ルード・ドーコカーノと言うキャラクター
05
『フォウアード戦記』と言うゲームに登場し、無印と初代のラスボスでもあったルード・ドーコカーノという男は、どんな人間なのか。
悪逆非道の暴君。
卑怯卑劣な外道。
肥えた豚。
様々な評価がされるだろうが、俺に言わせるとルードは可哀想なクソガキだ。
間違っても可哀想な子どもや可哀想な男などではない。
ルードという男は屑野郎と言って過言ない言動をする男であり、自己中心的な考え方の持ち主なので、何の罪もないのに周囲から責められるようなただ可哀想なだけの存在ではないからだ。
だがしかし、ルードという男はクソ野郎ではあるが、彼自身の犯した罪の大きさを考えれば、殺されるのは間違っているんじゃないのかと俺は思う。
公式の設定では、父母が急逝し、ルードが王位を継承したのはわずか3才のことだ。
当然、3才の子どもに政治のことなど何も分かろうはずがなく、後に宰相となるマイザーが――驚くべき事に齢20の若さで――摂政となることで国を保ったとされている。
しかし、まともな生活が送れなくなるほどの重税、度重なる臨時徴税、いくつもの悪法の制定に加え、獣人やエルフ、ドワーフなど亜人と呼ばれる種族の迫害など暴政の限りを尽くし、辛うじて国としての形を保っていたに過ぎない。
その結果が、無印ではレジスタンスの決起であったし、初代ではマカルファ公爵家主導によるクーデターが起こされた。どちらも、国王の死によって物語は閉じられている。
無印では分からないが、初代に至っては学院卒業の直後、19才と言う若さでこの世を去るのだ。
暴政を敷いていたのだから反乱を起こされるのは当たり前?
他者を虐げていたのだから復讐されても文句が言えない?
確かに、物語に登場する暴君の末路としては、当然のごとくありえることだろうし、現実の歴史を振り返ってみても、腐った王を革命によって処刑した例は存在する。
そうやって考えれば、ルードだけ特別酷い扱いがされたとは言えないだろう。
だがしかし、それはルードが国王である父の下で帝王学やら王位を継ぐのに相応しい教育を受けた上でそんなことをしたのだったならばの話だ。
よく考えてもみて欲しい。
王位を継いだのは3才だ。
3才だぞ?
3才児に何が出来るっていうんだ?
3才児の暴君なんていると思うか?
「贅沢ちたいから、税金を今の倍に増やすのでしゅ!」
とか、そんな命令下す3才児がいると思うのか?
常識的に考えて、そんなことはあり得ない。
ならば、どんな話なのかと言えば、無印では詳しい設定集なんてものは存在しないので確かなことは言えないが、初代では10年以上にも及ぶ暴政を嘆いたマカルファ公爵家が義憤に駆られて革命を云々と書かれている。
はい、ここでストップ。
10年以上の暴政ってことは、初代でルードが死ぬ10年前以上前ってことだな。
そうすると、暴政が始まったのは19才で死を迎えるルードが9才の頃だ。
いや10年以上なんだから、9才よりもさらに幼い頃からって事になる。
暴政が始まった時にルードはいったい幾つだった?
5才か? 6才か? 4才かはたまた7才か?
暴政が始まった時のルードは最高でも9才なんだぞ?
「よし、今日から獣人やエルフ、ドワーフたち亜人を自由に奴隷にしていい法律を作れ」
9才児がこんな暴君としか思えないような政策を口にしたとして、誰がそれを実行するっていうんだ?
どう考えたって、9才児が政治の全権を握っているなんてありえない。
だったらどうしてこんな政策が実施されたかと言えば、ルードの後見人――摂政であるマイザーが実行したんだろう。
万が一にも、ルードに政治の全権があったとして、そんな政策を考えつくような教育をしてきた周り――特に摂政という幼い王を導く代表であるマイザーが悪い。そもそも、そんな間違った政策を修正するために摂政って存在がいるんじゃないのか?
何が言いたいかといえば、つまるところ悪いのはルードじゃなくて、無印で裏ボスだった宰相以外に考えられないって事だ。
この宰相、三十路過ぎとは思えない20代前半ぐらいに見えるイケメン野郎でフ女子の人気がクソ高い。
だが、無印を知っている人間には一番嫌われているキャラだろう。
無印の裏ボスであり、裏ボス戦突入前の会話で――
「よくも私が育て上げた陛下を!」
――とか言いながら襲いかかってくる男だ。
だが、リメイク版の初代では裏ボス設定がなくなった結果、Ⅱ以降でのマイザーは【旧王国の良心】なんていう二つ名を頂戴している。
生活が立ち行かなくなるような重税と亜人への差別、そう言った暴政という他にない政をルードは行った。
マイザーはそんな暴政を止めることこそ出来なかったが、少しでも国民を守れるようにルードを説得し、税の緩和や亜人を奴隷だからといって遊び半分に殺させない法を作らせた。ドーコカーノ王国の貴族でありながら、マカルファ公爵家と同じく民を思いやる本物の貴族だとして、Ⅱ以降のシリーズすべてに国王となった主人公の右腕として登場する。
だがな? よく考えてみて欲しい。
【旧王国の良心】と呼ばれていたのは、幼い頃からルードの下で摂政を勤め上げ、成人した後には宰相として暴政になんとか歯止めをかけようと奔走していたからだとされている。
うん、おかしいよね? もう、ふざけんなとしか言えない。
設定段階で矛盾しかないんだよ。
3才で王位を継承した幼い王の代わりに政治を執り行う摂政だ。
言うまでもないことだが摂政、宰相ってやつは基本的に偉い。
宰相なんて存在は、現実とは多少違うもののこういったゲームや物語においては国王を除いた政治のトップぐらいの扱いをされるし、摂政なんてのはそのものずばり国王の代理で政治を行うマジモンのトップだ。
宮廷での権力闘争なんてものもあるだろうが、少なくとも若くして摂政になれるぐらいの権力基盤と人脈を持っているわけだ。
摂政なんて言う、王の代理に選ばれる男が10才にもならない子ども1人説得できないわけがない。
だったら、どうして重税や亜人への差別が認められたのか?
どう考えたって、幼い王をスケープゴートにして影からあんたが暴政を敷いていたんだろ? ってなるわけだよ。
な? どんだけイケメンだろうが、ふざけんなって思うだろ?
【旧王国の良心】どころか、【旧王国の諸悪の根源】だよ。
ルードなんかよりも先に、まずこいつ倒せよ。って思うんだけど、初代でちゃっかり罪をルードに押しつけ、Ⅱ以降はその腹黒さは隠しきれないものの、ルードの影に隠れて好き放題していた本性は隠して主人公の補佐をするっていうね。もうね。なんていうか、酷い奴だ。
はぁ……。
さて、俺はそんな可哀想なクソガキことルード・ドーコカーノに転生してしまったわけだが、本当に俺が可哀想すぎて涙が出てくる。
まず第一に、このままゲーム通りの人生を送れば革命が起きて殺される。
これを回避するためには、まっとうな政治を行えばいい。すごく簡単だと思うだろ?
そこにやってくる第二の問題は、暴政を敷くのは俺じゃなくて宰相だって点だ。
つまり、俺が暴政を避けようとしても、そもそも俺に避けるっていう選択を選ぶ権利がないってことだな。
あれ? 詰んでる?
いやいや、待て待て。
落ち着け俺。
このまま革命からのスケープゴートで首チョンパはなんとしても避けたい。
どうする?
変な法律を提案されたら、天然路線でなんとか口を挟む努力をしてみるか?
「税金増やすの? なんで? 国民の生活とか大丈夫なの?」
とかなんとか言えば、俺は反対していたっていう事実を見せられる。
マイザーが実際に法律を定めた後だって、世話役のメイドやら、道行く騎士に世間話感覚で印象づけることは可能だろう。
うん。一応、これは対策の1つとして考えておこう。
他は……宰相殺っちゃうか?
幸いにもこれはゲームじゃなくて現実だ。HPが設定されていないなんていうバグはありえないから、殺せないってことはないはずだ。
暗殺は結構いいかもな。
自分の命が大事だし、あの腹黒が死ねば俺だけじゃなくてこの国も平和になるはずだ。
問題は、どうやってそんなことを実行するかだが……まぁ、それは追々考えていこう。
あとは……人脈作りだな。
子どものうちからゲームで敵になる貴族とも親交を持って、いざという時こちらについてもらえるようにしよう。
最大の敵はマカルファ公爵家だが……ちょっと遠いとは言え親戚なんだし、ちょいちょい会う機会もあるだろう。少しずつ信用してもらえれば、革命なんて起こさないかも知れない。
他にも何か良い方法があればいいけど、俺の頭じゃ思いつかない。
正直、あの腹黒宰相と頭脳勝負になれば、勝ち目はないんじゃないのか?
こっちが有利な点は、俺が子どもだから油断してもらえるだろうってことぐらいか……
宰相を直接どうにかするなら、俺が子どものうちが勝負だな。
出来ることなら平穏な日々を過ごしたい……
前途多難で、本当に泣きたいよ。ちくしょうめ。




