第11話 ギルマスの葛藤
時間は遡り……。
『コンコンッ』
ギルマスは後ろを振り返った。
ギルマスの部屋の窓ガラスにユウラの操っている鳥がいた。
「来ましたか……。」
窓を開けて鳥の脚についている筒を開いた。
――――
ギルマスへ
・ゴブリン確保、ムーチー君が村長と断定。
・村の住人は1人もいないまま。
・団員に身体変化はなし。
騎士団長 ギィシャ。
――――
ギルマスは読み終わると頭を抱えながら呟いた。
「やっぱりか……。」
『コンコンッ』
「ギルマス、クライシスです。」
「待ってた、防備着てたら入っていいぞ!」
『ガチャッ』
クライシスと一緒に2人、完全防備で入ってきた。
「ギルマス、昨日連絡があった通り、検査しますね。」
ギルマスは何も言わずに頷いた。
「"サーチ"、"サーチ"、"サーチ"」
クライシスが3回連続で唱えた。
「昨日ギルドカードで見ましたが何も無いと良いですね……。」
「彼の村全員がモンスター化した可能性も否定出来ない。」
「その場合、その子だけ人のままでもウイルスの可能性がある。との事ですよね……。」
ギルマスは頷いた。
クライシス以外の2人は部屋を回って小声で呪文を唱えている。
「"キュア"、"キュア"」
「"サーチ"、"サーチ"」
1人は部屋の汚染対策、もう1人は部屋の状態を調べていた。
「クライシスさん、部屋は汚染されてないみたいです。」
クライシスはギルマスをしっかり見ていた。
「ギルマスも感染はされてないですね!よかったです。」
「ユウラの鳥は?」
クライシスは同じく、”サーチ”をした。
研究員の残りの2人は”キュア”を続けた。
「鳥も大丈夫っぽいですね。」
「ありがとう、クース。」
◆◇
バサバサッ。
ユウラの鳥がもう1羽止まった。
「えっ?」
クライシスはびっくりした。
「追加情報か……。」
――――
ギルマス様へ
・ムーチー君の連れていた兎ですが、村の住人であることが確定。
・モンスター化だけでなく、モンスター化も確定。
騎士団 ユウラ。
――――
「あぁ、クライシス?これ……。」
先程の紙を渡した。
「謎が増えましたね。あと、ルルさんと食堂はもう終わって問題なかったです。」
「副所長に引継ぎしてクースはシルク村へ向かってくれるか?」
「騎士団と一緒に向かいます。引継ぎして今日中にはシルク村に着くと思います。」
ギルマスは頷き、3人共部屋を後にした。
ギルマスはギィシャに手紙を書き、ユウラの鳥に手紙を付けて窓から飛ばした。
続いてギルマスはギルドカードで、ギルド職員に一斉メッセージを流した。
――――
・私とルルは安全確認のため、隔離。
・食堂も閉鎖。
・何かあればギルドカードにて私に報告。
・騎士団の訓練は増員。
・訓練範囲のクエストの中止。
ギルドマスター タッコル。
――――
報告をすると、ギルマスは溜まっている仕事をした。
ギルド職員がこれを見てざわざわと受付へ集まった。
「どーする?」
「やるしかないでしょ。ね、サブマス?」
皆の視線の先にはムーチーがギルドへ来た日に文句を言った、メガネ男子だった。
「いつも通りにしましょう。基本的にいつも通り、ギルマスへ報告だけして何かあれば私が対応します。」
するとサブマスは「”クリーナー”」と言うと、受付を掃除した。
他の職員は新しいクエストの依頼をギルマスの部屋へ届けた。
クエストの貼っている大きなボードはサブマスの意向によりランクごとに綺麗に並んでいた。
受付の数人が、昨日の内にギルマスが書いた追加クエストをランクごとに並べていた。
横には別のボードがあり、騎士団の訓練の案内。それに伴うクエストが貼られていた。
もちろん右下にはムーチーと一緒にいた兎の捜査願いがあった。
「まもなく時間ですね。」
サブマスが扉を開けた。
待っていましたとばかりに冒険者が最新のクエストを確認しに来た。
◆◇◆◇
クライシスは地下へ行き、研究員の前に行った。
「先程ギルドカードにギルマスから来たと思うが、予定通り今日私達3人がシルク村へ研究に行きます。」
「副所長のラムファー、頼んだ。」
副所長は頷いた。
「ラムファーには後でギルドカードで引継ぎをする。感染の可能性があるのでそのまま行くね!」
言い残すと騎士団のところへ向かった。
――――
ラムファーへ
・ギルマス、受付嬢ルルさん、食堂隔離。
・朝晩、調査すること。
・調査する研究員も隔離対象。
・気になることがあれば何でもギルマスへ報告。
・ムーチー君の血の研究を続けること。
クライシス。
――――
「ははっ、やはりそうですか。」
ラムファーは研究員の3人を選び、隔離の話をした。
晩から開始することを伝えた。
クライシスはギルドの裏口へ回りながら、ラムファーへギルドカードにて引継ぎをした。
「ギルドカードがギルド内でしか使えないのを何とかして欲しいよ……。」
ギルドの裏口を空けながらぼやいた。
「まぁ、使えるだけ便利ですけどね!」
クライシスは笑いながら「使えなかったら地獄だね。」と言った。
騎士団の屯所へ歩きながら考えていた。
「ギルドカードもまだまだ改良の余地ありだね!」
クライシスは1人で納得をぼそぼそと考えていた。
「所長、着きましたよ!」
騎士団の屯所へ来ると既に騎士団が待機していた。
◆◇◆◇◆◇
騎士団とクライシス達研究員の第2班がシルク村へと進んでいった。
騎士団は2班。内訳は戦闘員3人に騎士団の研究員1人と2人。戦闘員1人はギルド研究員の3人についている。
クライシス達は真ん中で一番安全な位置に陣取っていた。
ギィシャ達とは別ルートをあらかじめ指定されていた。
その日中にシルク村へ着いた。
「団長、到着しました。」
入口で晩御飯を作っていたユウラ、ギィシャとムーチーは昨日の蝙蝠について話していた。
「お疲れ!騎士団はユウラからご飯食べたらすぐ、副団長に合流だ。」
「騎士団長、お久しぶりです。クライシスです。」
「所長、研究員の人もギルドの研究員と一緒にご飯食べてから動ける?」
「大丈夫ですよ。」
騎士団の戦闘員の7人はご飯を食べ、すぐにジャッケに合流した。
「研究員組はこっちでいいか?」
ギィシャが伝え、ギルドと騎士団の研究員6人、ムーチーと8人でまとまった。
「食べながら聞いてほしい。昨日新しく蝙蝠もいるんだ、一応問題ないけど確認して欲しい。」
「騎士団長、その蝙蝠も村人ですか?」
ギィシャはムーチーの顔を見てから答えた。
「背中にハートのマークがあるから可能性はあるとは……。ピンク色なんでムーチー君と村人の可能性があることは先程話していた。」
「分かりました。よろしくムーチー君!」
「ギルド研究所のクライシス所長だよ。」
ギィシャが説明をし、2人は握手した。
研究院組もご飯を食べ終わると、ムーチーの家に寄り、ムーチーを家に入ってもらい、研究員組で村長の家へ向かった。
「この中、全員縛っているから。」
ギィシャが説明をし、扉を開けた。
「探索組は今日中に終わると思う。明日の昼ご飯食べた後、キョクタ村に移動。」
「分かりました。何かわかれば連絡します。」
「キョクタ村でも調査になると思うので無理のない範囲で!」
そしてシンク村での最後の夜が更けていった。
『あの蝙蝠、誰なんだろう?ギィシャさんにいろいろ聞かれたけどさっぱり心当たりないんだよな……。』
ムーチーはピンク色の蝙蝠を思いながら眠った。




