第19話 冒険の始まり
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「でしょ!ナオハのご飯はこの宿の名物だよ。」
ナオハは照れを誤魔化すために食器を持って、厨房へ逃げてった。
「ムーチー君、ちょっと待っててくれるかな?薬草を持ってくるよ!」
ムーチーは薬草採取の本を開き、続きを見ていた。
『これ作った人凄いな、とても分かりやすい……。順番も採取しやすい順番に並べられている。』
関心しながら次のページをめくるとメモが落ちて来た。
『ん?何か挟まっている……?開いてみて他の人のだったら明日ルルさんに渡そう。』
――――
ムー君へ
シンク村、キョクタ村での依頼が多い薬草のページ書いてるよ!
参考にしてね!
ルル
――――
『ルルさんだ、優しいな……。』
メモを眺めているとローユンが薬草を持って帰ってきた。
「1つ見当たんなかったけどこの2つだよ。あれ、そのメモは?」
「ギルドの受付の人が書いてくれたみたいです。」
「ちょっと見て言い?」
薬草の名前とページ数を書いている。
「受付ってルルじゃん!じゃあ私も書いとこ。」
受付に行き、小さな紙を出してきた。
「内容重なるけど、私は1本からでも買い取るから!」
と言いながら説明をしてくれた。
「これが3ページのやつ、これが8ページ。ここにないけど15ページのやつがあれば一番欲しいかも。」
「あの、騎士団と一緒に行くので渡せるか……。」
ムーチーは不安げに答えた。するとローユンは言い切った。
「大丈夫!明日ルルに直接交渉しに行くから!」
『ローユンさん、いい方的にルルさんのことよく知ってるのかな?』
「調査で取れた薬草は直接ギルドに持って行って!ルルに持って帰っていいって言われた分だけ持って帰って来てくれたらいいよ!」
ローユンは更に一言いいながら、自信気にウインクして伝えた。
「取れたら必ず宿代の足しになるから!」
『この自身はどこから来るんだろう?まぁ、ギルドより高く買い取ってくれるならありがたいけど……。』
◆◇
翌日、ムーチーはベッドから起き上がり部屋で軽く筋トレだけした。
『今日は探索だから日課をすると動けなくなっちゃうからね!』
と内心思った。
下に降りると、ローユンが受付で階段をずっと見ていたから目が合った。
「おはよう!今日から探索だから日課は行かなかったのかい?」
『毎朝見送ってくれているので今日も待っていたのかな?』
「はい、軽く筋トレだけにしました。少し早く出て騎士団の訓練場で素振りをするつもりです!」
「真面目だねぇ。朝ごはんもう食べる?」
受付の横からひょっこりフードを深々と被ったナオハが声をかけてきた。
「ナオハさん!いただきます。」
「待っててくださいねぇ。」
ナオハは厨房へ帰って行った。
「ナオハさん昨日以外で始めて受付の外で見ました。」
ムーチーは驚いてローユンに伝えた。
「あぁ、獣人だからね。私の留守番の時だけお願いしてるんだよ。席で待てな!」
『獣人も大変だな……。』
昨日と同じ椅子に座り、薬草採取の本を見ていた。
「お待ちどうさん!今からギルドに行ってくるから。」
顔を上げるとナオハが受付の棚に『不在、呼び鈴を鳴らして下さい。』と書かれた看板を出して呼び鈴をその横に置いた。
目が合うとナオハは軽く会釈して厨房に入って行った。
「何かあったらナオハに言ってくれ。人見知りだから場合によっては助けてあげて?」
「はーい、お気をつけて!」
ムーチーはご飯を食べ終わると横にナオハが覗き込んでいた。
「うわっ、びっくりした!」
つられてナオハもビクッとした。
「あの、食器下げますね?」
「ナオハさん、ありがとうございます。」
『びっくりしたぁ!急に顔が見えるんだもん。』
驚いた後、ルルとローユンのメモのページを覚えていた。
◆◇◆◇
「ただいまぁ!おっ、ムー君いてくれたんだね。ありがとう。」
「おかえりなさい、早かったですね!僕は薬草の本の、メモのページ見てました。今日行くんで少しでも覚えておこうかと……。」
『ん?何だろう……。』ムーチーは何か違和感があった。
「ルルとタッコルに話しつけてきたよ。」
『聞き覚えのない名前だ……。あれ?』
「タッコルってギルマスの名前に似てません?」
「あははっ、何言ってんだい!ギルマス本人だよ?」
『ギルマス呼び捨ての人初めて見た。ローユンさん何者なんだ?』
1つの不思議が出来たが、聞くのは遠慮した。
『何か事情があるかもしれなけど、今はこの宿のローユンさんだ。』
「まっ、話はつけてきたからルルに普通に報告してくれたらいいよ。」
『何をしたか分からないけど聞かない方がよさそうだ。』
ローユンは上機嫌に受付へと戻っていった。
それを見てムーチーは部屋へと戻って出かける準備をした。
用意が終わり、ハートの鳥かごを持って下に降りた。
「もう行くのかい?無事に帰ってきなよ!」
ローユンが優しく声を掛けてくれた。その横からナオハが包みを渡してくれた。
「お弁当。」
「2人共ありがとうございます。行ってきます!」
宿を後にして騎士団の訓練場へ向かった。
「ムーチー君、早いくない?」
「ギィシャさん。少し素振りをしようかと……。」
「そうか、都合がいい。これをギルドから渡すように言われている。」
中を開けると簡単な初心者セットだった。
短剣、安物の防具、ポーションの入れ物(腰につけるポーチ)。
「冒険者が都市の外へクエストで出るときに渡される初心者セットだ。入れ物は道具入れとして使っている人が多い。」
早速装備を付けた。防具は茶色の皮で動きやすさ重視って感じだった。
「では2人が来るまで軽く短剣の使い方を覚えようか。」
ギィシャに訓練を付けてもらった。
◆◇◆◇◆◇
「あれ、ムーチー君もう来てたんだ。早いね!」
ユウラとオーウェドが出て来た。
「もう短剣の訓練もおわったよ、じゃあ行こうか!」
「団長!ありがとうございます。」
ムーチーはギィシャの言葉に引っかかった。そのムーチーを見てギィシャは答えた。
「最初は私も参加する。騎士団の仕事は副団長に任せているから大丈夫!」
後ろでユウラがグッドポーズをしていた。
「じゃあ行こう!」
ユウラが右手を高々と上げて出発した。
門を出て、シンク村の森へ入っていった。
「さて、もう蝙蝠ちゃんを出していいよ。」
「おいで、ハート!」
鳥かごからハートを取り出した。
「名前はハートちゃんか、腰の痣だね。」
ユウラは笑った。
「だってだれか分からないし、印象的だったので.......。」
「そうか、じゃあ、クエスト内容は聞いているね?」
ギィシャに言われて頷いた。
「そういえば朝早くにルルが来て、薬草採取の事聞いたけど……。ローユンのところに泊ってるんだね。」
ローユンの名前が出ると後ろの2人が口をあんぐりと空けて固まった。
「あの、ローユンさんって有名なんですか?」
3人共目を合わせて困っていた。……その重い空気を破ったのはギィシャだった。
「まぁ、ルシャに居れば分かるかもね……。訳アリだから、私たちの口からは言いにくいかな?」
『何か問題でも起こしたのかな?あんなに優しそうなのに?』
ムーチーは不思議に思った。
「まぁ、人の過去はむやみに詮索しないこった。いつか噂か本人の口からきけるかもな。」
オーウェドがフォローした。
「ムーチー君は基本的にユウラと薬草採取をしていればいいよ。私とオーウェドで探索しておくから。」
それからはユウラに薬草の生えていそうな場所だとか特徴を教えてもらいながら探索をした。
『そういえばハートはどうしているだろう?』
薬草採取に夢中でハートの事を忘れていた。が、ハートは自由に飛び回ってはいたがちゃんとついて来ていた。
ムーチーは安心して薬草採取を続けたのだった。




