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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第9話 子供たちと、遠い影

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

農地を歩いていると、後ろから小さな足音がついてくるのに気づいた。


振り返ると、トムとアナが、慌てて畝の陰に隠れる。少し離れたところに、センが腕を組んで立っていた。


「隠れなくていいよ」


俺が言うと、トムが真っ先に飛び出してきた。


「ねえ、なんで土さわってるの?」


「土に、何が足りないか調べてるんだ」


「さわるだけで分かるの? 魔法?」


「魔法じゃない。昔から使ってる感覚だよ。土を触ると、乾いてるとか、栄養が足りないとか、体で分かる」


「えー、すごい! ねえ、魔法じゃないの? ほんとに?」


トムの質問は止まらなかった。なんで、どうして、ほんとに。子供の「なんで」は、農業の現場で一番大事な問いだ。俺は一つひとつ、丁寧に答えた。


すると、後ろに隠れていたアナが、おずおずと前に出てきた。


「あの……ここに、芽が出てるの」


彼女が指差したのは、畝の端だった。小さな芽が、いくつか顔を出していた。だが、どれも弱々しく、先が茶色く枯れかけている。


「でも、いつも、育たないで枯れちゃうの」


俺はしゃがんで、芽の根元の土を触った。


「この土はね、酸っぱくなりすぎてるんだ。だから、芽が育てない」


「土が、酸っぱい?」


アナが、目を丸くした。


「そう。土にも、酸っぱいとか、そうじゃないとかがある。酸っぱすぎると、植物は栄養を吸えなくなる。灰をまいたり、貝殻を砕いて混ぜたりすると、ちょうどよくなる。そうすれば、この芽も育つよ」


「ほんと?」


アナの目が、ぱっと輝いた。植物が好きなんだな、と分かった。


少し離れたところで、センが冷たい声を出した。


「子供だと思って、相手してやってるんだろ」


俺はセンの方を見た。鋭い目だった。


「君たちに、嘘をついてもしょうがない。俺は本気で、農業を一緒にやれる人を探してる。それは大人でも、子供でも同じだよ」


センは、何も言い返さなかった。ただ、ふいと目をそらした。だが、その場を立ち去りはしなかった。それで、十分だった。



その夜、ウォルトが改まった様子で切り出した。


「レイム様。一つ、お話ししておくべきことが」


「なんですか」


「実は……ヴィンス様から、ダールムの近況を知らせるように、言われています。隠しているのが心苦しくて」


ヴィンス。この体の異母兄。正室の子で、次期辺境伯と目されている男だ。


「正直に報告してください」


俺は即答した。


「隠すことは、何もありません。村を立て直そうとしている。それだけです。ありのまま伝えてください」


「……分かりました」ウォルトは少しほっとした顔をして、それから付け加えた。「ただ、気になることが。ヴィンス様が最近、やけにダールムのことを気にしておられるのです。今までは見向きもしなかった土地なのに」


俺は、それを頭の隅に留めた。今すぐ何かが起きるわけではない。だが、覚えておいて損はない。



翌朝、農地に行くと、センが一人で先に来ていた。


手伝うわけじゃない、という顔で、遠くに突っ立っている。


それで、十分だった。

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