第31話
「減点百点」
「マイナスなんですか!?」
訓練場に笑い声が広がる。
クルデーリスは無表情のまま頷いた。
「当然だ」
「死人が出なかったから百点」
「暴発したから減点二百点」
「理不尽すぎません!?」
再び笑いが起きる。
「ふっ」
「?」
「今笑いました?」
「気のせいだ」
絶対笑った。
すると。
「はははは!!」
大きな笑い声。
「最高だなお前!」
振り向くと。
そこには赤毛の少年がいた。
少し焼けた肌。
活発そうな顔。
そして腰には木剣。
「いきなり爆発させる奴初めて見た!」
「えっと……」
「俺はファウラ!」
少年は勢いよく手を差し出した。
「よろしくな!」
「あ、アギトです」
「知ってる!」
「有名人だし!」
「え?」
「入学式で追放された奴!」
「ぐはっ!」
「ごめん!」
「悪気はないんだ!」
慌てるファウラ。
その様子に周囲が苦笑する。
「いや、事実ですし」
「そうか?」
「俺ならムカつく!」
「追放した奴ぶん殴る!」
「落ち着いてください」
「ははっ!」
豪快に笑う。
その笑顔には裏表がない。
「しかしすげぇな!」
「紫の炎!」
「俺、初めて見た!」
「怖くないんですか?」
「ん?」
ファウラはきょとんとした。
「なんで?」
「いや……」
「危険だし」
「暴発するし」
「変だし」
「は?」
ファウラは眉をひそめる。
「変なのはお前の炎じゃなくて」
「制御できないことだろ?」
「え?」
「なら練習すりゃいい!」
「それだけ!」
あまりにも単純な答え。
「みんな最初は失敗する!」
「俺だってする!」
「だから気にすんな!」
「……」
「お前の炎が怖いんじゃない!」
「お前が諦める方が怖い!」
真っ直ぐな瞳。
眩しいくらいに。
真っ直ぐだった。
「……変わってますね」
「よく言われる!」
「褒め言葉だ!」
「違いますよ」
また笑い声。
「アギト!」
「はい?」
「今度模擬戦やろうぜ!」
「模擬戦?」
「俺、火属性!」
「お前も火属性!」
「負けねぇからな!」
「いや、業火属性なんですけど」
「似たようなもんだ!」
「雑!」
「ははは!」
隣で見ていたグレイも笑っていた。
「賑やかな子だねぇ」
「ですね」
気付けば。
さっきまで感じていた不安は少しだけ薄れていた。
その様子を見ていたクルデーリスは、僅かに目を細める。
「……そうか」
小さく呟く。
「友はいたか」
誰にも聞こえない声だった。
⸻
そして。
塔の上。
赤い瞳の獣人が笑う。
「へぇ」
「いい奴じゃねぇか」
風が吹く。
「お前みてぇだな」
五百年前の親友を思い出しながら。
グリフォンは少しだけ。
懐かしそうに笑った。




