第10話 不安ごと
ムーチーはご飯を食べ終わるのをユウラが待っていた。
「ムーチー君、落ち着いたら村の家の調査していきましょう。」
「私はここで副団長と念話しながら、入口を監視しておくよ。」
ムーチーは水を飲み、ユウラと一緒に家を回っていった。
どの家も荒らされた様子は見当たらず、大した収穫もなかった。
「団長、こちらは収穫無しです。明日で目途が付きそうです。」
ギィシャは険しい顔をしていた。
「村の外も収穫は無し、こっちも明日には終わるだろう。」
「あと、鳥が帰って来てる。」
ギィシャは鳥を指さしながら晩御飯を既に用意していた。
『ギィシャさん、段取り良いな!』
ムーチーは関心をし、ユウラは頷いて鳥の方へ走って行き、足の手紙を解いた。
紙をそのまま渡し、ギィシャは内容を確認した。
――――
・シンク村の調査を最優先。
・終わり次第キョクタ村の調査。
・騎士団とギルドの研究員とをすぐシンク村へ派遣。
・騎士団の別動隊を2班追加派遣(研究員の安全のため)。
・騎士団、ムーチー君、兎、ゴブリンは検査をクリアしないと隔離。
・ユウラがゴブリンと兎を操れるか確認。
◎検査に問題が無い場合
・別動隊にて兎とゴブリンはギルドにて管理。
・ムーチー君はモンスター化の可能性があるので引き続き騎士団にて監視。
・ギルドでは食堂とルル、私を隔離し、感染ウイルスが無いか先に確かめている。
・結果が分かり次第もう1匹の鳥で結果を報告する。
ギルドマスター タッコル。
――――
◆◇
ギィシャは渋い顔をして頭を掻いた。
「やはりか……。」
『なんか嫌な予感がする。』
ムーチーはギィシャの行動で内心、心配になった。
「団長、ご飯ありがとうございます。一先ずご飯食べましょう!」
ユウラも嫌な予感はしたが、ムーチーの前なのであえて明るく振舞った。
「あぁ、そうだな。」
ギィシャはご飯をよそって、パンを一緒に渡してくれた。
『今日はシチューみたいだ。』
「美味しそう。」
「フフッ、団長のご飯はレアで特別美味しいよ?」
ユウラは笑いながら答えた。
「あれ?声に出てました?」
ムーチーはボソッと無意識に呟いたことに恥ずかしくなった。
「いただきます!」と誤魔化してシチューを一口食べた。
「ほんとだ……、美味しい!」
ムーチーは目をキラキラさせながらギィシャを見た。
今度はギィシャが恥ずかしくなり、そっぽを向いた。
「でしょ、でしょ?」
ユウラは自慢気に答え、ユウラも幸せそうにご飯を食べだした。
「ユウラ、私は食べ終わり次第、皆にご飯を配ってくる。」
と言うと、急いでご飯を食べて、そそくさとその場を離れて行った。
「行ってらっしゃい!入口の監視は任せて下さい。」
というと『ピーッ』と指笛を吹いた。
「うわっ!」
音もなくムーチーの後ろから昨日の梟が現れ、びっくりしてご飯を落としそうになった。
「ごめん、ごめん。」
ユウラは脅かしたことに誤り、梟に何か伝えるとそのままどこか飛び立った。
「彼に入口周辺を飛んでもらっているから何かあったら知らせてくれるよ!」
その言葉にムーチーは少し安心し、ギィシャの美味しいご飯を落ち着いて食べ続けた。
「ごちそうさまでした。」
ユウラが先に食べ終わり、配達していた鳥の元へ向かった。
「今日はありがとね!」
優しい声で1匹の鳥を撫でた。
「ユウラさんって死霊術師ですよね?」
「そうだよ!やっぱりこの子達が気になる?」
「はい……。」
ムーチーは返事だけして言葉を濁した。
「言いたいことは分かるよ!死体なのにまるで生きてるみたいでしょ?」
『図星だ……。』
「よく聞かれるからね、気にしなくていいよ!」
ムーチーの困り顔を見てユウラは慰めた。
「私は特別で意志が通じれば生きてても操れるんだよ、あとはオーウェドが凍らせて生きているときと同じ条件にしてくれるんだ!」
ユウラは再び自慢気に答えた。
「まぁあたし自身、死体が苦手だから極力操っていないときはオーウェドに凍らせてもらうけどね。」
と笑いながら答えてくれた。
◆◇◆◇
ユウラの魔法の話を聞いていると時間があっという間に過ぎて行った。
「おかえりなさい!」
ユウラの声で後ろを見ると、知らぬ間にギィシャが帰って来ていた。
「ギィシャさん、シチュー美味しかったです。」
ムーチーは無邪気に笑いながらお礼を言った。
「お粗末様。」
ギィシャはまた照れながら頬を掻いて誤魔化した。
「ギルマスの報告は明日伝える。明日の昼頃には研究者が来ると思う。」
「研究者?」
ムーチーは不思議そうに聞き返した。
「モンスターや動物化しないかの研究だ。村の調査が終わり次第協力して欲しい。」
ギィシャは申し訳なさそうに言った。
「そうですよね、僕が人のままなのが異常かもしれないですよね……。」
「ムーチー君だけじゃなく、ギルマスの判断で私達も対象だ……。」
『鳥が1匹帰って来ていないことを思えば……。』
「感染ですか……。」
「ギルドでは食堂とルル、ギルマスが先に研究している。」
『思ったより大ごとだ……。僕が原因で皆がモンスター化?』
ムーチーは嫌なことを想像してしまった。
「ムーチー君がモンスター化していないことは何かしらの抗体があるのかもしれない。」
「希望の星じゃないですか!」
ユウラはムーチーを不安にさせない様に言った。
「私たち騎士団も今のところ異常はない。安心して今日はもう寝ておいで。」
ギィシャはそう言い、ユウラへ目配せをした。
「じゃあ、家に向かおうか。」
ムーチーは頷き家に帰った。
「家の前に梟いるから何かあっても大丈夫だよ。」
ユウラは家の中に何もいないのを確認だけして入口へ戻っていった。
◆◇◆◇◆◇
「ホォー!」
夜ムーチーが寝ていると外で梟が鳴いた。
「何?」
ムーチーは飛び起きた。
枕元に置いていた木剣を持って扉へゆっくり近づいた。
『コンコンッ』
「入るよ?」
『ギィシャさんの声だ。』
ムーチーは安心し、扉から少し離れた。
「どうぞ。」
ゆっくりと扉が開いた。
ろうそくを持ったギィシャが入ってきた。
「さっきの鳴き声で起きたかい?」
ムーチーは聞かれて頷いた。
「原因はこれだ。」
ギィシャの指差した先は扉の外側にぶら下げている木だ。
『マーシャルが定期的に好感してるやつだ……、何かぶら下がっている?』
ムーチーはゆっくり近づいた。
「ピンクの蝙蝠?」
「私がつついても反応が無いんだ、ピンクで住民に心当たりはない?髪の色だと思う。」
「この村にピンクの髪の人はいない……です。」
「キョクタ村は?」
『この村だけじゃなくキョクタ村?あれ、捜索隊に会っていない!』
ムーチーはキョクタ村の名前を聞いて思い出した。
「ギィシャさん、キョクタ村でもいないですよ、それよりキョクタ村の捜査隊が来ているはずなのに見てないですよね?」
ギィシャは答えずに扉へ向かい、左手で蝙蝠を捕まえた。
「大人しい……。」
右手を剣から離し、蝙蝠を調べた。
「全身ピンクで背中にハートのマークがある。」
ギィシャは蝙蝠の両翼をつまみ、広げて背中をムーチーへ見せた。
「背中にハートも心当たりがないです。」
「そうか、今晩は村長の家に入れておくしかないか……?」
ギィシャは考えながら独り言を呟いた。
「起こしてすまない、明日研究員に見てもらう……。おやすみ。」
ギィシャはそう言い残して家を後にした。
『また動物化?エルヴィルと同じなのか?』
ムーチーはもやもやしながら眠りについた。




