第20話 新たな被害
薬草採取も順調に進み、シルク村に着いた。
「あれ?ハート……、眩しいから嫌なのかな?」
ハートが日陰で止まって動かなかった。
ムーチーは鳥かごを取り出し、ハートに近付くと自分で中に入った。
『やっぱり日向がいやなんだ!布かけておこう。』
村の入り口で皆が立ち止まり、村の中を見た。
「ユウラ、オーウェド。ざっと村の安全を確認してくれる?ムーチー君、休憩に君の家を使っていいかな?」
「大丈夫ですよ?」
『別に困ることはないし、騎士団の皆さんには調査をしてもらってるから気にならないよ。』
2人のやり取りを確認し、ユウラは左、オーウェドは右側を家の扉を空けながら確認していった。
ギィシャとムーチーは2人で村の真ん中をゆっくりと歩いた。
『入口に前回の使っていた木の椅子とかがまとめられていたな……。』
ムーチーは呑気に考えながら歩いていた。
ムーチーの家に着くころには2人とも家の前で待機していた。
「お昼ご飯は家で作って大丈夫かな?」
「いいですけど、僕は宿でお弁当作ってもらったので大丈夫です。」
ギィシャは目を丸くしながら歩いた。
『あの朝に持っていた包みの中身は弁当なのか……。あのローユンさんが?』
ギィシャは頭をフル回転させていたが、聞くのはやめた。
「団長、どこも問題なしです。」
ギィシャは頷き、ムーチーの家に入った。
「ユウラ、キッチン使っても大丈夫らしいが、ムーチー君は弁当があるみたいだ。」
「あ……、分かりました。じゃあ持ってきたパンと簡単なもの作ったらいいですね!」
『何だろう、変な間があった?』
「先に食べていいよ?」
ムーチーは言葉に甘えて先に座って食べだした。
「おぉ~、その弁当ごうかだな!」
「はい、宿出るときに貰ったんです。」
《ガチャンッ》
キッチンで大きな音がした。
「ごめんなさい、気にしないで!」
ユウラは弁当の出所に驚いてしまい、必死に誤魔化していた。
◆◇
ムーチーはご飯を食べ終わると扉の方を見た。
「リーツとライさんの武器、そのままだな。」
オーウェドがムーチーの視線の先を見て答えた。するとギィシャがそれに答えた。
「今日置手紙をして騎士団に持って帰ろうかなと思っている。封鎖しているとはいっても盗賊が来たら敵わないからな。」
『確かに、結界を張ってるってい言ってたけど持って帰る方が確実だよね。』
「で、午後からだけどルシャの反対側に行ってみようと思う。」
みんな気楽に頷いていた。
これまでの調査でモンスターどころか動物にすら遭遇していないことから薬草採取に力を入れるつもりだった。
「村の奥ってことはポーション作る薬草がいっぱい生えてるんじゃ無かったっけ?」
ギィシャはムーチーを見た。
「ユウラさんの言う通りです。村の人も良く撮ってきていました。」
「決定だな、ルシャで在庫がなくなってきたと噂されていて、ポーションの値上げ噂が上がっているくらいだからな……。」
オーウェドが予想外の言葉を発していた。
『確かにここらの村の辺りにはポーションの元となる薬草を取り、商人に売ることで生計が成り立っていたけど、都市であるルシャにまで影響が出ているんだ……。』
ムーチーはこの村で育ってきたのでそこら辺に生えている雑草と大差なかったのだ。
親世代は村の外に出ると高確率で取って帰って来ていた。
『あの光景は異常だったのか?』
ムーチーはシンク村とキョクタ村にしか行ったことしかなかったので、気にしたことがなかったのだ。
◆◇◆◇
ご飯を食べ、少し休憩を挟んでから、移動を開始した。
ルシャとシンク村の間に比べて薬草の種類も生えている量も違った。
『こんなに違うんだ。さっきの話で出ていたけど、ポーションの薬草をローユンさんが欲しがっていたな……。』
ローユンが欲しがる理由は分からなかったが、ギルマス公認なので深く追及はしなかった。
そして、採取が順調すぎるほど進んだ頃、ギィシャが声をかけた。
「帰りのこともあるし、今日は帰ろうか。ルートだけ少し変え薬草を見つけても明日以降も採取できるから珍しくなかったらスルーしよう。」
この言葉が予想外の展開に発展してしまうのだが、この時の皆は動物とも出くわさない平和な帰り道だと思っていた。
そしてシンク村まで半分くらい進んだところで出会ってしまった。
「あれはウルキャット?」
ギィシャが驚きの余り、声に出してしまった。
『あれ?村の皆がいなくなった日に見たウルキャットの家族だ……。』
ムーチーは直感で気付いてしまった。
『だって、1匹だけ綺麗なシルバーなのに、残りの2匹は黄色だもん。』
「ムーチーくん、もしかして報告で言ってた……初日に見たウルキャットんも家族かい?」
ギィシャは嫌な予感がして小声で聞いた。
「はい、毛色が一緒で3匹なのも合ってます。」
「嘘だよね?」
ギィシャは衝撃な展開に打ちひしがれていた。
「団長?」
ユウラがびっくりしていた。
『団長がこんなに取り乱したところなんで騎士団に入ってから一度も見たことがないのに……。』
「誰でもいい。嘘だと言ってくれ。」
ギィシャが声を荒げて叫んだ。
それに気付いたウルキャットの親2匹はギィシャの顔をしっかり見た。
そしてシルバーの毛色の親が子を咥えて去って行った。去り際にムーチーの顔を申し訳なさげにちらりと見た。
ムーチーは目が合い、ギィシャの行動を理解してしまった。
「そんな……。でも、そんなはずない。」
ムーチーまで取り乱してしまい、ユウラとオーウェドは途方に暮れてしまった。
◆◇◆◇◆◇
ユウラとオーウェドは状況が理解できずに立ちすくんでしまった。
少し離れた所で遠吠えが聞こえてギィシャが我に返った。
「すまない、一先ず村に帰ろう……。」
4人の足取りは重いままムーチーの家に着いて、ギィシャはリーツァとライカークの武器を見た。
そんなギィシャを見てムーチーは思った。
『ギィシャさん、考えていることが本当だったらどうしよう……。』
「ウルキャットなんてここら辺では珍しいですよね?Cランク相当なので戦闘にならなくてよかったです。」
ユウラは落ち込んでいる2人を思って声を掛けた。
「いや、向こうに戦闘意志はなかった。ムーチー君は……気づいてしまったんだね?」
ギィシャの不思議な言い回しに他の2人は顔を見合わせた。
「ギィシャさん、毛色がシルバーの方と目が合って……。あの紫色の申し訳なさそうな目、昔を思い出してしまったんです。」
「やはりリーツか……。毛色は2人の髪型と同じ色だった、黄色のライと2人の子ども。」
ユウラは驚き、信じられず口に手を当てて小さな悲鳴が漏れた。
「団長!不確かです。まだ決定づけるのは……。」
オーウェドも必死に言葉を選んでいたが内心では分かっていた。
「すぐに帰ってギルマスに相談しよう。」
ギィシャは荷物袋から布を取り出し、2つの武器を覆い隠した。
ギルドに着くとルルが待っていましたとばかりに受付の仕事を止めて、4人の元へ来た。
「ギルマスがお呼びです。」
ギィシャは頷いてギルマス部屋へ直行した。
部屋の扉は開いていた。ギルマスとサブマスで何か小声で話していた。
ギルマスはその片手間でクエストの紙を書いていた。
ギィシャは扉をノックして入った。
「早かったな、残念な報告だが……。新たな村でモンスター化した報告が入った。」
4人に更なる衝撃が走った。




