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七番目の殺人  作者: 金帽子


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4/10

第四話 焦り

死、それはこの閉鎖的状況にいる俺達のありとあらゆる行動を縛る上で最適の罰であった。


ゲンジの死体が広場に置いてあった直後のアナウンスで俺達はしばらく、動けずにも喋れずにもいた。均衡を破ったのは、コウヘイだった。


「皆、落ち着け!アナウンスにもあった通り、ルールを守れば死にはしないんだ。だから、冷静になろう」


ざわついていた他の人達が少し、冷静さを取り戻すように各々息を整えた。


まずは、状況を整理しなければならない。ゲンジは、侵入禁止の部屋へ侵入を試みたため殺された。つまり、ゲンジは何処かへ監禁はされていなかったのか?だが、俺達の捜索した限りだと広場も個人の部屋も何処にも見当たらなかった。と、なるとゲンジは一体何処に潜んでいたのか。


「ゲンジは何処にいたんだ?侵入禁止の部屋に入ろうとしたって事は、少なくとも侵入禁止の部屋の外にいたって事だろ?けど、昨日探した限り広場にも個人の部屋にもいなかったよな?」


「あぁ、間違いなくゲンジはこっちにはいなかったよ」


コウヘイが淡々と俺に返した。


「そうだよな。なら、今この瞬間にあの侵入禁止部屋へ全員で入ってみるってのはどうだ?」

「嫌です!ゲンジさんはそれで死んだんですよ!」


サキが物凄い血相で俺を睨みながら吠えた。確かにそうかもしれないが、今、全員でなら何とかなる気もしている。


「ここに最新のハイテクな殺害道具が無いのは、ゲンジを見て分からないか?ゲンジの死体、殺されたにしては目立った外傷が無さすぎると思うんだよ」


ゲンジの死体は撃たれた後も、首を絞められたような痕跡もなかった。服を脱がしていないから確定では無いが、今のところはそういった安直な殺害方法は無いと見るのが妥当だと言える。


「でも、それで全員巻き添え喰らったりしたら責任取れるんですか!?ツバサさん、七番目だから……」

「おい、サキ!」


サキが一瞬、俺を見下す様な発言をしかけたのをコウヘイが横槍を刺した。


「ご、ごめん。俺周りが見えてなかったよ」

「いえ、こちらこそカッとなってしまって不適切な発言をしてしまい、すみませんでした」


サキと俺は喧嘩を親に止められた兄弟の様にシュンとして、お互い謝った。


ブツッブツッと音が鳴った。


(緊急アナウンスです。全員直ちに、自分の部屋へ戻り鍵をしてください。次の外出可能時間は午後の七時です。ゲンジさんの遺体はそのままにして置き、直ちに部屋へお戻りください)


ブツッとアナウンスが切れた。


「急がないと!部屋に戻りましょう!」


ヨウスケが皆へ促しながら、部屋へと走り出した。


「ゲンジさん、安らかにお眠りください」


そそくさとタカシが雑に手を合わせて、ヨウスケと同じ様に走り出した。


「皆!七時の後、アナウンスが無ければ広場へ集まろう!」


コウヘイが走りながら、全員へ大声で呼びかけた。俺達は皆、出会って間もないゲンジの死をちゃんと弔う事もせず現場を後にした。


自分の部屋でベッドに横たわりながら、ため息を吐く。部屋の中には、ペンとノートがある。そうだ、ここでの出来事をメモしておこう。脱出できた時に俺達が捕えられていた証拠になるかもしれない。そう思って、まだ新しそうなノートをパラパラとめくった。


何か違和感を感じる。注意深く、ノートの中身を見た。何か書かれているわけではないが、既視感を覚えた。


ーーあの時のメモだ。


よくノートの一ページを見てみると、この部屋のルールが書かれていた広場にあったノートと種類が同じではないか。であるなら、この中にあのメモを残したノートを持ってる奴が潜んでいる。そうなれば、次に部屋の捜索をした時に確認してみる価値はあるはずだ。


ただ、皆には言う必要はない。俺はそう決心して、また午後七時までを一旦寝て過ごすことにした。


ーー午後七時


時間通り、広場へ向かう。


俺はノートの秘密を確かめたくて、奇妙な感情に支配されていた。また、誰かがいなくなっていれば部屋を捜索することができる。だが、それは決して道徳的に良いことではない。人の不幸など願ってはいけないのだ。何人たりとも、死んで良いことなんてない。


広場にはまた四人、コウヘイ、ヨウスケ、タカシ。そしてユカがいた。


今度はサキの姿がなかった。ゲンジの死体も、いつの間にか消えていた。


「……ユカ、無事だったのか」

「えぇ、おかげさまでね」


ユカが俺に笑いかけた後、俺の横にいるタカシへ、一瞬だけ目を向けた。ほんの一瞬、確かに表情が固まったように見えた。


「……どうした?」

「え?」

「いや、今……何でもないわ」


ユカはいつもの表情へ戻った。


「それにしても、あまり驚いていない様だけど」

「何となく、わかって来たよ。ルールさえ守れば命の保障はあるみたいだし。ユカも攫われた記憶は無いんだろ?」


「あるわよ」

「だよな、あるわけ……っ!?」


今、記憶はあるって言ったのか。

俺だけではなかった。コウヘイ、ヨウスケ、タカシも、明らかに動揺していた。


「あるのか、記憶が!?どこにいたんだ?」


ユカは俺ではなく、周囲の三人の反応を一瞬だけ確認してから、少し笑みを浮かべた。


「あそこよ」


ユカが指を指したのは、奥の侵入禁止の部屋であった。


ユカはどうやら、侵入禁止の部屋にいたらしい。で、あればヨウスケもそこにいたのでは無いか。しかし、侵入禁止の部屋に入ろうとしたゲンジは死んだ。


「少し、話を整理させてくれ。ゲンジは入ろうとして死んだんだぞ。無事なのは何よりだが、何で部屋に入ったユカが無事なんだ?」

「さぁね。私は、自分の意思であの部屋にはいなかったわよ。気づいたらいたの。最初はどこかと思ったけど外からあなた達の声が聞こえたからすぐにここが侵入禁止の部屋だとわかったわ」


ユカが自分の意思で侵入したわけではないなら、ルール違反ではない。そう考えれば筋は通る。だが、それならなぜユカだけがそこへ移されたのか。そもそも、あの部屋は一体何のために存在しているのか。


「あの部屋には何かあったのか?脱出に繋がる手掛かりとか」

「残念ながら何も無いわ。いわば、独房ね。犯罪者が刑務所で問題を起こした時に入れられるあれよ」


なんにせよ、今度はサキの姿が無い。ノートの為にも、捜索を打診したい。


「皆、形式ぶってしまい申し訳ないがサキがいない。また、手分けして捜索をしないか」

「あぁ、当然しよう」

「勿論です」


コウヘイとタカシが俺に続き、ユカがコクリと頷く。ヨウスケは若干状況が理解できないような様子だったが、無理もない。人が死んだのだ。


そうして、捜索を開始した。今までは、各部屋をそれぞれ一度は確認するようにしていたがもう三回目だ。他の人はきっと少し操作が雑になる。充分に探す時間はあるはずだ。


六番の部屋から順に見ていく。まずは、タカシのノートだ。やはり、俺の物と同じノートである事が確認できた。切られた様子は特に無い。五番、四番と順に探していき、最後のユカの部屋に辿り着いた。俺は後ろを見て、誰もいないことを確認しノートを開いた。


あった。ノートに僅かだが一ページ切り取られた痕跡がある。という事は、あのメモはユカのノートから取られたことになる。


やはり、ゲンジが死んだ時にこの部屋にいなかったユカがかなり怪しい。

と、考えていると、


「あの部屋にいた事、言って良かったんですか?」

「えぇ、こんな事態想定外でしょ?」


その声を聞いた瞬間、俺は思わず息を止めた。二人とも、俺には聞こえないように話しているつもりらしい。

ヒソヒソと小さい声ではあるが廊下をこちらに歩きながら話し声が聞こえる。俺はノートを静かに閉じた。


「サキ、いた?」


ユカが体をドアから乗り出しながら尋ねてきた。


「いやいないよ、きっとあの部屋なんじゃないのかな」

「そうかもね、でも入ろうとしたら死ぬわよ」

「わかってる、開けはしないさ」


ユカはそれ以上何も言わなかった。

広場へ皆で集まり、話し合いを始めるために円になって座った。


「はぁ……どうしてゲンジさんは」


タカシが愚痴を漏らした。

無理もない。こんな閉鎖的な状況で、通常通りいろという方が無理である。


「タカシさん、きっと大丈夫。ゲンジさんの事は悲しいし、ルール破ったら死ぬらしいけど破らない限りはおそらく」

「はぁ……」


それより、ユカのノートを言うべきか。お前は犯人だ!といきなり言うのは、どう見ても悪手だ。だが、疑問に思っている事を共有はすべきだろう。


「皆、聞いてほしい事がある」


全員がこちらをクルリと向いた。


「俺は犯人が分かったわけではない。けど、犯人に繋がる手掛かりは見つけた。だから、俺はまだそいつが犯人だとは思っていないが一応聞いてほしい」


困惑と焦りという表情が全員の顔に浮かび上がった。

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