第17話 初クエストと準備
ムーチーは一度宿へ向かった。
左手には荷物、右手には先程テイムした蝙蝠のハート。
『あれ、ハートって従魔登録しないとだっけ?クエスト後でいいかな?』
後々怒られることも知らず、能天気に考えていた。
『あ、先にラットンさん所行かないと……。』
宿の手前にある商店の荷馬車置き場を覗いた。
「ラットンさん!お久しぶりです。」
「坊ちゃん、元気そうで何よりです……。村は進展なしですか?」
ラットンは少し言いにくそうに聞いた。
「何もないですけど、テイマーになりました。何か役に立てないかなと思って!」
「テイマーですか?珍しい職業ですね!早速ですが、積み込みをお願いしてもいいですか?」
馬車を見ると何もなかった。
『丁度これからだったんだ。依頼の馬車の積み荷の手伝い、頑張ろう!』
「はい!約束ですのでしっかり働きます。」
荷物とハートを邪魔にならない場所へ置き、ラットンの指示に従い荷を詰め込んだ。
「これをそこに置いてもらえれば終りです。」
積み荷が終わり、一緒に宿へ向かった。
「ローユンさん、坊ちゃん連れて来ましたよ!」
ローユンと呼ばれた女性が振り返ると赤髪ロングのポニーテールがふわりと待った。
『綺麗な人だな……。』
「ラットンさん、部屋を用意していますよ。」
「では私は出るので坊ちゃんをよろしくお願いしますね。」
と、言い残して颯爽と出て行った。
「あの、ムーチーです。」
「よろしくね!部屋を案内するよ。」
5階建ての3階、角部屋だった。
「1週間分はラットンさんに貰ってるから、ご飯は受付の横にあるテーブルで好きな時間に食べて貰っていいよ。」
「あと、一応入り口は22時に閉めるけど前もって言ってくれたら空けるからね!お昼ご飯は?」
「ありがとうございます。お昼は食べました。」
「じゃあ、後はお好きにどうぞ!」
部屋に荷物を置いて、部屋をぐるりと見渡した。
「ハートがいるのでカーテンを閉めておこう。」
◆◇
宿を出て、クエストの順番を考えた。
『店の積み荷おろしからでいっか。』
ギルドの反対側だった店へ入った。
『入り口は準備中だけど入っても大丈夫かな?』
「こんにちはー、クエストできました!」
「はいはい。あら、可愛い坊やだね?クエスト受けてくれてありがとうね!」
といい、お茶を出してくれた。
「中々受けてくれる人がいなくて困ってたんだよ。見ての通りおばぁでね……。重いのを持つのがしんどいんだよ。」
お茶を飲んで、厨房の奥へ案内された。
「昨日届いたんだけど、仕込みをしていたら高く積み上げられてね……。」
『容赦ないな……。』
「何か台になるものはありますか?」
「そこの椅子くらいしかないけど大丈夫かい?ちっちゃいから無理しちゃいかんよ?」
「力には自信があるので!」
と言いながら椅子を高積みされた木箱の横に置いて登った。
『うわぁ、椅子に登っても一番上が僕と同じ高さだよ……。』
呆れながら荷物を持ち上げた。
作業台に一度下ろし、椅子から降りて再度地面に下ろした。
「同じようにしていきますね。」
順調に下ろしていった。
「ありがとうね、1人だから困ってたんだよ。せっかく購入したのに食べ物をダメにするところだったよ。」
とても嬉しそうに言い、依頼のハンコを押してもらった。
「暇な時は食べにおいで、Gランクだからお金に困るでしょ?」
『喜んでもらえてよかった。次に行こう!』
◆◇◆◇
次の場所はギルドと反対側、出口と宿の中間地点だった。
「こんにちはー、クエストできました!」
入ると厨房で忙しそうに準備をしていた。
「おう、坊主。グリス掃除か!助かる〜。」
『中めっちゃ綺麗、てか高そうな店だな……。』
声の主は大柄すぎて、厨房からの出口を潜ってきた。
『でかいなっ!』
「厨房の中へ入ってくれて構わない。ついてきてくれ!」
言われるがままついて行った。
『やっぱり中も綺麗だ。虫1匹いなさそう……。』
「すまないな、忙しくて掃除する時間がなくてな。厨房の奥にある部屋がグリスの場所だ。」
扉を開けながら、ゴミ袋と手袋、布を渡された。
「匂うぞー。この布で鼻と口を塞いで、手袋を必ずしろよ。」
「あとはそこにあるバケツで水を何かも流してくれ。匂いが消えれば完了だ。」
『うわぁ、本当に臭い……。この網かごに張り付いてるゴミが原因か!」
ゴミ袋を2重にしてゴミをせっせと中に入れる作業を繰り返した。
『大体こんなもんかな?次はバケツへ水を入れて、何回も流すだけっと。』
しばらくするとあることに気づいた。
『あぁ、あそこの扉を開けないと匂いが消えたかわからないや。』
と、厨房と反対の窓を開けた。
グリスに近づき、匂いを嗅いでも臭さは無かった。
『よし、窓を閉めて報告だ!』
厨房への扉を開けると目の前に大男がいた。
「おっ、もうおわったのかい?」
ムーチーはびっくりして後退りし、空いたスペースに大男が入ってきた。
「臭いもないし、こんなに綺麗にしてくれたのか。他の冒険者とは大違いだな。こっち来い!」
後ろを突いて歩くと、ホールまで帰ってきた。
「クエストの紙出してくれ。あとこれは綺麗にしてくれたサービスな!」
紙を差し出してハンコを押してもらった。サービスに干し肉を3つもらった。
「いいんですか?」
「あぁ。今までで1番綺麗にしてもらったお礼だ。干し肉は冒険中の軽食として食ってくれ!」
「じゃあな、坊主。頑張れよ。」
お礼をし、宿を後にした。
◆◇◆◇◆◇
宿に帰るとローユンとが受付で暇そうにしていた。
「おかえり、ムーチー君?匂うんだけど……風呂入って着替えてきたら?」
「あ……、お風呂どこですか?」
案内してもらい風呂へ軽く入って、着替えは袋に入れておいておいた。
『洗ってくれるとか助かるなぁ!』
着替え終わり、ギルドへ報告をしに行った。
「あっ、ムー君。今すぐ私について来て!」
ルルさんに呼ばれてついて行った。
『行き先はギルマスの部屋?ハートの件かな?』
『コンコンッ』
中に入るとギルマスとサブマスがいた。
「要件はわかるな?」
「ギルマス、わかってませんよ。蝙蝠を連れてきてないです。」
サブマスに言われて気づいた。
『あっ、ハートの従魔契約……。』
「すぐ連れてきます!」
「くれぐれも誰にもみられるなよ!」
背中にサブマスの圧のある声が聞こえた。
ムーチーは宿とギルマス部屋を往復した。
部屋の前にいると扉が空いたまま、ルルが入り口で待ってくれていた。
「すみません。連れてきました!」
「さて、勝手なことをしてくれましたね……。」
サブマスの圧は続いた。
「ルル、従魔契約を始めてくれ。」
「はい、ムー君。ギルドカードと蝙蝠ちゃんを貸して。」
端の席でルルは従魔契約を始めて出した。
「はぁ。さて、説明をしてもらおうか。冒険者登録初日から問題を起こして。」
「冒険者登録をして、スキルにテイムがあったので試してみたんです。エヴィー……兎はと村長のゴブリンはダメだったんですけど、この子、ハートは僕の血を飲んでいるからかテイム出来たんです。」
「で、報告は後回しと。所長から聞いて無かったらどうするつもりだったんだい?」
「あの、すみません。隠すつもりはなく……。クエストの報告に来たんです。」
2つのクエスト達成の紙を見せた。
「なるほど……。蝙蝠の件は?」
「研究所を出て、宿に置いてそのままでした。あの……従魔契約はクエスト報告の際に、ルルさんに聞こうとしてました。」
「だそうだ、サブマス。下手な行動を起こしてないからひとまず保留で!受付に戻ってくれ。」
サブマスは渋々戻っていった。




