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魔法パンク:平穏な学園生活を送りたいだけなのに、なぜか問題児美少女たちとパーティーを組まされました  作者: 音夢スリプ
第一章 虫ケラと一緒に、どうやって冒険者パーティをうまくやれるの?
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第19話 治療魔法、使えません

分かっている。

見た目にはかなり危ない状況だ。


だが、それでも俺には、まだ楽観できる理由があった。


ヘルガはあまり賢くない。

しかし牧師としての魔力測定の成績は、非常に優秀だった。

それどころか、俺たちの中で一番高い。

つまり、彼女こそが俺たちの隠し札なのだ。


彼女が治療魔法さえ使えれば、すべてはよくなる。

そう、俺は期待していた。


では、俺たち全員から期待を寄せられているヘルガは、今いったい何をしているのか。


彼女は完全にてんてこ舞いで、両手を所在なさげに胸の前で握りしめていた。

魔法を詠唱する気配など、欠片もない。


「「「宇の小隊の牧師、今日はどうやら調子が悪いようですね!」」」


「「「パーティーのメンバーが次々に負傷しているにもかかわらず、治療魔法を使う気配がまったくありません。まさか、何か大技を準備しているのでしょうか?」」」


「私がこいつを引き受けるから、あんたは早く三人を治療して!」

ミュイレンは黒沢渉を押し返し、氷越しにヘルガへ叫んだ。


「……」

ヘルガは申し訳なさそうな顔で、何かを小さくつぶやいた。


「どうしたの?」

ミュイレンには、ヘルガの言葉が聞き取れなかった。


「……使えません」


ヘルガは少しだけ声を大きくした。

だが、最後にはやはり声が小さくなっていく。


「何が使えないの?」

ミュイレンは一瞬、理解できなかった。


「彼女は、治療魔法が使えないと言っておる」


アパシャがヘルガの代わりに大声で伝えた。

全身を血に染まった氷の中に閉じ込められたままだというのに、声だけはやけに力強い。


「はあ!?」


ミュイレンは、自分の耳を疑った。

アパシャがヘルガの訓練相手だったことを思い出し、どうにか怒りを押し殺して彼女に尋ねる。


「このこと、知ってたの?」


アパシャは首を横に振った。

「確かに、わしに治療魔法を使ったことはなかった」

「じゃが、わしはあまり怪我をせん」


「俺、治療魔法使えるぜ。教えてやろうか?」

横で聞いていた黒沢渉も笑いながら、ミュイレンへ攻撃を仕掛けつつ茶々を入れた。


「黙って! こっちは今、めちゃくちゃイラついてるの!」


ミュイレンはその怒りを、目の前の相手へぶつけるしかなかった。


彼女は両手で杖を握り、黒沢渉のダガーを受け流す。

続けて杖尻を握り、勢いよく横薙ぎに振り抜いた。

黒沢渉は避けきれず、まともに打たれて吹き飛ばされる。


ミュイレンはその隙に杖を掲げた。

「ファイアボール」


その短い詠唱だけで、二つ、三つの火球が黒沢渉へ飛んでいった。

黒沢渉は左右に二歩跳ぶだけで、それを軽々とかわした。


「お前の棍術は確かに強い」

「だが魔法使いとしては、その程度の魔法じゃ人を説教できないな」


黒沢渉は宙返りするように身を翻し、逆手でミュイレンへ斬り下ろした。

ミュイレンは再び杖を掲げて受け止めようとする。


だが、それこそが黒沢渉の狙いだった。

彼は身を横へずらして肘を突き上げ、逆手に持ったダガーを垂直に下ろす。


そして、勢いよく押し込んだ。


「戦技·落槌斬!」


ダガーが鋭く振り下ろされる。

ミュイレンの杖は、中央から真っ二つに切断された。


二本の短い棒としてなら、まだ黒沢渉と渡り合うことはできるだろう。

だが、杖の魔法回路は破壊された。

つまり、彼女はもう大型魔法を使えない。


黒沢渉がミュイレンを出し抜いている頃、俺は爆笑が止まらないタカゴウの前で、どうにか立ち上がろうとしていた。


「ははははは……無理だ、腹、腹が痛い……!」

「まさか、まさかだな」

「役立たずパーティーは、牧師までとびきりの役立たずかよ!ははははは!」


彼は笑いすぎて、ほとんど腰を曲げていた。

これが戦闘中でなければ、タカゴウはたぶん地面を転げ回っていたはずだ。


反論できない。


俺以外に残っているのは、どうやら――


魔法もまともに放てない役立たず魔法使い。

治療できない役立たず牧師。

後衛を守りたがらない役立たず前衛。

そして今、氷の中でさぼっている役立たず後衛。


役立たずパーティー。


どうやら、不本意ながらかなり的確な評価らしい。


タカゴウの攻撃を受けたせいで、もともと耳鳴りがしていた。

そこへ背後の会話が聞こえてきて、耳の奥のざわめきはさらにひどくなった。


だが今、俺が一番したいことは、ヘルガを罵ることではない。

ミュイレンにインタビューして、脳が停止する感覚はあったかと聞いてみることだ。


俺は親切に警告しておいたのだから。


とはいえ、文句を言うのはすべて終わってからだ。


「やるのか、それともまだ無駄話を続けるのか?」

今、俺がまだ立ち上がれるのなら。

倒れている理由はない。


「「「なんと、宇の小隊の隊長が立ち上がりました!」」」

「「「どうやら、まだ最後の抵抗を見せるつもりのようです!」」」


司会者の声は、感動で震えていた。


「「「向かうところ敵なしの英雄が全員の憧れであることは、もちろん間違いありません!」」」

「「「しかし、最後まで諦めない小さな存在こそ、最高の物語なのです!」」」


タカゴウは、俺の言葉がよほど気に入らなかったらしい。


「ふん。負け犬なら、負け犬らしくしていろ」

「体面を保つ気がないなら、もっと惨めに死なせてやる!」


悪いな。

俺は死ぬつもりも、負けるつもりもない。


「ヘルガ!」


ヘルガは俺に呼ばれた瞬間、びくりと肩を跳ねさせた。


「お前が治療魔法を使えない件は、帰ってから話す」

「今は、自分の得意なことだけやれ!」


ヘルガはてっきり俺に怒鳴られると思っていたらしい。

俺の言葉を聞いて、最初はぽかんとした。

それから、力強くうなずく。


「はい!」


タン、タン、タン――。

ヘルガは、牧師としての面倒な作法にこだわるのをやめた。

牧師のローブと聖約を、そのまま脇へ放り出す。

足元に、祝福魔法の魔法陣がいくつも瞬いた。


「「「牧師がウォーミングアップを始めました!」」」


司会者は、どこで覚えたのか分からない流行語を口にした。


「「「宇の小隊の牧師、なんと牧師のローブと聖約をその場に投げ捨てました!」」」

「「「これは何という冒涜でしょうか!」」」


「「「仲間が頼りにならないと見るや、宇の小隊の牧師は自分にバフをかけ、まさかの自ら参戦!」」」

「「「これこそが、彼女がずっと溜めていた大技なのでしょうか!」」」


魔法陣の点滅が速すぎて、俺にも彼女が自分に何重の祝福をかけたのか分からなかった。


ヘルガは希珀へ向かって叫ぶ。


「希珀さん、助けに行きます!」

そう言って、彼女はなんと辰巳へ向かって走り出した。


「来ないで!」

希珀は慌ててヘルガへ叫んだ。


だが、すでに遅い。


地上の茨花だけではない。

地下にも、見つけにくい罠が仕込まれていた。

ヘルガは焦ったまま走り込み、たった一歩で地下に仕込まれた枝を反応させてしまった。

次の瞬間、彼女の周囲と近くの藤が一斉に地面から飛び出し、ヘルガをぐるぐる巻きに縛り上げた。


「あっ、離してください!」

藤に縛られたヘルガは、行動不能になった。


「「「宇の小隊の牧師、倒れました!」」」


は?

俺の指示のどこに曖昧なところがあった?

俺が言ったのは、“早く得意な祝福魔法を使え”という意味ではなかったのか?


いったいどんな頭をしていたら、あれを――

“自分で突っ込め”

と解釈できるんだ?


……はあ。

俺はその怒りを、無理やり飲み込んだ。

仕事に感情を持ち込んではいけない。


今の俺が戦い続ける唯一の理由は、この測定が勝敗だけを目的にしたものではないということだ。

俺はしっかり動いて、審査する教授陣の印象点を少しでも上げなければならない。


もっとも、十分前にさっさと降参していた方が、今より点数が高かった可能性すらある。


「お前らの茶番はもう見飽きた」

タカゴウは両手の盾を振り回しながら、俺へ攻め込んできた。

「おとなしく死ね!」


その攻撃は大振りだった。

まともに食らえば、そのまま意識を失ってもおかしくない。


彼が再び左手の盾を俺の頭へ振り下ろす。

俺は素早くしゃがみ、タイミングを見計らって胸甲を狙った。


だが、残ったのは浅い擦り傷だけ。

腹を立てたタカゴウは、今度はそのまま蹴りを放ってきた。

俺は腕を上げて受け止め、勢いを利用して後ろへ下がる。


……ん?

俺は違和感を覚えた。


これまでなら、俺が反撃するたび、シルヴァナの藤がすぐに戦闘の隙間を埋めていたはずだ。

だが、今回はない。


俺は視線の端でシルヴァナを見た。

彼女は両手で地面に突き刺した杖を必死に支え、絶えず魔力を注ぎ込んでいる。

杖の向こう側につながっているのは、ヘルガを包み込む枝だ。

ヘルガの周囲では、藤が次々に地面から伸び、一重、また一重と彼女に巻きついていく。

それでも、今にも内側から引き千切られそうな気配があった。


「この子、力が強すぎます! ギアンダ、手伝ってください!」

シルヴァナが歯を食いしばって叫ぶ。


「分かった! 凍らせる!」

ギアンダの杖の先から冷気が噴き出し、ヘルガの体へ浴びせられた。


白い霜が彼女の体を覆っていく。

おそらく、少しすればヘルガは丸ごと凍りつくだろう。


だが、この作業には時間がかかる。

そして今、二人はほかの魔法を使えない。

ヘルガは、なぜか奇妙な方法で、突然相手二人を足止めしていた。


なら、俺は――。

俺は、まだミュイレンと戦っている黒沢渉をちらりと見た。

一つ、思いついた。


「戦技·四連斬!」


俺はタカゴウへ猛然と斬りかかった。

シルヴァナの援護がなくなった今、タカゴウはこの速い連撃を一人で受けることになる。


さすがに少し戸惑い、二歩下がった。

その隙に、俺は手元のダガーをシルヴァナとギアンダへ向かって投げる。

タカゴウは、俺の飛刀がまた加速すると見て、慌てて両腕を上げ、防御に入った。


俺はその防御の隙を利用し、体を反転させる。

そして、黒沢渉へ向かって走った。


まさか、わざと飛刀を投げたのか?

シルヴァナとギアンダが援護できないこの瞬間を狙い、時間差を作って、先にミュイレンと二人がかりで黒沢渉を潰すつもりなのか?


タカゴウの顔に驚きが浮かぶ。


だが、それは長く続かなかった。

すぐに彼は、呆れたように笑った。


そんな分かりやすい小細工を、俺が見逃すと思ったのか?


まあ。

役立たずにしては、悪くない読みだ。


「戦技·不屈城壁!」


瞬間、幅十メートル近い魔力の壁が地面から立ち上がった。

数秒の間、あらゆる攻撃を阻む壁だ。

二本のダガーは、一瞬で弾き飛ばされた。


「戦技·牡羊踏破!」


タカゴウは両手の盾を掲げた。

同時に、大量の魔力を脚へ流し込む。


「ドン!」


重い踏み込みの音とともに、タカゴウが突進を始めた。

彼を包み込む魔力の外側に、牡羊のような影が浮かび上がる。

今のタカゴウは、速度が極めて速いだけではない。

進路上のすべてを粉砕する。


ほんの一瞬で、タカゴウは俺に追いついた。

背後からエルフ馬が突っ込んでくるような圧を感じる。


「死ね!」


タカゴウが俺へ迫る。

このままでは、四肢も胴もまとめて砕かれる。


俺たちが接触する、その寸前――。

俺は横へ転がって突進をかわした。

そして地面すれすれを滑るように、彼の背後――シルヴァナとギアンダのいる方向へ走る。


彼らのパーティーの本当の要は、エルフのシルヴァナだ。

彼女を落とせば、戦場制御も、治療も、分断も失われる。

そうなれば、残りを一人ずつ潰すのは難しくない。


「逃げ回るだけのネズミか!」


タカゴウは俺が往復するのを見て、慌てて足を止め、反対方向へ突進しようとした。

だが、次の瞬間、タカゴウの膝ががくりと折れた。


すれ違いざま。

俺はすでに、彼のふくらはぎへ二度斬りつけていた。

脚を傷つけられたせいで、タカゴウはすぐには突進戦技を使えない。


「シルヴァナ!」


シルヴァナは即座に意図を察した。

杖が光り、治療の枝が三方向からタカゴウへ飛んでいく。

二本は地下。

一本は空中で、壁を伝うように走る。


そんな機会を、俺が与えるはずがない。


「ドス、ドスッ!」

二度の斬撃で、地下の二本の枝を地面に縫い止める。


続けて、俺は体を翻し、その動きに乗せて袖口から滑り出たもう一本のダガーを投げた。

最後の枝も、壁に縫い止められる。


次の瞬間には、後ろ腰からさらに二本のダガーを抜いていた。

一連の動きは流れるようにつながり、俺の速度をほんの少しも鈍らせない。


「この程度の傷で!」

俺に誘導されたと気づいても、タカゴウは脚の傷など無視して、強引に力を溜めようとした。


「アパシャ、寝てる暇はない。リーダーを止めろ!」


「まったく、人使いが荒いのう、隊長!」


「バキィッ!」

アパシャを閉じ込めていた氷が砕け、巨大な龍爪がタカゴウへ振り下ろされた。


純粋な力では、アパシャは俺とは比べものにならないほど上だ。

タカゴウは両手の盾を上げ、全力で防御した。

それでもなお、彼の体はそのまま数メートル後方へ押し飛ばされた。


蒼藍魔法アズーロ・ジェーロ·氷壁!」


タカゴウが短時間では抜け出せないと見て、ギアンダは急いで氷の壁を築き、俺の進路を塞いだ。

俺は跳んだ。


そして氷壁に片足を食い込ませ、そのまま足場にしてもう一度跳ぶ。

二回の動きで、氷壁の頂上へ上がった。


「そこです!」


俺が氷壁の上に顔を出した時には、ギアンダはすでに杖を構えて待ち構えていた。

俺が顔を出した瞬間、氷矢で狙撃するつもりだったのだろう。


甘い。


俺は迅雷の勢いでダガーを投げる。

彼女の魔法は放たれる前に砕け散った。


「うっ」

砕けた氷片が飛び散り、ギアンダは慌てて腕で顔をかばう。

俺は一瞬も足を止めず、そのままシルヴァナへ向かって突っ込んだ。


森林魔法レスナヤ·茨花の牢!」


シルヴァナを囲むように地面を這っていた藤が、次々と花を咲かせる。

シルヴァナが魔力を注ぎ込むと、花々が一斉に弾けた。

そこから数本の枝が伸び、彼女を守る檻を作り上げる。


「ガン――!」


俺は一撃で斬り下ろしてみた。

だが、枝の手応えはほとんど鋼鉄だった。


地面からさらに多くの枝が伸び、俺を押し返す。

俺は一歩下がり、手にしたダガーを投げた。

枝の隙間へ直接ねじ込むつもりだった。


蒼藍魔法アズーロ・ジェーロ·アイスブロック!」


ギアンダは、シルヴァナを包む枝の外側へ、さらに透明な氷の障壁を立てた。

これで、シルヴァナは完全に守られた。


おそらく彼らもよく分かっているのだろう。

シルヴァナの重要性は、パーティーのほかの誰よりも高い。


だが、俺はそれでも構わない。

標的を変え、今度はギアンダへ向かう。


蒼藍魔法アズーロ・ジェーロ·流氷弾!」

防御用の魔法を失ったギアンダは、氷の弾丸を撃ち続けるしかない。

シルヴァナの枝と合わせ、どうにか時間を稼ごうとしている。


だが。

もう、誰が彼女たちを助けに来られるというのか。


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