ACT.23 握り潰し
スクリーン。
例の映像。
停止フレーム。
四十谷翔。
そして――
真月団の影。
ジュン子が立っている。
「これで、捜査せん理由はないはずです」
声は低い。
「暴行だけやない」
一拍。
「真月団と繋がっとる」
沈黙。
幹部たちの視線は、揺れない。
警務部長が、ゆっくり口を開く。
「……出所は?」
ジュン子は即答した。
「投稿元は複数。拡散動画とは別に、原データも確保済みです」
一拍。
「タイムスタンプ、位置情報、周辺カメラとも照合中。少なくとも捜査資料にはできます」
警務部長は目を細めた。
「……出所の確認が不十分だな」
一言。
「正式な資料として扱うには危うい」
「は?」
ジュン子が一歩前へ出る。
「言い逃れできへんレベルやで」
机に手をつく。
「まだ“なかったこと”にする気か」
警務部長の声は冷たい。
「言葉を慎みたまえ」
一拍。
「ここは会議の場だ」
ジュン子は、さらに低い声で言う。
「ほな聞くわ」
抑えている。
「現場で殴られとる人間の痛み、あんた分かるんか?」
一歩。
「“守る側”が黙ってる恐ろしさ、分かるんか?」
沈黙。
誰も答えない。
答えられない。
「あんたらの沈黙が――」
声が跳ねる。
「警察を腐らせるんや!!」
警務部長は、視線を外した。
「……以上だ」
会議は、そこで切られた。
ジュン子の拳が震えている。
ヒールが、椅子の脚を蹴った。
鈍い音が、会議室に残る。
そのまま、ドアへ向かう。
開ける。
出る。
閉まる。
バンッ。
廊下 ――「呼吸」
静寂。
白い廊下。
ジュン子は立ち止まる。
拳が震えている。
(……くそ。全部、分かってて黙っとる。それでも“警察”か)
壁にもたれる。
美海。
最初から、そこにいたみたいに。
「……終わった?」
軽く。
ジュン子は吐き捨てる。
「終わってへん。始まったとこや」
美海が隣に来る。
同じ方向を見る。
「やっぱりさ」
小さく笑う。
「正義って、組織の中じゃ窒息するんだね」
ジュン子は即答した。
「それでもな」
一歩、前へ。
「呼吸止める気はないで」
振り向く。
目が、生きている。
「止めたら終わりや」
間。
美海が、少しだけ目を細める。
「……いい顔するじゃん」
遠く。
サイレン。
また、どこかで事件。
二人は歩き出す。
組織の中。
それでも。
“止まらない側”として。
The Next Mission




