第十六話 遥か頭上のバレーボール(2)
翌日。数駅離れた駅前で、僕は浅川と待ち合わせをしていた。
まちあるき同好会、通称おさんぽ部、突発夏休みイベントである。
浅川は、きらりちゃんも誘うと言っていたのだが、待ち合わせ場所に来たのは、浅川めぐるだけだった。輝いて見えた。繁華街の人ごみのなかでも、すぐにわかった。
浅川の私服は、色合いこそおとなしかったが、地味というわけでもなく、彼女らしい清楚さを感じさせるものだった。ただ一つ言えるのは、中学生には見えないことだ。
もっと年上に見える。
浅川は僕の前に着くなり言った。
「きらりは、用事があるって」
僕はそれをきいて、瞬時に心配に包まれた。
「その、大丈夫だったか?」
「足首? ここまで歩いてこられたし、昨日、大道くんに運んでもらったから、軽く済んだのかな」
「えっと、それもそうだけど、きらりちゃんからのメッセージ、すごくなかったか?」
「……そうね。でも、大道くんには関係のないことだから」
本当にそうなのだろうか。あのタイミングで降り注いでいたメッセージ群は、明らかに僕に関係しているように思えるのだが。
「うぬぼれないことね。きらりは、よく面白い画像とかを大量に送ってくるのよ」
「たとえばどんな?」
「……うるさいわね。いいから行くよ」
そうして彼女は歩き出したのだが、
「浅川、そっちじゃない」
「ごめんなさいね。家電屋さんには詳しくないの」
尖った言い方だった。昨日の浅川とは、ちょっと違うなと思った。
さて、僕らが家電屋に向かったのは、デジカメの画像をプリントするためだった。
手際よく、手のひらサイズの写真を三枚、印刷した。
天井近くの骨組みに挟まったバレーボールの表面。そこに描かれていた図形の正体を、僕らは考えるのだ。
少し歩いて、喫茶店に入り、丸いテーブルに向かい合って会議をした。
バレーボールには何が描かれていたのか。
それは、この拡大撮影した写真で、だいたい解明できた。
「地図ね」
スタート地点らしきものがある。矢印が書いてある。
ところが、肝心のゴールが見当たらない。柱に挟まった部分が見えなかった。
何のために描いたのか、誰が描いたのか、いつから挟まっていたのか。
全く手掛かりがない。調べる意味があるかどうかもわからない。
それでも、このボール型の地図は、まちあるき同好会に完全にぴったりの題材に思えた。
まちを歩いて謎を増やすこと。それが伝統で、それが僕らのこれまでの活動内容そのものだからだ。
ここに、きらりちゃんがいたら、きっと突拍子もないアイデアを言って、次の動きが決まるのだろうけど、浅川は積極的に動いたりしないだろう。
僕は、きらりちゃんが次に言うことを考えて、そして口にする。
そのとき、浅川と声が重なった。
「とりあえず行ってみる?」
二人して、目を見合わせて驚いたのだった。




