魔女は笑む。
「久しぶりの故郷ね、変わらないわ」美しい海、美しい湖、美しい街並みその傍らで美しく笑む彼女を目の当たりにした少女は目を輝かせた。「……わぁ、綺麗……」少女にとって、すべてが絵画のように美しい。「こんな景色は初めて!…本当に綺麗」本当は心優しかった少女は本来の姿で微笑む。「あら、そう?」「はい!」よかった、と呟いたラムリートは歩を進めた。その方があなたらしくていいわ、あの固めた美貌よりとっても。
「あのぉ、あの大きな建物って……王宮とかですか?」「あぁ、そうよ。アレの家ね」アレとは、あの白の男性だ。
「………どうして、逃げてるんですか?」「追いかけてくるからよ」「なら、なんで追いかけてくるんですか?」
心底嫌そうな顔をした後彼女はしぶしぶ語り出した。「アレ、私の婚約者なの。魔力が申し分ないことで選ばれたうちの一人がこの私」婚約者とは、いずれ結婚するそして、彼は王子で王となる人だとも言っていた…なら「王妃になるかもしれないんですね!」「単なる候補止まりで良かったの、私はね。結婚なんてする気もなかったし、ましてや王妃になるかもとか……嫌ね」
どうして、そこまで嫌がるのか。全くもって見当もつかず唸る。「縛られるのは嫌いなの、こうやってアナタを救ってそばにいる。サラ様に会うことも、なにも出来なくなるのはね」「えへへ」笑顔で言われたら嬉しくて照れる。そばにいることが出来なくなるのは、私も嫌だ。今私を知るのは、彼女ラムさんしかいないのだから。
「なによりも、………アレはド変態なの」ラムリートの瞳はどこか宙を見ているが視点が定まっておらず絶望の淵のような目だった。「…ゴメンナサイ」聞かなければ良かったと後悔するのだった。
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「ふぅ、ラムさん終わりましたぁ!黯くんも手伝って貰っちゃってゴメンね!」「いいの、黯は働きものだから。…お疲れ様、ティータイムにしましょう?」ラムリートが魔法でだしたテーブルにイス。そこに腰掛けて、ラムリートが淹れた紅茶を味わう。最近ではこれが当たり前になってきた。
悪魔退治の修行をして、実践。ほぼ役にはたっていないが大分体が思うように動くようになった。
「……あれ、なにみてるんですか?」ラムリートが覗き込む水晶に気づき訊ねる。「サラ様の様子を少しね」そういわれ、すぐに私もいいですか!と発言。許可を貰って、覗き込む……「わぁ、幸せそう…良かった。」
そう、私が心から魅了できなかった彼と寄り添う姿は幸せに満ち溢れていた。
「やっぱり、そういうことなんですね」
「葉山透は、サラ様のお相手として生まれた運命。」「……運命」
そう、この世界は乙女ゲームの世界なんかじゃなくて、葉山透と宮園サラの為の世界。
…………幸せになって、サラ様?
くすりと、魔女は笑む。
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