シーズン2 5
テレビを見ていると、クリスマスケーキやお正月のお節のコマーシャルが増えてきた。
もうすぐ今年も終わる。そんな私は、九月の末から、あるネットゲームにはまっている。
それは、歴史上の偉人や神話の登場人物たちが入り乱れて戦いを繰り広げるというゲームだ。
そのゲームで、十一月の末、二つのお知らせが出た。
ひとつは十二月三周目の盟主戦は十月の末に行われたハロウィン特別戦と同じようなルールで、クリスマス特別戦を行うというもの。使える英雄はハロウィンの時と同じく、神話、欧州史、アメリカ史の三枠の英雄。今回も前回同様クラスCの各枠のいずれか一枚の欲しい英雄がプレゼントされるというもの。
そして、もう一つは、年が明けて一回目の盟主戦はお正月特別戦と銘打たれ、使える英雄枠は神話、日本中世、戦国、幕末の三枠で、今度は日本にスポットが当たるようだ。しかも、お正月特別戦は、それぞれの枠の英雄がクラスBで各一枚ずつプレゼントされるという大盤振る舞いだ。
そういった関係で、前回同様、十二月一日から翌年の一月四日までの間は、課金のルゴードクジからは、この五枠の英雄がクラスB以上の状態での出現率がアップする。
(んんっ?ということは、二週続けて、特別戦ってこと?)
と一瞬、思ってしまったが、予告を見ると、クリスマス特別戦は十二月の三周目の土日。正月の特別戦は一月の一週目。間に、一週間の間があることに気づいた。
(お正月のお年玉をアテにして、今回は、課金してみるかな?)
そう性悪なことを考えたのだが、年末は、大掃除など家の片づけの手伝いや学校から出される課題もあるので、英雄のレベルを上げる時間が思うようにとれないので、仮に課金して、新たな英雄を手に入れたとしても、即、実戦使用というわけにはいかないのである。
ところで、今回の特別戦の予告と共に実装された追加英雄は、神話、欧州史、アメリカ史、日本中世、戦国の人物なのだが、イラストが、クリスマスを意識しているのか、みんな、サンタクロースやクリスマスカラーの赤や緑の服をまとったようなイラストで、思わず苦笑いがこみあげてきた。
(ゲームだし、こういう悪ノリはアリだね・・・)
そんなことを思った。
そして、クリスマス特別戦の幕が切って落とされた。対戦相手は、孫堅領。現時点で全体順位の六位の盟主だ。私たちリチャード一世領は五位。一つ下の相手ではあるが、油断はできない。なぜなら十一月に行われた、二度目の同盟戦でパートナーの一角だったのだが、プレイヤー同士の連携が巧みで、他の領のプレイヤーとは一線を画し、かなりの巧者揃いという印象を持ったからだ。だから、十一月に戦ったエリザベス一世領の時のように、最後まで気が抜けない。それで、今回、私は防衛でポイントを獲ってみようと思い、無理やりの二軍体制を作り、次元の歪みと同時進行で、所属連合のリーダーの本領拠点まで援軍を送り込んだ。次元の歪みで使う軍は、まだ不十分で心もとないところもあるが、大将に基本陣形だが扱いやすい衝軛持ちのハヌマーン。他にもジャンヌ・ダルクなど使える状態になっている英雄たちで組んだ。そして、防衛軍はすでにレベルマックスになったアマテラスを大将にしたメデューサやガネーシャといった攻撃に優れつつも防衛力のある部隊を組んで送り出した。リーダーの領地まで山や川を越えて、到着まで四十分という遠地だが、対戦相手が決まった時点からそういう感じで行こうと思っていたので、準備日の間に送り出しておいた。
初日の土曜日に次元の歪みはすべてのマップのベースになっていると思われる平原だったので、手早く終わらせ、その後は、残っている英雄で自身の自領拠点に防衛軍を入れて、あとは状況を見守る。
翌日は、朝から家の手伝いの大掃除をしたりして過ごしていたので、ゲームにログインしたのは夕食を終えてからだった。
ログインすると、自領拠点は破壊され、連合リーダーのところに送っていた防衛軍も敗北帰還していて、守備に就いていたメンバーみんなが、大怪我状態で待機していた。
即、病院に入院させ、回復させる。とはいっても、もう時間的に復活しての参戦は難しいので、今回はこれまでにする。
(防衛してくれたみんな、お疲れさま。こんな時間までほっといてゴメンね)
と大怪我をした英雄たちに詫びる。ゲームのキャラクターとはいえ、プレイを始めてもう三ヶ月以上になるので、大怪我をしたりしていたら、胸が痛むような愛着を感じるときある。
さて、戦況報告の確認だ。昨日のゲームを止めた直後に相手方のプレイヤー三人の連合軍で盟主拠点に攻めてきていて、発動したスキルなども、お互いの英雄の固有スキルを補完し合うような感じで汎用スキルが発動していて、その上、盟主英雄のような強力な英雄を混ぜることなく戦っていたりと、実に見事で、これからスキルを研修させていく上での参考になるような戦い方だった。
リーダーのところの防衛についても同じで、プレイヤー同士の連携が見事で本当に『敵ながら天晴』という言葉はこういう時に使うものと理解できるような戦いだった。だが、優勢劣勢を示すゲージが、いまの時間帯で、50対50の状態だったので、終戦までの残り四時間ほど。この時間で、動く可能性が無いわけではない。
(ここで戦ったら、初心者外れちゃうけど、勝てそうな感じがある時は出たいなぁ・・・)
と思ったが、病院に入院していたり、ホテルで休んでいたりと英雄に余裕がないので、私は参戦できない。残念!
翌日、学校から帰宅して、ログインし、結果を見ると、勝敗ラインは50対50のままで動いてはいなかったが、こちらと相手方の破壊や攻撃、防衛のポイントの合算では、私たちがわずかに上回っていたが、相手側や次元の歪みでの拠点の破壊総数が二つ上回っていたので、相手である孫堅領の勝利となっていた。
(負けたとはいえ、こういう勝負の決まり方もあるんだ・・・。そうそうあるものじゃないだろうけど、拠点の破壊数もこれからはいちおう、確認した方がいいなぁ)
続いて、褒章の確認に移ると、一万バーシルと、チケットクジ10枚。そして、防衛をしたり他のプレイヤーの防衛の手伝いをしたからなのか、ユニーク武具の日本号やバイキングヘルムといった防具もついてきた。
(防衛するとユニーク武具も手に入るんだ・・・)
と新たな報酬を喜んだ。
いよいよ、明日から冬休み。課題をかたづけながら、ゲーム三昧で過ごそうと思っている。
このゲームにも他のゲームにありがちな、連合やギルドのような組織はある。いま私が籍を置いているリチャード一世領にも、二つの連合が存在する。『戦う英国紳士』と『獅子の会』である。私は『獅子の会』の方に入っていて、特別なルールもない、自由な連合で気ままにプレイしている。
連合内では、アマテラスのおかげか真ん中あたりの順位にいる。領全体では真ん中より下くらい。そして、すべての領全体では、まだまだ、下から数える方が早いが、それでも、900番手以内に入っている。プレイを始めた当初は、時期の関係もあって、下から数える方が早かったが、今期は、学校という時間の制約はあるものの、なかなか悪くない位置につけているのではと思っている。
そして、いよいよ、今年最後の盟主戦が始まった。対戦相手はネロ領。現在、全盟主中一位を走っている。しかも第一戦目からずっと一対一の対戦では勝利をおさめ、ここまでの、ただ一つの黒星が、私たちが前回の同盟戦で一緒だった織田信長領。
これまでの戦いの記録をみて驚くとともに、妙な納得があった。
(信長領の人たちなら倒しちゃうだろうな…。連携も巧かったし・・・)
と思いながらも、自分たちとネロ領の比較をして、全体順位のトップテンの半分が、ネロ領の人であり、自分たちの一番上位にいる人でも、20位とその差でこの戦いの結果を予想して
(今年、最後の戦いで、負け確定なんて嫌だなぁ・・・)
とか考えたりもした。
(でも、年末だし、自分たちもだけど、相手だって、プレイできない人も少なくないんじゃないかな)
と考え、その思考を打ち消した。
ネロ領との一日目。私はいつもの通り、次元の歪みへと移動した。
そこは、いつもの緑色が広がる画面ではなく、その緑の中の縦横に水色の帯状のラインが走っていた。
(これが、河川マップかぁ・・・。確かに、水上移動のスキルを持ってないと攻略出来ないなぁ・・・)
でも、私は慌てない。水上移動のスキルを持つ英雄を複数持っているからだ。
猪八戒に玉旛竿孟康、軍事監督署でがんばってもらってる周瑜、市場に内政官として置いている紀伊國屋文左衛門と二人は内政要員だが、四人もいるので安心だ。
前の戦いで、このゲームでは先輩になるトキノ氏にいろいろと教えてもらったおかげで、移動速度やダメージをあまりもらわないためのスキルも憶えさせて、少しだけではあるがパワーアップしているので、他のプレイヤー相手の対人戦はまだまだ怖いけれど、この次元の歪みであれば、今期の始めと比べればずいぶん、楽にプレイできるようになっている。
前々回くらいの盟主戦で、初心者を外そうかと思っていたが、防衛軍をしたて他の連合メンバーに送り、もう一つの軍で次元の歪みをこなすという、二軍体制で戦うことができるようになってはいるが、それでも、対人戦を戦うにはまだ余裕がないので、もうしばらくお預けということにする。
(水上移動は四人もいるから、山越えスキルを持ってる英雄が欲しいなぁ・・・)
そんなことを考えながら、今回の次元の歪みを終わらせ、自領拠点に防衛軍を待機させ今日のゲームを止めることにした。
よく、二日目。自領拠点は攻撃された形跡はなかったが、優勢劣勢を示すゲージが、昨日とほとんど変わっておらず、私たちリチャード一世領が圧倒されていた。
(うーん、このまま、負けちゃうのかな?)
そんなことを思いながら、同じリチャード一世領の他のメンバーの様子を見ると、ほとんどの人が、自領拠点を破壊されかなりのポイントを持っていかれていた。
私はその日の夜にもう一度、戦況を見るため、ログインした。
しかし、状況は全く変わっていなかったので、
(こりゃ、ダメだ。敗戦確定)
とため息をつき、パソコンの電源を落とし布団に潜り込んだ。
結局、圧倒的な差を見せつけられ、初日でほぼゲームセット。二日目も、初日に倒された人が自領拠点を復活させて、挑んでいたようだが、それも焼け石に水。その差をひっくり返すことはできなかった。
(うーん、やっぱりそうなったかぁ・・・)
負けたものはしょうがない、あきらめ、新年に向けての準備を行うことに気持ちを切り替えた。




