第二十三話 テストの点は
全校挙げての定期テストがあった。
僕もそれなりに焦って勉強して、勉強したなりの点数をとった。
成績が貼り出されたりすることなどあるわけもないが、聞いた話によると、浅川はトップクラスの成績であるらしい。
情報の出どころはギャル先生である。それとなく漏洩してきた。悪い大人である。よくクビにならないものだ。ただ、最終的に僕が漏らさなければ漏洩にならない。ギリギリ踏みとどまれていると言える。ゆえに、ギャル先生は僕に感謝したほうがいい。
テスト前とテスト期間中は、おさんぽなんてしてる場合じゃないので、活動はしなかった。
それが明けて、テストが返ってきた日、浅川が先に部屋にいて、僕が隣に座ったあと、丘野下きらりが勢いよく扉を開けた。
「あゆむ先輩! 国語、何点でしたー?」
「なぜ国語限定なんだ」
と言ってはみたが、それが最も高い点数がとれた教科なんだろうな。
僕は、この教科に関しては、ずっと点数がよかった。今回もいい。浅川にも負けてないんじゃないかと思える点数だ。
実際の会話はうまく読み取れないことも多いけれど、文章だったらじっくり考える時間があって、読解力に自信さえある。日々のまちあるき活動がいい影響を及ぼしているのかもしれないな。
というわけで、僕の点数は、
「95点」
きらりちゃんは目を輝かせた。
「すっご! さすがあゆむ先輩!」
「まあね」
僕はまんざらでもなかった。褒められるのは気持ちのいいものだ。
「きらりちゃんは?」
「あたしは……じゃん、85点!」
答案を見せてきた。一学年下なので、出された問題は違う。答案からだけでは難易度はわからなかった。でも、じゅうぶん優等生だ。他の点数もこのレベルだったら、僕なんか大敗を喫している。
だから、僕は素直に言うのだ。
「すごいじゃないか」
「でもでも、先輩と同じ点数がよかったなー」
「学年が違うけど意味あるのかな。同じといっても、数字が同じだけのことだし」
僕が言ったとき、僕の隣でペン先が走るかすかな音がした。浅川が、膝に置いた紙の隅っこに、何かを書き加えたようだった。
「めぐる先輩は?」
きらりちゃんの問いに、浅川めぐるは答案を一瞬だけ見せた。
マルだらけの答案は、一見すると85点に見えた。
僕は、しかし、見逃さなかった。その8の文字の歪さを。
長い縦棒の右下部分に曲線をひとつ足して、点数を改変したのだ。
浅川のテストは、もとは95点だ。つまり、僕と同じだったのを、きらりちゃんと同じになるように書き換えたんだ。
「わー、先輩とおそろいだ!」
無邪気に笑う後輩をみて、浅川は微笑んでいた。
僕がそれを観察していると、「何みてんの」と横目で言って、きらりちゃんに視線を戻した。
後輩を一人にしない。
そんな浅川の行動に、僕は意外なやさしさをみた。




