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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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10/20

第10話 改革計画を立てる

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

その夜、俺は割り当てられた古い屋敷の一室で、計画を練った。


ウォルトに手伝ってもらい、この世界で手に入る素材や道具を一つひとつ確認していく。鍬、鋤、籠。家畜は山羊が数頭、鶏が少し。枯れ草と落ち葉はいくらでもある。台所の残飯も、家畜の糞も。


材料は、揃っている。


頭の中で、改革の順番を組み立てた。


まず、堆肥。痩せた土に、有機物を戻す。これがすべての土台だ。次に、輪作の計画。同じ作物を続けて植えない畑の使い方を決める。それから、麦の秋まき。今が秋の初めだから、ここで蒔けば、春に芽吹き、初夏に収穫できる。そして冬の間に、水路の復旧。


「今から始めれば、ぎりぎり間に合う」


季節は待ってくれない。作物の時間は、人の都合では動かない。だからこそ、順番が命だった。



翌朝、計画をミリアに説明した。


「まず、堆肥を作ります」


「たい、ひ?」


「枯れ草、落ち葉、台所の残飯、家畜の糞。それを集めて、積んで、寝かせる。腐らせて、土に戻すんです。痩せた土に、栄養と力を取り戻させる。これが、最初の一歩です」


ミリアが、微妙な顔をした。


「……糞とか残飯とか、汚いって言われませんか。みんなに」


「言う人も、いるでしょうね」俺は正直に答えた。「でも、それは全部、もともと土から生まれたものです。土に戻すだけ。汚いものじゃない。一年もすれば、黒くて、いい匂いのする土になります。それが、畑を生き返らせる」


ミリアは、しばらく考えてから、ため息をついた。


「……分かりました。でも、みんなに説明するのは、大変ですよ。年寄りは、新しいことを嫌がる」


「一緒に説明しましょう」


「え?」


「あなたが一緒なら、住民に伝わりやすい。俺はよそ者だけど、あなたは村の人だ。あなたが『やってみよう』と言えば、聞いてくれる人が出てくる」


ミリアは、じとっとした目で俺を見た。


「……あんた、人をうまく使いますね」


「そうです。あなたが必要だから」


ミリアは何か言い返そうとして、結局やめた。代わりに、小さく笑った。初めて見る、彼女の笑いだった。


そばで聞いていたウォルトが、おずおずと口を挟んだ。


「あの……私は、何を手伝えばいいんでしょうか」


「肉体労働全般と、情報収集です。堆肥を積むのも、材料を運ぶのも、力仕事ですから」


「……農業って、そういうものなんですね」


ウォルトは、騎士の自分が堆肥を運ぶ姿を想像したのか、複雑な顔をした。だが、嫌だとは言わなかった。



計画が固まった夜、俺は一通だけ、報告書を書いた。父――辺境伯への、月次の報告だ。


『ダールム村の農業改革を開始します。成果の目標――来年の初夏の麦収穫で、前年比百五十パーセント以上』


数字を書くと、それは現実になる。逃げ場がなくなる。やるしかなくなる。前世の農業普及員の頃から、変わらない習慣だった。


ここまで来れば、あとは始まりだ。


最初の一週間が、一番難しい。動かない人を、最初の一歩、動かすところが。


だが、それも知っている。何度もやってきた。


翌朝、ミリアが来るより早く、俺は堆肥の材料を集め始めた。

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