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第9話 新事実


 タイロとムーチーは朝ご飯を食べ終わり、村の家を順に見て回った。

『夜の間に家の中を見て回ったけどリーツァ姉さんとライカークさんの荷物もそのままだったな……。』

 ムーチーは昨日の夜、家の中を調べていた時のことを思い出し違和感を覚えた。


「タイロさん、1回家に帰ります!」

「そうだな、もう昼だし飯を取りに行って隊長と交代する。」

 タイロは少し不思議に思ったが、『なんか気付いたとしたら隊長のほうがいいだろ。』と感じたのだ。


「じゃあ、また後でな!」

 タイロは干し肉と水を取り、入口へと向かった。

 ムーチーは頷き家の扉を開けた。

「やっぱりだ……。」

 ムーチーの違和感は間違いではなかった。


 ムーチーが扉を開けたまま固まっていたので、ギィシャは声を掛けた。

「ムーチー君、何か?」

 タイロからは何か気付いた可能性があることは、前もって交代の際に聞いていたのだ。

 

「ギィシャさん……、リーツァ姉さんとライカークさんの武器がそのままなんです。」

 ギィシャの目の色が変わった。直ぐに首からぶら下げている笛を鳴らした。

 《ピィー!》


 ムーチーは急に背中越しに笛の音を聞き、ビクッとした。

「ムーチー君、あの二人が武器を持たずに村を離れるはずがない。」

『あっ、やっぱり二人の事をギィシャさんは知っているんだ!』

 ギルド内での会話で何となく感じていたが、確信に変わった。


「ムーチー君、状況が変わった。団員全員戻ってくるから、もう一度村の再調査だ!」

「あの、団長はリーツァ姉さんとライカークさんを知っているんですか?」

 ギィシャは眉頭を少し上げた。困った顔だ。

「全員そろってから話をする。入口へ移動する。」


 ギィシャは2人の武器を持ち、重い足取りで村の入口へ向かった。

 ムーチーはただ黙ってついて行くことしかできなかった。

 

 ◆◇


 村の入口に全員が集合した。騎士団は皆ギィシャの持っている2人の武器を見つめていた。

「ユウラ、例の文をギルマスへ送ってくれないか?」

 ジャッケが開口一番に発し、例の文とやらをユウラに渡した。


 ユウラは受け取り、村の入り口に待機させていた小さな鳥の脚に縛り付けた。

 鳥はすぐに飛び立った。

 その姿を確認するとギィシャとジャッケは見つめ合い、ジャッケは頷いた。

「ムーチー君、先程の話だが……ライ。ライカークは騎士団の一員だ。」


 ギィシャの言葉にムーチーは動揺を隠せなかった。

「リーツもルシャギルドでは腕の立つ冒険者で、ライの婚約者と言うこともあり騎士団の仕事をたまに手伝ってもらっていたんだ。」

「このシルク村の話をよく聞かされていたから君の事も少なからず知っているよ。」

 まさに驚きの連続だ。

『まさかこんな近くに居たのに、連絡の1つくらいくれたらよかったのに……』


「リーツには止められていてね、きっと飛び出した手前気恥しいんじゃないかな?」

 ギィシャはムーチーの思いを代弁するかのように答えてくれた。

「団長、その……2人の武器があるってことは?」


 ギィシャは頷きムーチーを見た。

「村の異常は間違いないね、ムーチー君が無事なのは謎だが他の村人は村長と同様……モンスターになった可能性が高い!」

 ムーチーは自分の体を見下ろした。

「僕の体は大丈夫なんでしょうか?」


「ムーチー君、少し体を確かめたいから兎を団長に渡して、どこか家の中に入って確認させて欲しい。」

 ジャッケが伝えると大人しく兎をギィシャに渡した。

 兎は暴れることなくギィシャの鎧の腕に収まってくれたようだ。


 ◆◇◆◇


 1番近くの家にジャッケとタイロと一緒に入り、服を脱がされ、身体検査を受けた。

「身体的には違和感ないな……、何かいつもと違うことはないか?どんなに細かいことでもいい。」

 ジャッケに聞かれてもムーチーにはいつもと何ら違いはなく首を横に振った。


「分かった、一先ず問題なしか。服を着てくれ、協力ありがとう。」

 ジャッケにお礼を言われると思ってなかったので服を着ながら驚いた顔を隠していた。

「あっ!」


 ムーチーが服を着た瞬間、何かに気付いて声を上げた。

 危険と察したタイロが剣に手をかけた。

「ジャッケさん、さっきの兎ですが……。」


 ムーチーは信じられないと言葉を詰まらせた。

 ジャッケはムーチーの目の先を見ると部屋があった。中を覗くとムーチーの言いたかった言葉が分かった。

「この蝶ネクタイ、あの兎の付けてるやつの色違いか。」


 タイロは剣から手を放しながら衝撃を隠せなかった。

 ムーチーは頷きながら答えた。

「まだ6歳のエルヴィルの部屋です。目が黄色なのでほぼ間違いないかと……。」


「なんてことだ……、団長に報告するしかないな。」

 3人は重い空気のまま外に出た。

 タイロがムーチーの肩に手を乗せて励ました。


 ジャッケはギィシャに先程の件を伝えに向かった。

「なっ、この兎が?だから登録されていなかったのか……。」

 ギルドでの出来事、受付嬢のルルが調べていた従魔登録の事だ。


 報告を受けたギィシャが騎士団に向かって言った。

「この兎もこの村の住人であることが分かった。ユウラ、追加の文をギルマスに送れるか?」

「もう1匹いるので大丈夫です。」


 ギィシャは急いで紙に追加の内容を書き、ユウラに渡した。

 先程と同じ鳥がいつの間にかユウラの横で待機していた。


 ◆◇◆◇◆◇


 ユウラが2匹目の鳥を飛ばし終えるとギィシャが重い口を開けた。

「村長のゴブリン化。6歳の子供の兎化。ここの村人はモンスターか動物になっている可能性が高い。」

「そしてムーチー君みたいに人のままの可能性もあるが、原因が不明だ。」

 全員がムーチーを見た。


「ギィシャさん、僕はどうなるんですか?」

 不安になりながら確認した。

「一先ず監視はする。明日騎士団の研究員が来るので今日は大人しくしていて欲しい。」


「副団長、プランAに変更。村には私とユウラ、ボッシュのみだ。」

 ジャッケは頷き呼ばれなかった騎士団を引き連れて村の外へ向かった。

 ギィシャとユウラ、ムーチーは野宿場所へと向かいお昼ご飯を食べた。


 ギィシャは定期的にジャッケと念話を行っているみたいだ。

 ご飯を食べるのを止めているので分かりやすい。

 そんな心配そうにギィシャを観察しているムーチーを見てボッシュは伝えることにした。


「プランAはタイロの探索を村から離れた位置にして一列に並び、横で副団長が念話で団長に伝える。」

「この作戦は夜通し行い、村一週可能な限り探索する。緊急の対策だよ。」

 ジャッケとの念話が終わったのかギィシャが補足した。

「魔物も、動物も攻撃せず捕縛命令しているから見つかればムーチー君の出番だよ。」

「村長と兎みたいになにか目印があればいいんだけどね……。」


 そう、二人の共通点は人の時の目印が何かしらあるということだ。

 村長ゴブリンは服装、髪型、髪色。

 兎のエルヴィルは蝶ネクタイと黄色い目。

「他の村人が人のままなのか、目印を残して別の姿になっているか。……無事だといいのだけど。」

 ギィシャが呟いて静まり返った、事態は最悪の展開に向かっているとムーチーも察していた。

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