第7話 住民との顔合わせ
本作は全70話で完結予定です。
毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。
続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
村長が、渋々ながら住民の集会を開いてくれた。
村の集会所――古い石造りの建物に、二十人ほどが集まった。ほとんどが年寄りだ。腰の曲がった老人、杖をついた老婆。みな、俺を見る目に期待はなかった。
「お偉いさんが、また来た」
「春になったら、出ていくんだろう」
「農業指導とか言って、結局何もしないやつさ」
ひそひそと交わされる声が、よく聞こえた。隠そうともしていない。それくらい、この村は貴族を信じていなかった。
俺は前に立ったが、長い演説をするつもりはなかった。それで人が動かないことは、前世で嫌というほど知っている。
「レイムです」
俺はそれだけ言った。
「土を見ます。水を見ます。皆さんと話します。それだけです。よろしくお願いします」
しんとした。
期待もしないが、何かを言われると思っていたのだろう。短すぎる挨拶に、みな拍子抜けしたような顔をしていた。
そのとき、集会所の端から、声が飛んだ。
「あなたが、新しい管理者?」
若い女だった。二十歳そこそこ。日に焼けた肌、農作業の格好。腕を組んで、まっすぐにこちらを見ている。この村で、数少ない若い農業者の一人――ミリアだ。
「農業のことは、分かるんですか」
「分かります」
「即答ですね」彼女は少し目を細めた。「じゃあ明日、畑を見てください。証明してください。口だけじゃないって」
「分かりました」
ミリアは、ふん、と鼻を鳴らして、それきり黙った。だが、その目には、他の住民とは違うものがあった。諦めではなく、挑むような光。試す気がある、ということは、まだ期待を捨てていないということだ。
集会所の入り口の方で、小さな影が三つ、こちらを覗いていた。子供だ。
「あの人、土さわってたよ! 変なひと!」
一番元気そうな男の子が、遠慮なく大声で言った。トムというらしい。隣の小さな女の子が「しっ」と慌てて袖を引く。アナだ。その後ろで、一番年上らしい少年が、冷たい目でこちらを見ていた。
「……貴族のくせに」
セン、という子だ。聞こえよがしの一言。俺は彼の目を見た。一番、心を閉ざしている目だった。だが、こういう子ほど、一度信じたら深く信じる。前世で、何度も見てきた。
会が終わると、ミリアが俺のところへ来た。
「明日の朝、畑にいます」
それだけ言って、彼女は行ってしまった。
「あの女性、手強そうですね」
ウォルトが、苦笑まじりに言った。
そうだな、と俺は思った。だが、悪い気はしなかった。
手強い人ほど、本気になれば、一番よく動く。それも、農業の現場で覚えたことの一つだった。




