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とある男性の転生

04

 『フォウアード戦記』と言うゲームをご存知だろうか?

 ある意味で非常に有名なシリーズタイトルであり、PCシリーズ最新ハードのローンチソフトになるくらいなので名前ぐらいは誰でも知っているとは思う。

 俺? 俺はこのゲームについてけっこう詳しい方なんじゃないだろうか?

 なにせ無印・・から最新作までやり込んできたくらいで、ただ1つの例外を除いてスチルや各ルートのエンディング、アイテムのコンプは言うに及ばず、初期装備限定プレイやイベント戦以外逃走する最短プレイなど様々な縛りプレイも楽しんできた。

 様々なゲームが世に溢れる中で、ほとんどこのシリーズだけをひたすらにやりこんでいるのは俺ぐらいなんじゃないだろうか?

 それは俺にとってフォア戦というシリーズタイトルが非常に思い入れが深いものであり、俺にとってテレビゲームと言えばこれと言えるぐらいにのめり込んでいるからだ。

 なにも思い入れだけでプレイしているわけではない。

 このフォア戦というシリーズは、無印を除けば神ゲーと言う評価が大勢を占めているほどに面白いゲームであることも理由に挙がるだろう。

 さて、神ゲー、糞ゲー、良ゲーなどなど様々なタイトルに多くのユーザーが思い思いの評価をつけるが、無印を除けば神がかった面白さのフォア戦というタイトルで、除外されていた当の無印はどうなのかと言う話だ。

 無印の評価は糞ゲーと言う他にない。

 少なくとも、俺は6つもシリーズが続いている作品という括りならば、キングオブ糞ゲーと言っていいと思っている。

 そんな括りがなかろうと糞ゲーの中でもかなりの糞ゲーだろう。そして、俺が生まれて初めてプレイしたゲームでもある。

 無印のフォア戦はどんなゲームかと言えば、ファミリーステーション用の極単純なRPGとして発売された『フォウアード戦記』と言う『新』や『Ⅱ』など何も冠されるものがないゲームだ。

 ファイナルクエストやドラゴンファンタジーのような現在でも続編が作り続けられている超人気タイトルの人気にあやかって作られた、吹けば飛ぶような弱小会社の作品であり、RPGの熱が高まる中での後発タイトルでありながら革新的なゲームシステムも後の作品へ影響を与えることもないただの駄作。

 ラスボスを倒してキチンと物語が完結していたならば、その評価で済んだ。

 そう、それだけで済めば、面白いとは言えずとも糞ゲーなどと評価されることはなかっただろう。

 ラスボスを倒しても中途半端で不完全燃焼感が強いストーリーは、真新しさをはき違えていたためにある意味斬新ではあるものの――え? どんなストーリーかって?

 主人公は悪政を敷く王国に反抗するレジスタンスのリーダーで、盗賊や山賊なんかを倒して民衆を救いながらラスボスである国王を倒すって流れだな。

 何がすごいって、昔のゲームなんて子どもをメインターゲットにしていると言うのに、ストーリーが重すぎると言う点だ。

 攫われたお姫様を救い出すわけでも、伝説の勇者の血筋でもなんでもないただの村人、しかもレジスタンスが主人公で、ストーリーはとにかく重い、暗いと言う斬新さなのである。

 しかし、そんなストーリーだが、世界観や設定などは子ども向けとは到底言えないが、逆を言えば中高生や大人には読み物としてかなり面白い方だと思える。出来自体は悪くないのだ。

 そして何よりもツッコみどころ満載な点は、当時のゲームと差別化を図るためなのかモンスターという存在がいない世界観だったおかげで、敵は全て人間・・なのだ。

 どうすごいのかわからないか?

 RPGでレベルを上げるためにはどうする?

 敵はすべて人間なのだから、何百、何千という盗賊、野盗、怪盗、海賊、山賊などなどと名付けられた色違いなだけでグラフィックを使い回した人間をひたすらに倒すわけだ。その数は、横スクロールゲームでボス戦までに倒す雑魚キャラの数など比較にならない。

 国民がいったい何人いるのかわからないが、外を歩けば賊が闊歩し、立ち寄る街や村の人口を明らか超える賊を倒すのだ。

 人口に対する犯罪者の割合とか、そもそもの人口とか、この敵はどうやって生活しているのかとか色々どうなってるんだって子供心に思ったもんだよ。

 まぁ、今でこそ無双系のゲームなんかだと何百、何千と敵を倒すゲームって言うのは珍しくないが、結構丁寧に作り込まれた世界観で、こんなツッコみどころ満載の設定にしてしまったのはマイナスだと個人的に思う。

 さて、そんな世界観、設定で作られたストーリーのどこが不完全燃焼なのかと言えば、ゲームを進めていくと会話の節々に強大な敵を思わせる発言やストーリーに大きく関わりそうな謎のような発言があるのだが、普通はラスボスを倒すことで全てが明かされるものだと思う。

 そう、不完全燃焼と感じるのは、それらが一切解決しないからだ。

 言い方を代えれば、伏線が回収されないとも言える。

 強大な敵=ラスボスと思うかも知れないが、ラスボスである国王はクソ弱い。

 どれぐらい弱いのかと言えば、道中で戦う中ボスを倒したパーティならば3ターンほどで倒せるぐらい弱い。

 レベルカンストさせなくても、かなり上げとけば1ターンでも倒せるぐらい弱い。

 むしろ、城内でエンカウントする騎士とかの方がよっぽど強いっていう弱さだ。たぶんあらゆるゲームの中で最弱のラスボスなんじゃないだろうか?

 えーと……ああ……それで、何の話だっけ?

 ああ、そう。複線が回収されないって話だ。

 ラスボスを倒しても複線は回収されないんだが、ラスボスの次がいるおかげで複線が回収される希望は残された。

 と言うのも、このゲームには裏ボスって奴が存在するんだが、それを倒せば複線は回収されるだろうと言われている・・・・・・

 なぜ推測なのかと言えば、裏ボスはどうやっても倒せないのだ。

 レベルをカンストさせていても、最強装備を揃えても、どんなアイテムを使っても裏ボスが倒せない。

 極端な話をすれば、チートコードを使っても倒せないのだ。

 なぜかって?

 裏ボスにはHPが設定されてないからだよチクショウめ!

 ネットなんてものが広まっていない時代、子ども達は様々な情報を持ち寄ってお互いのゲーム攻略を助け合っていたが、古い上に不人気タイトルなのでそんなことも出来ず、ただ1人で黙々と攻略法を試行錯誤していた小学生時代。

 ネットを知って、ゲームの情報サイトや掲示板で情報を得ながら、最新のゲームなどには目もくれずに試行錯誤した中学時代。

 ここまでは良かった。未来があると信じられた。

 このゲームを攻略せずに他のゲームなんかできるかとムキになってたのも今ではいい思い出だ。

 中学卒業する頃、どうやってもクリアできなかったところにチートコードの存在を知った。そして、裏ボスにHPが設定されておらず、どうやっても裏ボスは倒せないのだと言うことも同時に知った時の絶望と言ったら筆舌に尽くしがたいものがあった。

 それまで見もしなかったゲームの評価サイトを見てみれば、ボロクソに叩かれていて、中には制作会社に問い合わせたと言う書き込みもあったのだが、ゲームはクリアできると言う対応をされたとあり、それがさらに火に油を注ぐ形で怒りの評価で溢れていた。

 それからしばらくはこんなゲームは二度とやるものかと放り出して、他のゲームも色々とプレイすることにしたんだが、これが俺が唯一フォア戦以外をプレイした期間だろう。

 そうして他のゲームをやっていると、改めて思わされたのはフォア戦と言うゲームはストーリーは良かったと言うことだ。そして、なおさら裏ボスを倒せないことが残念でならないと思わされる。

 そう言ったちょっとしたモヤモヤを抱えて高校生活を送っていると、ある日ゲーム雑誌で紹介された新作ゲームに1つの光明を見た。

 PCPで『新フォウアード戦記』と名を改めてリメイクされると言う情報だ。

 不人気タイトルだったはずが何故リメイクされるのかと疑問に思ったものの、リメイクされるならばきっと裏ボスをきちんと倒せるようにしてくれるはずだと淡い期待もした。

 しかし、何を血迷ったのか世界観とラスボスが国王であることは変わらないもののゲームシステムから何からすべてが一新され、そもそものジャンルすらRPGから育成シミュレーションに変わっている始末だ。

 そして、何よりも重要なのが、リメイク版では裏ボスの存在がなかったことにされていることだろう。

 初代のクリアに情熱を燃やしていた人間は皆怒り狂ったが、ただでさえ古い上に不人気であった無印の存在を知る者は少数だった。

 さらにリメイク版がけっこうなブレイクを果たしてしまったものだから、ユーザー全体の割合で初代を知る者は非常に小さなものとなってしまったのだ。そのおかげで、裏ボスに関する苦情は取り合われることもない。

 こうして、きちんとストーリーが成立しない、裏ボスが倒せないなどの理由から無印のフォア戦は糞ゲーと呼ぶ他にない作品に成り下がった。

 絶望し、不満も多くあったが、リメイク版自体は非常に面白い作品だったこともあって俺はフォア戦にのめり込むことになったわけだ。

 え? 強大な敵や謎なんかの伏線はリメイクしたことで回収されなかったのかって?

 世界観やラスボスこそ引き継いでいるものの、RPGから育成に変わったことで、レジスタンスとしての活動ではなく無印では描かれなかった学園編がメインになったんだぞ?

 会話をするはずだった中ボスなんかもみんなリストラされてしまったので、伏線だった会話自体がなかったことになっているのだからリメイクされても回収されるわけがない。

 そして、人気が出てシリーズが続いていくと、無印を知る者もフォア戦の中で無印は黒歴史みたいななかったものだと考えて、次第にその話題に触れることはなくなっていった。

 俺も、正直、無理矢理自分を納得させてなかったものとして扱ったよ。

 が、今ではそれを深く後悔している。

 何が何でも無印をクリアしておくべきだった。いや、クリアは不可能だったんだけどな。

 さて、なんで俺がこんなことを考えているのか、だ。


「これで王も王妃もいなくなった。私が立派に育てて差し上げますよ。可愛い可愛い私の陛下」


 寝たふりしている俺のベッドの横で腹黒宰相こと無印の裏ボスがものすごく悪い笑みを浮かべているからです。

 そう、何故か分からんが、俺は無印こと『フォウアード戦記』と初代こと『新フォウアード戦記』でラスボスの国王ルード・ドーコカーノに転生してしまったのだ。

 国王に転生したんだから嬉しいだろうって?

 ラスボスだぞ? 殺されることが決まってるんだぞ?

 詰んでるじゃねぇかよ!


 マジで助けて……


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