第二十二話 ギャル先生と不自然な画像(後)
ギャル先生が指摘したのは、画像の構図だった。
「不自然に右に寄ってるでしょ? ベンチも途中で切れてる。切り取られたんじゃないかな~」
これに対し、すぐに浅川が僕の肩を掴んだ。
「大道くん。あなたが撮った写真でしょ? 何かおぼえてないの?」
「いや、どうだったかな」
正直、おぼえていない。二人の自然なツーショット画像は、山ほど撮っていて、たしかに不要な部分を切り取って保存することもあるけれど、こんなに露骨にバランスの悪い切り取り方はしないはずだ。
「大道くんは、気付くの遅いタイプだもんね~」
ギャル先生の言う通り、気付くのは遅いとは思うのだけれど、この画像に関してはおぼえがない。僕はやってない。
じゃあ、この画像は何だ。
きらりちゃんは、元気な声はどこへやら、わずかに震えた小さな声で言う。
「なにか、映り込んではいけないものが映っちゃったんでしょうか」
「何かって?」と僕。
「幽霊みたいな」ときらりちゃん。
「ちょっと、やめて」
そう言った浅川の手が、僕の肩で震えているのがわかった。
こわいんだろうか。幽霊。
実際に何かがいたら僕もこわがるとは思うけど、ただ構図に違和感があるだけだ。
やがてギャル先生は立ち上がり、僕の手を掴んで部屋の隅に引っ張っていった。
されるがまま、僕は移動し、そして上腕を胸の谷間に引き寄せられ、耳元に先生の唇が迫った。吐息とともに耳打ちされた。
「実はね、あそこに映ってたの、先生だよ。きわどい服着てたんだ~」
明らかな嘘だ。だってギャル先生は、おさんぽに参加してないじゃないか。
だけど、僕は想像してしまった。
ギャル先生が、マジできわどい服を着て、なんなら魅惑的な表情で僕を誘惑する映像を。
甘い匂いを肌や目や耳や鼻から脳に注入されて、きっと、耳や頬を赤くしていたと思う。
「じゃね」
と、先生はかき回すだけかき回して、猫みたいなしなやかな歩きで颯爽と去っていったのだが、僕はしばらくギャル先生の余韻に満たされ夢見心地だった。カチカチと激しく鳴り響くマウスのクリック音に現実に戻されるまでは。
そのとき僕が見たのは、浅川ときらりちゃんが、同好会のノートパソコンをたどたどしい操作でいじりまわし、全部の画像をチェックしようとしている光景だった。
止めるために動こうとしたら、浅川から「こっちくんな」と威嚇された。
僕の『キャンプ場』と名付けた秘密フォルダが見つからないことを祈るばかりだ。浅川の映りこんだ画像を一か所に集めていることが知られたら、あまりいい印象は与えないからな。
「これでよし」
十数分後、浅川ときらりちゃんがパソコンから離れたとき、僕はさまざまなデータの無事を確認するついでに、浅川めぐる画像を集めたフォルダを開いて眺めようとした。
「えっ」
思わず低い声が出た。
すべて、きらりちゃんの画像に変わっていた。なんなら、僕が撮れるはずのないプライベートな画像まである。量としては増えているくらいだ。いろんなきらりちゃんが見られて、とてもかわいい写真ばかりだ。
ただし、僕が集めた浅川は、パソコンのどこからも消えていた。
ひどい。別でフォルダを作るならいいけど、上書きは取り返しがつかない。やっていいこととダメなことがあるだろうに。




