第二十一話 ギャル先生と不自然な画像(前)
授業期間が始まった。
放課後、夏休み明け最初の同好会活動をするために部室棟の一室に行くと、珍しいことにギャル先生がいた。
「半期ごとの活動記録を出さなきゃだから、備品のパソコンの中身をみして」
と言ってきたのだった。
思い返してみると、浅川たちが入ってくる前、去年も同じ時期に、同じような場面があった気がする。
ギャル先生は、さっきまで僕が座っていた比較的新しいキャスターつきの椅子をどかし、最も古いパイプ椅子に浅く腰かけて、ノートパソコンを引き寄せ、操作しはじめた。
しばらくすると、浅川ときらりちゃんが一緒に入って来た。
浅川は、なんで先生がいるの、みたいな顔をしていたけど、この同好会の顧問なんだから、別にいたっておかしくはないだろうに。
きらりちゃんは、「先生こんにちは、最近よく来ますね」と挨拶を交わして、ギャル先生ともうまくやっている。
浅川はといえば、あいさつ代わりに、「先生、パソコンできるんだ」などと言った。
僕は何とも思わなかったのだが、ギャル先生は、
「浅川ちゃん、それどっちの意味?」
などと言った。
どっちって何だ。
ひょっとして、高度な会話が展開されようとしているのだろうか。何と何を比べているのだろう。
浅川は無言を返したのだが、ギャル先生が、自分に向けられた言葉をダブルミーニング攻撃として解説した。
「だからぁ、パソコンできるくらい頭よかったんだ、なのか、パソコンできるくらい若かったんだ、なのか、どっち~?」
険悪な雰囲気になりかけてしまっている。僕は、どうしようかと心の中であたふたしていた。浅川と先生は、なんでいつもこうなんだ。
いやな感じを消してくれたのは、きらりちゃんだった。
「あたしもできません! 最近の若い子って、スマホはできてもパソコン触ったことない人いるんですよね。みたところギャル先生も操作に慣れてませんし、めぐる先輩もそうですから、親近感ですね!」
それでギャル先生は、浅川と向き合うのをやめ、きらりちゃんに言葉を返した。
「そーなの。大変なのよ、先生って立場だと。パソコンも使えるようにならなくちゃいけなくてぇ」
そして、ギャル先生がマウスを動かして、何度かクリックしたとき、「ん?」と喉を鳴らして、画面をのぞき込んだ。
「大道くん、これみて」
画面が見える場所に僕らは回り込んだ。四人でのぞきこむ形になった。
ギャル先生は、髪の匂いも魅力的だった。とてもフローラルだ。
いや別に女性の匂いを嗅ぎまわってるわけではないのだが、香ってくるのだから仕方ないだろう。というか、今は髪の話をすべき場面じゃない。画面に注目するのだ。
僕はギャル先生に示された画像をみて、心からの感想を述べる。
「かわいいです。ふたりとも」
そこには、二人の女の子が映っていた。今年のおさんぽ部の活動画像なのだから、当たり前だ。
浅川は、なるほどねと頷いて、続けて言った。
「私は映りがよすぎね。きらりは実物のほうがもっとかわいい」
そんなことないだろうと思ったのだが、少し考えて気付く。これは、きらりちゃんを持ち上げる発言であり、僕に対し、「きらりちゃんを褒めろ」と指示を飛ばしてきているのだ。
僕は、きらりちゃんと画像を見比べた。
「たしかに、浅川はそうでもないけど、きらりちゃんは本物が圧倒的にかわいい」
しかし、浅川は「は?」と言った。この人が何を考えているんだかさっぱりわからない。
ギャル先生は、画面を長い爪でトントンと叩いて、
「ちがうちがう。二人とも超カワイイけど、そこじゃないよ~。ここ」
「ここってどこですか?」
ギャル先生が叩いているのは、何もないところ。画像の端っこだった。
「ここさ~、誰かいない?」
僕と浅川は、「え?」と声をそろえた。
少し遅れて、怯えたような声で、きらりちゃんが言うのだ。
「どういう、ことですか?」




