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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
らのべっぽいみたいな回想録
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らのべっぽいみたいな回想録 17

 第二次マリアナ海戦は日本の勝利に終わったが、大統領選挙直前であったために敗北の報は一切が統制され、報じられることは無かった。

 太平洋での行動を知る一部を除いて、新たに艦隊がハワイを発ち、日本軍へと攻勢に出たことすら知らなかった事で、誰も敗北に気が付く事は無かった。


 しかし、この敗北によって大統領自身は自らの窮地を自覚し、北方からの日本攻撃を本格化させていく。


 アッツ島とソ連領カムチャツカ半島にあるペトロパブロフ・カムチャツキーには巨大な飛行場が出現し、北方からシベリア内へとB29を送り出すと共に、北方戦線を形成して本格的な攻撃が始められている。


 本来なら日本はアリューシャン列島へも侵攻して同飛行場を占拠すべきだったのだが、当地の気象環境からこれを否定して放置してしまっていた。物語では、アッツ、キスカを一時的に占領していたが、結果的に物量に勝る米軍によって奪回され多大な犠牲が出る未来が示されたことで、作戦を控えたのだという。


 その代わり、占守郡での防衛体制は早期に立ち上がって北方艦隊として巡洋艦や駆逐艦による艦隊、空軍部隊の展開も早期に行われていた。

 当初は散発的な戦闘しか起きていなかったが、B29のシベリア回航頃から日本によるB29迎撃を懸念して千島への攻勢も強化されている。

 ただ、上陸部隊の侵攻の様な事は起きていなかった。


 B29のシベリア回航の拠点として当初は日本の攻撃圏外縁であるアッツ島が利用されていたが、直接日本を攻撃可能なペトロパブロフ・カムチャツキーにもソ連と共同で巨大な飛行場を建設して航空部隊を進出させていた。


 ここからB29を発進させれば東日本全域が爆撃可能圏内であり、シベリアと二か所の基地が置ける事から米軍は乗り気であったが、シベリアと異なり日本軍の基地が近くであったため、その攻撃を受けることになる。


 日本軍は占守島や幌筵島に部隊を展開し、カムチャツカへの攻撃を敢行する。しかし、彼我の距離があまりにも近すぎる事から、更に後方にある得撫島や択捉島の基地から航空機を飛ばすこともあった。皮肉にも米軍がアッツ島から長躯四発機を飛ばすのと同様の事を日本も行い、北方の消耗戦と呼ばれる戦いが夏以降続けられることになる。


 しかし、この戦いは米ソ関係に亀裂を入れる事にもなった。


 ソ連の参戦によってオホーツク海の制海権は日本のモノとなり、北樺太を失った事で完全にカムチャツカへの輸送ルートも失っていた。カムチャツカは米国による支援に頼る以外に道はなく、ロシア人がそこに居住はしているが、動いている軍は主に米軍であった。


 そのような状態がソ連指導部にとって面白いはずがない。


 しかし米国からしてみれば、自分たちが日本に対して攻勢に出られるのは今や北方しかなく、力点を置くのは致し方なかった。


 目を太平洋以外に転じると、マリアナ沖海戦を陽動として行われたインド洋作戦は成功裏に終わっている。


 そもそもが通商破壊用の戦力しかインド洋に残せていなかった日本軍に対し、満を期して大艦隊を仕立てた米英軍が侵攻したとなれば、日本軍に出来ることは多くなかった。

 しかし、米英軍の主たる目的も日本軍の撃滅ではなく、スエズを奪われアラビア半島に逼塞している英軍の救援であった。

 地中海での作戦がうまく行っていない以上、現状打開にはアラビア半島に後退している英軍を増強し、エジプト奪回によってアルジェリア方面の枢軸軍へ圧力を加えるしかない。インド洋西部の安全を取り戻し、スエズ運河を取り戻せば、逆転は可能だったのだから。


 だが、これに関しても英国にとってはマリアナ沖海戦こそが陽動であり、本命は自身の権益である中東や北アフリカの回復にある。しかし、米国の目には、わざわざ身を切って多大な犠牲を払ってやったにしては、余りにも自分達の利益が少なすぎるように映った。

 米側はアンダマン海への進出とインド東部へ迫る日本軍へ圧を加えることを望んだが、英国はチッタゴンで足を止めた日本軍にはさしたる興味を示していなかった。既に日本軍の補給線は伸びきっていると見ており、放っておいても現地の自然が勝手に日本軍を苦しめることを知っていたからだ。

 だが、ビルマ周辺の気候などまるで知らない米側にはこれは英国の怠慢にしか思えなかった。


 そもそも自分たちは英国を助けるために血を流しているのに、太平洋は英国にとって捨て駒であり、日本軍は豪州に手を出してすらいない。南洋で苦しむのは米国だけ。


 自身が英国をレンドリースの借金で絡め取ろうとしている米国にとって、英国の行動は米国の意図を見透かしたうえでの消耗戦ではないかとすら思えていた。

 このままでは言い出しっぺである米国がビルマ方面にも派兵し、更に血を流すことになりかねない。そんな疑念が頭をもたげていた。

 いや、懸念は現実として要求されていく。

 戦前に支那国府軍を支援し、今なお義勇軍の名目で米人が支那に残る事から、当面はビルマ方面を米国に任せられないかという問いが英国からもたらされる。

 懸念が現実となると不信が増幅していくのを止めることは出来なかった。


 それを示すような事態は北欧でも起きていた。


 未だ占領こそされてはいないが、そもそもが貧弱な鉄道であるムルマンスク線に対する独軍の攻撃が散発的に行われていた。

 ムルマンスク自体もすでに攻撃圏であり、フィンランド軍も交えた攻防戦は激化の一途だった。


 そうなってしまったのは、イラン回廊封鎖による物資の供給減と、対日参戦で極東補給路を自ら断ち切ったソ連の自業自得なのだが、それが巡り巡って米国への大きな負担となっていた。

 現在、ソ連軍を支えているのはムルマンスク航路ではなく、アリューシャン経由の危険な空輸作戦だった。

 それすらも対日戦線で大半が消費され、東部戦線には回らない。これではドイツへの圧力になりはしない。

 ドイツ自身の工業中心も中欧へと後退しており、東部戦線の膠着による安定もあって脅威をほぼ受ける状態に無かった。


 米国では選挙の季節が終って戦争体制に本腰を入れることになったのだが、今日の常識からみると首を傾げる決定が行われている。

 米国はこの時、「アイオワ」級戦艦だけでなく、「モンタナ」級戦艦の建造の優先順位をあげて来た。ただ、装甲が薄く戦闘に不向きであった「アラスカ」級に関しては装甲空母として現在建造中、発注分については転換することとした。ただ、その影響で既存の量産されるべき空母は護衛空母を除いて優先順位を低下させ、鋼材を戦艦と改装空母に優先する失策が進められていく。


 それを助長したのが冬季のアリューシャン沖合で行われた日米の海戦だった。


 日本が重巡洋艦を基幹とする打撃艦隊をアリューシャンへと送り込んでカムチャツカへの補給線に打撃を与えようとしている事を察知した米軍も同様に巡洋艦を基幹とする打撃艦隊を派遣した。


 アリューシャンの海象は飛行機に厳しく、日米とも水上艦を主力にしていた。

 

 この頃には双方ともにレーダーは標準装備であり、性能に大差はなかった。


 それ故に優劣を決めたのは砲弾だった。日本側はこの頃には20.3cm用の九五式徹甲弾も配備しており、その威力によって米艦隊を翻弄している。

 ただ、戦艦砲弾ほど潤沢にある訳ではなかったので、米主力部隊の大半を戦闘不能にした時点で砲弾が尽き、以後は日本側にも被害が目立ちだしたことで撤退している。


 こうして1944年は暮れていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり英国と日本って直接利害が絡むわけじゃないから拗れるマイナスが英国にとって大きすぎますね。 しかし、大勢戦死者が出ている筈の米国で、報道統制しているとはいえどこまで隠しおおせるのか。 …
[一言] >現在、ソ連軍を支えているのはムルマンスク航路ではなく、アリューシャン経由の危険な空輸作戦だった。 空輸で運べる物資は消耗の度合いと比べてたかがしれてるので、ソ連軍を支えるとか無理筋もいい…
[一言] B-29が着陸する飛行場を間違えて後のTu-3の材料にされるのですね 覇者の戦塵でもB-24のソ連領からの空襲で日本陸軍がレーダー管制の夜間迎撃システムを完成させていましたね そして米国を…
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