトの周囲を紫炎が包む。


「……」


静寂。


「あ」


アギトの顔が青ざめる。


「ご、ごめんなさい!」


「大丈夫ですか!?」


慌てて駆け寄ろうとする。


しかし。


「ははっ」


「?」


ファウラが笑っていた。


「やっぱすげぇな!」


「え?」


「綺麗だ!」


「……怖くないんですか?」


「ん?」


ファウラは不思議そうな顔をした。


「なんで?」


「いや……」


「みんな気味悪がるかなって」


「誰が?」


「え?」


「少なくとも俺は好きだぜ!」


太陽みたいな笑顔。


「強くて綺麗で」


「かっけぇじゃん!」


「……」


「だから!」


木剣を肩に担ぐ。


「次は負けねぇ!」


「え?」


「またやろうぜ!」


アギトは呆然としていた。

そして。

少しだけ。

本当に少しだけ。

胸の奥のざらつきが薄れた気がした。


「……はい」


「次は負けません」


「おう!」


「それでこそだ!」


二人は笑った。

その光景を。

遠く塔の上から。

赤い瞳の獣人が見ていた。


「いい顔するじゃねぇか」


風が吹く。


「お前もそうやって笑ってたよな」


五百年前の親友を思い出しながら。

グリフォンは静かに目を閉じた。

そして。

誰にも聞こえないほど小さな声で。


「……長生きしろよ」


そう呟いた。

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