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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第五章 偽りのラピスラズリ
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冬真は優しく笑みを浮かべ静かに手を差し出す。



「お手をどうぞ」



朱音は少し照れながらベッドから起き上がりその大きな手に重ねて冬真は軽くその手を握ると、ドアを開けて久しぶりに落ち着いた雰囲気のロビーに出て朱音は吹き抜けを見上げ、次に視線を下ろしお洒落な内側のガラスドアをみて、毎日ここを開けてこの洋館に入っていたのが遠い昔のように思える。


冬真がダイニングのドアを開ければいつもみんなで食事を囲んだ広いテーブルに後ろの窓からは庭が見えて、木々の葉も落ちて寂しい景色なのに朱音にはその穏やかな景色を見られていることが不思議な気持ちだ。


既に健人はいつもの席に座り、未だ落ち着かなそうな朱音を笑って迎え、冬真が朱音を席に座らせ自分の席に座ると、アレクが各自の前にサンドイッチを置いていくのを朱音はじっと見つめる。


何故かアレクの目とあの大型犬の目が重なるが、いつもアレクを見ているせいなのかと思いつつ、朱音が覗き込むようにアレクを見ているのを見て冬真と健人は思わず笑ってしまう。


アレクは朱音の探るような視線から逃げようとしたが、



「アレクも食べようよ」



という朱音の一言で渋々隣に座ることになり、微妙に距離を取って朱音から顔を背けて座る姿に健人は大笑いして朱音は首をかしげた。


冬真がそんな朱音に目を細め口を開く。



「お帰りなさい、朱音さん」



「・・・・・・はい、ただいまです!」



朱音は一瞬言葉に詰まって、アレク、健人、冬真をゆっくり見回してから満面の笑みで答えた。


久しぶりに明るい声と笑い声が古い洋館に広がって、空気すら温かなオレンジ色にかわるようだ。


横浜山手にあるこの洋館には美しい宝石魔術師がいる。


その彼の仕事部屋にはラブラドライトのネックレスが一つ、鍵のかかった小さな箱に仕舞われて、青い光を優しくまとわせていた。



第Ⅰ部  END


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