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魔法異端見聞録  作者: トミー
第1章学園篇前半
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第28話

「グリフォン……!」


アウラの声は震えていた。

店内にいた客たちが、一斉にこちらを見る。

しかし、当のグリフォンは気にした様子もなく笑っていた。


「そんな顔すんなよ」


「せっかくの休日だろ?」


「……」


「お?」


ようやくグリフォンの視線がアギトに向く。


赤い瞳が細くなる。


「お前がアギトか」


「!」


初対面。

のはずだった。

なのに。

まるで昔から知っている相手を見るような目。


「えっと……」


「初めまして?」


「ははっ」


「律儀だな」


グリフォンは豪快に笑う。


「俺はグリフォン。しがない旅人だ」


(旅人……?)


どこか違和感を覚える。

だが、それ以上に。


(なんか、見てると安心する……?)


不思議な感覚だった。

初対面のはずなのに。

懐かしい。

そんな感覚。


「アギト君!」


アウラがアギトの腕を掴む。


「行こう!」


「え?」


「今すぐ!」


「え、でも」


「いいから!」


半ば強引に引っ張られる。

その様子を見て、グリフォンは困ったように笑った。


「嫌われてんなぁ」


「当たり前だよ!」


アウラが振り返る。


「アンタなんか……!」


「……」


「……」


グリフォンは何も言わなかった。

ただ。

少し寂しそうに笑っただけだった。


「悪かった」


「!」


「俺が生きてて」


「悪かったな」


その言葉に。

アウラの瞳が揺れる。

だが。


「知らない!」


「もう知らない!」


「勝手にして!」


アウラはアギトを連れて店を飛び出した。

残されたグリフォン。


「はぁ……」


「相変わらずだな」


そして。

店員の女性が恐る恐る近づく。


「あの……助けていただいてありがとうございました」


「気にすんな」


「子供は好きだからな」


女の子の頭を優しく撫でる。


「怪我なくて良かった」


「おじちゃんありがとう!」


「おじちゃんじゃねぇ」


「お兄さんだ」


「えー?」


店内から小さな笑い声が漏れる。

グリフォンもつられて笑った。


「まったく」


「平和ってのはいいもんだ」


そう呟きながら。

窓の外を見た。

遠ざかっていく二人。


「……なぁ」


「見てるか?」


誰に向けた言葉なのか。


「アイツ」


「お前によく似てるぞ」


赤い瞳の奥に。

一瞬だけ。

懐かしさが宿る。


「だから」


「今度こそ」


「答えを出そうぜ」


風が吹く。

次の瞬間。

グリフォンの姿は消えていた。


「はぁ……はぁ……」


路地裏。

アウラは息を切らしていた。


「先輩?」


「大丈夫ですか?」


「……ごめん」


「ちょっと取り乱した」


「知り合いなんですよね?」


「……」


アウラは答えない。

答えられない。

五百年前。

一緒に戦った仲間。

そして。

幼馴染を失った時代。

そんな話。

今のアギトにできるわけがない。


「嫌いなんですか?」


「……分かんない」


「え?」


「嫌いかどうか」


「分かんなくなっちゃった」


その声は。

少し悲しそうだった。


「昔はね」


「すごく嫌いだった」


「でも」


「今は……」


アウラは空を見上げる。


「よく分かんないや」


「……」


アギトは何も言わなかった。

ただ。

あの獣人の笑顔を思い出していた。

優しい笑顔。

寂しそうな笑顔。

そして。

初めて会ったはずなのに。

どうしてか。

胸の奥が妙にざわついていた。



その頃。

魔王城。

執務室。


「魔王様」


「グリフォンが街に現れました」


クルデーリスの報告を聞き。

オブスキュリタスは静かに目を閉じた。


「……とうとう動き始めたか」


「殺しますか」


「いや」


魔王は首を横に振る。


「まだだ」


「奴は」


「本気ではない」


「?」


「本当に本気なら」


「こんな平和な再会などせん」


オブスキュリタスは窓の外を見る。


「グリフォン」


「お主は何を見ている」


「何を望んでいる」


そして。

誰にも聞こえない声で呟いた。


「今度こそ」


「救えるのか……?」

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