第十話 ラブレター事件(1)
夏が近づいてきた。
半袖でも汗ばむような日が増えてきたある日、僕が上履きに履き替えるために下駄箱のロッカーを開けたら、一通の手紙が入っていた。
僕は証拠を撮るように、携帯のカメラでそれを収めた。
手書きではない。印刷された文字だ。あて名は間違っていない。大道独行くん。僕の名前だ。割とユニークだから、人違いというのは考えにくい。
中を見てみると、これも印刷された丸っこい文字で、ピンク色の絵文字とともに、『好きです。』と書かれた紙があった。
差出人の名前がどこにも無かった。
どう見たってラブレターだ。
僕はそれを急いで制服のポケットに隠すと、靴箱の陰に張りついた。
この昇降口で監視をすれば、誰が入れていないかがわかると思ったからだ。
すくなくとも、手掛かりはつかめる可能性がある。時間差の仕掛けとか、変装とか、抜け道はいくらでもあるとはいえ、僕の下駄箱を確認するなどといった怪しい行動をする者がいれば、それがラブレターの主である可能性が高まるというものだ。
きらりちゃんの姿が見えた。何もおかしな素振りはない。鼻歌まじりに靴を履き替えて、一年生の教室がある方へと姿を消した。
クラスメイトたちにも、不審な様子はない。
もうそろそろホームルームが始まってしまう時間になったのだが、ぎりぎりまで監視を続けたいと思った。
不意に、僕は何者かに肩を叩かれた。
振り返ってみると、彼女がいた。
「あ、浅川」
「大道くん。何をしているの?」
浅川は僕が見ているときに、靴を履き替えなかった。だったら、浅川は僕よりも先に教室に行っていたことになる。僕は浅川の足元をみた。上履きだった。彼女にはアリバイがない。
「まさか、浅川が?」
「何のこと?」
「いや……」
「はじまるよ。ホームルーム」
浅川は、そう言って教室へと向かった。
僕は彼女を追いかけながら、今日一日、彼女の行動を、いつもより気にかけてみようと思った。




