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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第68話 トムの宣言

収穫祭の、翌朝。


農地は、ひっそりと、していた。昨夜の、賑わいが、嘘のようだった。


俺は、いつものように、早朝の、土壌診断を、していた。膝をついて、土に、手を当てる。


そこへ、トムが、やってきた。



「レイム様」


トムが、少し、改まった顔で、言った。


「俺……農業を、やりたいと、思う」


「なぜ、ですか」


「センが、農具を、研いでて。ミリアさんが、みんなに、説明してて。アナが、記録を、つけてて。――みんな、やってる。俺も、やりたい」


子供らしい、まっすぐな理由だった。だが、それで、十分だった。



「じゃあ、今日から、始めましょう」


俺の、即答に、トムが、目を、丸くした。


「いいの? 何から、やればいい」


「まず、この土を、触ってください」


俺は、トムの手を、取って、土に、当てさせた。


「そして、臭いを、嗅ぐ。色を、見る。それを、毎日、やること。それだけです」


「それだけ?」


「それだけです。毎日、土を、見ていると、だんだん、土が、何を、言っているか、分かってくる。農業は、そこから、始まります」


トムは、真剣な顔で、土を、握った。



俺は、ふと、聞いてみた。


「トム。俺が、ずっと、ここに、いなくても――農業を、続けますか」


トムが、顔を、上げた。


「いなくなるんですか?」


「いつかは。他の村にも、行かなければ、ならない。荒れた土地は、まだ、たくさん、あるので」


俺は、正直に、言った。


「でも、その時、ここの農業が、続いていれば、それで、いいんです」


トムは、しばらく、考えてから、言った。


「……俺が、続ける。センも、続けると思う。アナも、記録、つけてるし」


迷いの、ない、返事だった。



俺は、その言葉を、胸の中で、噛みしめた。


前世では、弟子を、作れなかった。後継者が、いなかった。俺が、回ってきた知識は、俺が、現場を、去れば、そこで、途切れた。だから、いつも、不安だった。「この村は、俺がいなくなったら、元に、戻るんじゃないか」と。


でも、ここでは――。


二人、いる。いや、もっと、多い。


二十二年、続けてきた、農業普及の仕事が。この村で、初めて――次の、人間に、渡った。



その日の午後、辺境伯府から、連絡が、届いた。


「農業改良使としての、最初の、派遣先が、決まった」


場所は、辺境の、東の集落。廃村寸前。今年の収穫が、ほぼ、ゼロだったという。


ウォルトが、聞いた。


「行けますか」


「行きます」


俺は、答えた。


「でも――ミリアの、旅立ちを、見届けてから」


「ミリアさんは、いつ、出発を?」


「来週、です」


ウォルトが、うなずいた。


「……来週まで、待てます。それから、東の集落へ」

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