第13話 キョクタ村とこれから
シンク村を後にした。
『そういえばキョクタ村の捜索隊、誰にも会わなかったな……。』
ムーチーは移動しながら思い出していた。
『ベイキッド、マイラスさん、マルサさん……。』
たった数日前に送り出してもらったのにいろいろありすぎて懐かしく感じていた。
「キョクタ村はどんなところなんだい?」
クライシスが聞いて来た。
「えっと、シンク村と隣村みたいなイメージで規模は同じくらいです。」
ムーチーは答えつつ、違和感が拭えなかった。
『ずっと防護服着てたから分からなかったけど……。女性だったとは!』
思い当たる節はあった、身長が低めで顔立ちが整っている。
声は抽象的でフレンドリーなところが男だと勘違いしていたのだ。
「ギィシャさん、ちょっと気になることが……。」
ギィシャは不思議そうにムーチーの方を見た。
「僕も気になるぞ!仲間外れは良くないな?」
クライシスがすぐに首を突っ込んできた。
ギィシャはタイロとキリザスに目配せをした。
「大丈夫です、近くに生物の気配はないので少し先に進みます。」
タイロが安全を確認し、研究員の2人を連れて話声の聞こえない位置まで距離を取ってくれた。
「あの……、僕がギルドへ行った日に探索隊を作ってくれるって言ってたんです。」
クライシスが「ほぅ!」と顎に手を当てて考え出した。
「ん?翌日にギルド出て、さっきの村で2泊しているのに誰も見ていない?」
「所長の言うとおりだ。団員で村周辺の探索に誰もあってないぞ?」
ギィシャもムーチーが言いたかった意味を分かり、同じく考え、思い出した。
『確か、ギルドでこの2つの村を繋ぐ道に生物はいなかったと報告してたな……。』
「思い過ごしだといいんだけど……。」
ムーチーが思わず、心の声を漏らした。
そのなんとも言えない顔を見てクライシスとギィシャは見合わせた。
◆◇
「ムーチー君、ありがとう。ちょっと予定を変更するよ。」
ギィシャは最悪の事を想定してしまった。
『まさか、キョクタ村に何かあった?』
クライシスはムーチーの肩をポンポンッと叩いて言った。
「何かあっても僕が調べてあげるよ!」
「クライス……、はっ。クライシスさん、ありがとう。」
感謝のつもりが今度は声に出して言い間違えた。
「ぷぷっ!呼びにくかったら所長でもなんでも好きに呼んでくれていいよ。僕は気にしないし。」
ぐっと右手でポーズを取り「ムーチー君はなんて呼ばれているんだい?」と聞いた。
「ムー、って村の皆は読んでました。」
「おけっ!よろしく、ムー!」
クライシスは満面の笑みでムーチーの手を取り、タイロ達へ追いつくために走り出した。
「――副団長、予定変更。タイロを先頭に送る。そして騎士団全員に念話へ。――」
ギィシャはジャッケに念話を飛ばし、すぐにタイロの横へ走った。
「前行って、詳細は念話で。」
タイロは頷き、前へ走り出した。
「――団長より全員へ、キョクタ村の安否を確認したい。タイロを先頭に走りながら探索、1番は生存確認だ!――」
キリザスが追いついて来たムーチーを横目でそっと見た。
『彼が何か気付いたかな?』
隊列はすぐに変更になった。
タイロが先頭を走り、くの字でタイロの探索エリア組は速度優先。端に行くほど慎重に移動を意識した。
「――恐らくキョクタ村に到着……。最悪です、人っ子一人いない。――」
タイロの念話に皆動きが鈍った。
◆◇◆◇
「くそっ。」
ギィシャが険しい顔に変わった。
クライシスは状況をすぐに理解し、ムーチーの頭へ手をポンッと置いた。
「ムー、ここからは僕たちの仕事だ。」
「え?どうゆうことですか?」
ムーチーが困惑する中、ギィシャが答えた。
「キョクタ村に人の気配がないんだ……。調査するからキリザスと待機だ。」
「――ユウラ、シンク村……。いや、ギルマスに報告だ。――」
ギィシャが念話で伝えるとすぐに鳥を飛ばした。
「――団長、家を何個か覗いたけど料理の途中の場所が何か所かあります。――」
「所長、村まで走ります。サーチで一通り調べて欲しい!」
「はいよ!2人とも頑張ってついて来てねー。」
クライシスは研究員の2人に声を掛け走りだした。
『ヤな予感がしたんだ。でも、キョクタ村は無事だと何処かで安心してたんだ!いや、僕はシンク村の人を優先したんだ……。』
キリザスは落ち込んだムーチーを見て、頭を掻いた。
「まぁ、結果待ちだな。」
『慰めるとか性に合わないんだよな。まぁ。坊主の護衛で安全確保か。』
「坊主、道の端に座るか!」
ムーチーは黙って従った。
「――団長!村周辺をシンク村同様、調査します。――」
「――副団長、よろしく。中は私とユウラ、研究員で調査しとく。――」
騎士団は 全員の危機感がマックスになり、すぐに動き出したのだ。
ユウラが村の入口に待機、研究員の3人は村に着くなり、サーチをしていた。
「”サーチ”、”サーチ”、”サーチ”」
ギィシャは研究員の後ろを付いて歩いている。
『まさか、こんなことになるなんて……。』
家の中に入るとタイロの言っていた通り生活の途中で消えた感じがした。
「騎士団長、この料理は一昨日の物ですね……。」
クライシスの言葉に固まった。
「貯砂の初日……、シルク村の次の日ってこと?」
ギィシャは信じられなかった。
『先にこの村に来ていたら救えたかもしれない?』
ギィシャの頭によぎったのはそんなことだった。
「騎士団長、大丈夫です?この村も感染やウイルスはないので、きっと僕達には影響はないと思う。」
「所長、ありがとう。引き続きお願いっ!」
言い残し村を一周した。
ムーチーが来た時に商人が通った場所に来た。
『ここは柵が締まっているから大丈夫かな?』
他に違和感はなく、入口へ戻った。
◆◇◆◇◆◇
『コンコンッ』
ギルマスは窓を見た。
『追加情報か……。』
窓を開けて鳥を中に入れた。
――――
ギルマス様へ
・キョクタ村に人の気配なし。
騎士団 ユウラ。
――――
「最悪だ……。」
ギルマスは急いでペンを走らせた。
――――
・シンク村、キョクタ村の調査が終わるまで調査を続けること。
・ユウラがゴブリンと兎と蝙蝠を操れるかを優先で確認すること。
ギルドマスター タッコル。
――――
すぐに鳥の脚へ付けて飛ばせた。
窓を閉めて机へ戻り頭を抱えた。
『他の村に異常がないか気になる。』
他のクエストにはムーチーみたいな異常なものが無いか再度来ていないか確認したが見当たらなかった。
一方、ギルマスの指示が入った鳥はすぐにユウラの元へ届いた。
「団長、来ました。」
ギィシャは紙を見て固まった……、が少しの間を置いて騎士団と研究員に念話をした。
「――ギルマスからの指示だ。1つ目はシンク村、キョクタ村の調査が終わるまで調査を続けること。キョクタ村をすぐに終わらせよう。――」
「――もう1つだが、 ユウラがゴブリンと兎、蝙蝠を操れるかを優先で確認すること……だ。ユウラ、頼む。キリザスはムーチー君を連れてこちらに来て!――」
ユウラは指示に従い、シンク村へ走り出した。
「坊主、予定変更だ。キョクタ村へ向かうぞ!」
ムーチーは訳が分からずキリザスについて行った。
『あれ?ユウラさんがシンク村に帰っている?』
途中すれ違ったが、キリザスから何も言われなかったので黙ってキョクタ村へ向かうのだった。




